「理想の教員像とは?」「VR空間なら不登校も解消!」横浜教育イノベーション・アカデミアが始動

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2025年07月09日 11:10  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
横浜市では、産・官・学の連携で未来の教育をデザインする「横浜教育イノベーション・アカデミア」の取り組みを進めている。関東学院大学(横浜・関内キャンパス)では6月20日、協力する企業、大学、教員、そして教員を志している学生が一堂に会するスタートアップイベントが開催された。


○■どんな取り組み?



横浜教育イノベーション・アカデミアには55の大学が連携。共創企業として内田洋行、NTT東日本が名を連ねるほか、参加企業として20社近くが協力している。


その冒頭、横浜市教育委員会の下田康晴氏が登壇。「本日、教員を志している学生さんも多く来場されています。これからの教育のあり方、そして”教員像”をつくりあげていく主役となるのは、皆さん自身です。現職の教員、教員を養成する大学、テクノロジーで支援する企業と力を合わせる”共創”によって、教育の未来を切り開いていければと思っています」と挨拶した。


横浜教育イノベーション・アカデミアは「研究・分析空間」と「キャンパス空間」の2本柱で展開する。研究・分析空間では、企業、大学、教員、学生の共創により新しい教育を創造していく。


研究・分析空間には昨年(2024年)夏、新たに「横浜教育データサイエンス・ラボ」が立ち上がった。横浜市内の児童生徒 約26万人のビッグデータを大学・企業のスペシャリストが分析し、得られた結果や知見を学校の現場に活かす取り組みを進めている。


一方のキャンパス空間には、未来の教育を語り合う「アカデミアサロン」、バーチャル空間の「アカデミアポータル」を開設予定としている。


○■ビッグデータの活用法は?



関係者に話を聞いた。ビッグデータの活用方法について、横浜市教育委員会の下田氏は「たとえば学習に関していえば、どこで躓いたかがデータから分かります。そこでAIも活用し、その子に最適な学習指導を行います。また子どもたちの心の変化を読み取って、ケア、サポートすることも考えています。この先、体育にも利用できるでしょう。もちろんデータサイエンティストの専門チームが必要になります。横浜教育データサイエンス・ラボでは、すでに数学の分野、心の健康の分野でデータ分析の取り組みがスタートしています」。

GIGAスクール構想により、市立の小中学校では1人1台のタブレット端末が配られている時代。下田氏は「児童生徒 約26万人のビッグデータには、非常に大きな価値を感じています。逆に言えば、これを活かさない責任は非常に重い、と言えるでしょう」と話した。


スタンフォードオンラインハイスクール校長の星友啓氏は「世界中で教育×テクノロジーの現場を見てきて思うんですが、ある教育課題に対して1企業がアプリケーションを開発する、というケースは往々にしてあります。ただ、その後もしっかり使われているか、検証されないことも多いんですね。横浜教育イノベーション・アカデミアでは、横浜市という自治体が26万人という規模で展開します。これは世界的にみても、非常に価値ある取り組みです」と評価する。



また今回の枠組みについて、教職員支援機構審議役の島谷千春氏は「やはり、たくさんの大学と繋がっていることが大きな強みですね。他の自治体でも、子どもたちの教育の質の向上を目指した取り組みは行っていますが、自治体と企業の連携が主です。教育は知恵の積み重ね、とも言います。横浜市が中心となり、大学をはじめとする叡智が結集するこの取り組みに、とても期待しています」と笑顔で話した。

○■VRに大きな可能性



この日、会場では4つのブースに分かれてデモンストレーションを実施した。



【ブース2】では、未来の教育について語り合うグループワークが行われた。学生、まだ経験の浅い教員、そしてベテランの教員など、ステージの異なる5〜6名がグループをつくり、まずは昨年度の自身の活動をレゴブロックで表現。そのうえで言葉で振り返った。ある女性教員は「私のレゴは崖っぷちに立たされています。教員1年目だったので心に余裕がなかったんです。今年は持ち上がりで同じクラスを担任するので、学級全体を見渡せるような余裕が持てたらと思います」「子どもたちに『学校って楽しい』と思ってもらえるような教員を目指したいです」とコメントしていた。


【ブース4】のテーマは、メタバース 創造を語る。NTT東日本が用意したメタバース空間で授業を行う試みだった。体験した大学4年生は「VRゴーグル×タブレット端末を使って、メタバース空間で授業を体験しました。従来であれば、教員は”教室”という限られた空間の中で子どもたちの学習をサポートします。でも教室を抜け出して仮想空間の中で授業できれば、学校に行けない不登校の子、事情を抱える家庭の子でも、障壁なく学びの環境にアプローチできます。とても大きな可能性を感じました」と話していた。


イベントに対する思いについて、NTT東日本の山崎剛氏はこう語る。



「NTT東日本は、2024年から横浜市立の小学校・中学校・高校にてメタバース空間を活用した授業の支援を行っていることから、今回共創パートナー企業として参加することとなりました。



こどもたちの将来を見据える教育機関との共創は、まさに私たちのパーパス『地域循環型社会の共創』と合致しています。次世代を担う子どもたちのために、教育DXを推進し、全国に展開できるような教育モデルを横浜市・学校・大学・地域のみなさまと共創することをめざし、日々活動していきたいと考えています」


***



NTT東日本をはじめとする、参画企業によるテクノロジーの力を用いながら、"教育を共創していく"。そんな想いをひしひしと感じるスタートアップイベントとなっていた。



近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。動画の撮影と編集も楽しくなってきた。 この著者の記事一覧はこちら(近藤謙太郎)

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