宇宙から飛来する素粒子ニュートリノを観測する、南極点のアイスキューブ観測所=(C)Johannes Werthebach、IceCube/NSF エネルギーが最高レベルの宇宙線の謎を探る観測実験を南極で行っている千葉大などの国際研究チームは11日、宇宙線の正体はこれまで定説とされてきた陽子ではなく、より重い原子核だとする研究成果を発表した。論文は米物理学誌フィジカル・レビュー・レターズに掲載される。
宇宙線のうち、エネルギーが比較的低いものは銀河系内にある超新星爆発の残骸により加速された陽子が正体と考えられている。一方、「最高エネルギー宇宙線」と呼ばれる種類は、銀河系外のガンマ線バースト(爆発現象)などから放出された陽子が有力候補とされていたが、その正体や起源天体ははっきりとは分かっていなかった。
この宇宙線は地上で直接観測できないため、宇宙線が生成する素粒子ニュートリノを通じて間接的に探る「アイスキューブ実験」が、千葉大などが参加して2006年、南極で開始された。今回は、10年から約13年分のニュートリノ観測データを分析し、理論予測と比較した。
その結果、正体が陽子であれば観測されるはずの超高エネルギーのニュートリノは検出されず、13年間で最も高いエネルギーのニュートリノでも予測より大幅に低かったことが判明。正体が原子核であれば、より低いエネルギーでも説明が付くため、「原子核説」を強く示唆する結果となった。
千葉大の石原安野教授は「これまで陽子と思って理論モデルが作られ、起源天体についても議論されてきたが、大幅な変更が加えられることになる」と説明した。