「ロング・ブライト・リバー」NYジャンケットアカデミー賞ノミネート歴を持ち、近年はドラマシリーズでの活躍も目覚ましいアマンダ・サイフリッド主演・製作総指揮の最新作「ロング・ブライト・リバー」がBSスターチャンネルEXにて全話配信中。
犯罪が横行する米フィラデルフィアの街で起きた連続殺人事件と失踪した妹を追う警官の姿を描くサスペンスでありつつ、主人公姉妹の過酷な運命、隠されていた秘密などの家族ドラマ、現代の米国の闇を反映させた社会派ドラマの要素も複雑に絡み合い、奥行きを持った物語となっている。
この度、主人公のパトロール警官ミッキーを演じたアマンダ・サイフリッドが、彼女の元相棒で良き理解者となるトルーマンを演じたニコラス・ピノックとともに、本作への思いや自身が演じたキャラクターについて語った。
「かなり挑戦的な」キャラクターであり「共感できる部分がたくさん」
リズ・ムーアのベストセラー小説「果てしなき輝きの果てに」を原作に、「ジ・オファー/ゴッドファーザーに賭けた男」のニッキー・トスカーノ、アマンダ・サイフリッドらが製作総指揮を担当した本作。
アマンダ・サイフリッドは原作について、「重要なのは、私たちは原作小説からずっとアイデアを掘り下げてきたということです。そして、この作品の美しさとユニークな点は、本作ショーランナーのニッキー・トスカーノが脚本家としてもリズ・ムーアと手を取り合って一緒に本作を創り上げた点です」と語る。
「リズは本作の核心に存在します。リズは、知り尽くした個人的な経験からこの本を書いたんです。その真実への根ざし方が、本作の全てに深く刻まれています。彼女は私たちの――この本作全体の基準点でした」という。
「リズは本当に支えでした」と同意するニコラス・ピノックも、「トルーマンとミッキーの特定の側面を、原作にはない形で彼女から得ることができたのは、本当に素晴らしかったです」とふり返った。
アマンダ・サイフリッドが演じたミッキーは、犯罪と薬物依存にさらされた街角に立つ女性たちを見守るパトロール警官でありつつ、薬物依存のため仲違いした行方不明の妹ケイシーの身を案じ続ける姉であり、ひとり息子トーマスを愛するシングルマザーである。
過去の影響を受け、義務と個人的な絆の間で板挟みになっている複雑なキャラクターであり、「これらの要素を演技に融合させるのは、どれほど挑戦的だったか?」との問いに、彼女は「かなり挑戦的でした」と応える。
「苦悩を抱えるキャラクターを演じることは分かっていましたし、正義に駆り立てられ、物事を正しい場所に置こうとし、コントロールできない多くのことをコントロールしようとしている――そんなキャラクターに共感できる部分がたくさんありました」。
そして、「キャラクターに共感することは難しくはなかった一方、毎日その役を演じるのは本当に大変でした。少し悩むこともありました」とも明かす。
「なぜなら私は通常、キャラクターを家に持ち帰りませんが、このキャラクターは真実と苦闘に根ざしていて、特にケンジントンという地域――これもまた本作のキャラクターの1つ――で生きているから。人々の現実を否定できないのです」と言い、「それは大きな挑戦でしたが、だからこそ本作の関係者たちはこのような役割を選んだとも言えます。これらの物語を語るのも、それが現実だからです」と続ける。
さらに「私がミッキーに関して好きなのは、彼女が頑固なところです。彼女はそうやって生き延びているんだと思います。彼女は自分が未熟だと自覚しつつ、確固たる好奇心を持っている」と話す。
「この物語ではミッキーはピンチに直面しているからその好奇心を深める時間はありませんが、危機にあっても自分らしさを貫く。もしそうしなかったら、彼女の生涯はきっと別のものになっていました。だから、サバイブするために、その頑固さが彼女には本当に機能しているんです。人々がネガティブに感じるようなことも、彼女にとってはポジティブな要素になっているんだと思いますね」と言い、「ミッキーには好きになる要素がたくさんあります」と語った。
薬物汚染の広がる街、ケンジントンが物語の重要なキャラクター
舞台となったフィラデルフィアのケンジントンをリアルに描くこと、キャラクターに忠実であること、物語全体に忠実であることは、近隣で育ったアマンダ・サイフリッドにとっても大きな意味を持ったようだ。
「(ケンジントンには)確かに苦労している人々がたくさんいます。そこに行くと、直感的な、言葉にできないような反応が湧き上がるんです。でも、警察が間違った形で介入しない限り、そのコミュニティは互いに協力し合って機能しています。そして、そんなコミュニティが団結し、互いを支え合える姿を見ることが重要です」と彼女は言う。
「なぜなら、ケンジントンを知らない人――そういう人も多いのですが――にとって、そこはオピオイド危機の中心的地域で、人々が非常に恐れている場所だから。そして、ケンジントンが物語の重要なキャラクターとして描かれることで、その別の側面――つまり、回復力のあるコミュニティ――が見えるようになることを願っています。起こり得る変化は、特にこの本作では、皆にとって良いものになるかもしれません」。
