選択的夫婦別姓制度の導入を望む事実婚当事者の割田伊織さん(左)と武井七海さん=5月31日、長野県上田市(本人提供) 20日投開票の参院選では、選択的夫婦別姓制度導入の是非も論点の一つだ。衆院法務委員会で5月、関連法案が28年ぶりに審議入りしたが採決されず、今秋に見込まれる臨時国会で継続審議となった。事実婚を選択した当事者は「早く制度実現を」と訴える。
法制審議会(法相の諮問機関)は1996年、同制度を導入する民法改正案を答申したが、30年近くたっても法改正には至っていない。国連の女性差別撤廃委員会はこれまでに4度、日本政府に導入を勧告している。
「名字は自分を自分たらしめる大事な一部」。香川県宇多津町の会社員割田伊織さん(30)はそう強調する。団体職員武井七海さん(30)との結婚を考え、どちらが改姓するか話し合う中で自身に改姓を望まない気持ちがあることに気付いた。「自分が嫌なことを妻にさせるのは違う」。別姓制度の実現後に婚姻届を出すと決め、昨年事実婚を選んだ。
ただ、事実婚を理由に会社の慶弔休暇は取得できず、自治体の新婚世帯向け補助も受けられなかった。武井さんは「『あなたたちは結婚していない』と言われているような感じがする。思わぬ落とし穴が他にもあるのでは」と不安を吐露する。
同制度の導入を求める一般社団法人「あすには」(東京都新宿区)が今年3月に行った事実婚当事者約530人の意識調査によると、約3割は自分または相手が改姓を望まないことを事実婚の理由に挙げた。別姓制度が導入されれば法律婚をすると答えた人は半数近くに上った。
保守派の国会議員らからは「別姓は家族の一体感を損なう」との意見も根強いが、割田さんは「名字が違っても家族という気持ちは変わらない」と強調。反対意見について「制度の導入を阻む理由にはならないのでは」と首をかしげる。
武井さんは「人の心に関わる重要な制度。選択肢を増やすことで、心が軽くなり、生きやすくなる人が増えると思う。早く実現してほしい」と話している。