さらに、「フィラデルフィア、ケンジントンを生きているリズ・ムーアは、私たちを彼女の世界へと導いてくれました。彼女が毎日目にする世界です。なぜなら、私たち誰も、依存症やオピオイド流行の影響を受けていない人はいないからです」とアマンダ・サイフリッドは力を込める。
「薬物、アルコール、何であれ。私たちは皆、それに触れているし、コミュニティがレジリエンス(回復する力・再起する力)を発揮する姿を見せることが重要です。それこそが私たちがこの物語を語る理由です」。
「路上の人々も、人間である」と伝える重要なメンター役の意義
「その通りです」と息ぴったりに彼女に応じるニコラス・ピノック演じるトルーマンもまた、警官でありながらギャンブル依存を抱えているというキャラクター。
「本当に大きな挑戦でした。私が演じたトルーマンという男性は、警官として地域を愛し、オピオイド危機のような深刻な問題を抱えるコミュニティを警察として守る立場にあります。彼に共感せずにはいられません。心から共感しました」と彼は言う。
「そして、彼が警官であるという以外にもその人らしい部分を探さなければなりませんでした。その関係性はミッキーとの初期のシーンで、彼が彼女のメンターとして接する姿に現れています。彼は本当に彼女に、路上の人々がただの街の風景ではなく、人間であることを理解させるために指導します」と続ける。
「彼らは私たちが見過ごしたり、無視したり、避けて通る道端の人々ではありません。彼は、多くの同僚がやっていることの正反対のことをしていました。彼はコミュニティの核心に深く入り込み、人々を人として見つけ、本質を理解し、できる限りのことをして助ける努力をしていました。そして、そんな人物でありながら、警官としての側面も持つバランスを表現するのは興味深かったです。それは本当に、本当に――彼からその要素を引き出し、できるだけ現実味のあるものにするのは、喜びと楽しみでした」。
そう答えるニコラス・ピノックに、「あなたは“善い人間”たちの代表のような存在でしたね」とアマンダ・サイフリッドも言う。
「警官であるのは、権力を欲するからではなく、変化をもたらす能力が欲しいから――そういう人を描いています。本作でこんな人物に出会えるのは本当に重要だと思います。(ドラマには)正しいことをしていない人がたくさん出てきますから」。
確かに2人が演じたキャラクターは、犯罪ドラマシリーズによく登場するありきたりな警官のイメージとはかなり異なる。ミッキーは熱心な読書家で、イングリッシュ・ホルンの演奏家であり、息子に生き抜く方法を意識的に教えている。トルーマンは街角に立つ女性や依存症の人々への高い共感力を持ったキャラクターとして描かれている。
「トルーマンの好きなところは、スクリーン上で彼のような共感と優しさ、敏感さを持つ男性が珍しいからです」とニコラス・ピノック。
「ミッキーとの関係に、彼女の背景や物語を知り、彼女が理解し、判断せず、彼女がこれまで出会ったことのないような男性が必要だったことを理解していた点です。それが本当に素晴らしい点だったと思います。ミッキーは――もし間違っていなければ――そんなふうに信頼できる男性に会ったことがなかったのではないでしょうか」と分析する。
「私たちはよく、キャラクターにダークな要素があるような役柄を目にしますが、トルーマンは通常、そのような役になることが多いと思います。しかし、そのような要素は一切ありませんでした。彼は正直に言って本当に信頼できる人物でした。しかし、それでも彼の中で謎や悪だくみを演じようとする挑戦的な部分があり、それが本当に素晴らしく、大好きでした」。
するとアマンダ・サイフリッドも、「トルーマンの中にも悪魔がいますが、彼はその悪魔を認識していますよね」と応じる。「優れた人間であって欠点はあるものです。むしろ欠点を認識し、克服しようとしているからこそ、優れているとも言えます。単純なキャラクターではなく、より複雑な人間が描かれているのです」。
気鋭の女性監督が演出した“ヤバい鏡のシーン”にも注目
また、本作では全8話の各エピソード監督をハリウッド気鋭の女性クリエイターたちが務めている。
「パイロット(第1話)には、本当に――自分が何を求めているかを知っている人、そしてリスクを冒す覚悟のある人が必要」と語るアマンダ・サイフリッドは、第1話監督のハガル・ベン=アシャーに絶賛に贈る。
「彼女は本当に勇敢」と語る彼女は、「第1話といえば、私には本作の始めの頃――最初は本当に大変でした。なぜなら、撮影の最初の数日間はいまも常に『インポスター症候群』に苛まれるから」と打ち明ける。
「『私は誰? 誰を演じてる?死体がある、どうリアクションする…?』となってしまって。そんな第1話でしたが、ハガルは本当に素晴らしかった。本当に素晴らしい。今後の活躍が楽しみだし、また一緒に仕事ができたら光栄です。彼女は本作のトーンを確立したと思います」。
さらにアマンダ・サイフリッドは「ハガルが鏡を使ってすごい演出をしてるの知ってましたか? いまやすべてのエピソードにありますが、最初はハガルがあのヤバい鏡のシーンを演出したんです。予告編にも入っています」と、ある見どころを強調。
「本当に記憶に残るような象徴的なシーン」と明かしてくれた。
「ロング・ブライト・リバー」<字幕版><吹替版>はスターチャンネルEXにて全話配信中。※第1話無料配信中
(シネマカフェ編集部)