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「ムリ・ムダ・ムラ」とはよく言われるが、多くの人はこれらの意味を正しく理解していない。製造現場で働く人以外でも、この概念はとても重要だ。
そこで今回は、普段から効率的に目標を達成している人たちが、「ムリ・ムダ・ムラ」の中で最も意識的に削減している要素について、ランキング形式で紹介する。効率化に取り組んでいるのに成果が出ない――そんな悩みを抱えている方は、ぜひ最後までお読みいただきたい。
●「ムリ・ムダ・ムラ」の本当の意味を理解しているか?
まずは、この3つの言葉の意味を正しく理解しよう。
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多くの人が「ムリ・ムダ・ムラをなくそう!」などと、3つの概念を同じものとみなして使っている。それぞれ独立した意味があるため、しっかり理解しておきたい。
1. ムリ:能力を超えた負荷がかかっている状態
2. ムダ:付加価値を生まない作業や時間
3. ムラ:仕事量や品質のばらつき
例えば、営業担当者が月末に100件の訪問をこなすのは、おそらく「ムリ」だろう。不可能ではないだろうが、かなり難しい。また、使われない提案資料を作り込むのは「ムダ」であり、不要な作業だ。そして、月初は暇で月末だけ忙しいのが「ムラ」であり、ばらつきがある状態を指す。
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これらは製造業の改善活動から生まれた概念である。トヨタ生産方式では、この3つを削減することで生産性を劇的に向上させた。
ただ、営業やサービス業では事情が違う。製造ラインのように均一化できない人間相手の仕事であるため、優先順位を間違えてはいけない。
●なぜ、多くの人は「ムダの削減」から始めてしまうのか?
「ムリ・ムダ・ムラ」の3つを使って改善活動を始める人は、「ムダの削減」から着手することが多い。理由は簡単だ。ムダは目に見えやすく、削減効果も分かりやすいからだ。
「この会議、本当に必要?」
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「この資料、誰も見ていないよね」
「この移動時間はもったいない」
確かにその通りだ。ムダを削減すれば、時間は生まれる。しかし、ここに落とし穴がある。ムダを削減しても、それが成果につながるとは限らないからだ。
例えば、提案資料の作成時間を3時間から1時間に短縮したとしよう。2時間の削減は、素晴らしい改善に見える。しかし、その2時間で何をするのか?
多くの場合、別のムダな仕事が入り込むだけだ。メールチェックの回数が増えたり、意味のない社内調整に時間を使ったり。結果として、売り上げは変わらない。
●重要度ランキング3位:「ムダ」
そのため、「ムダ」が重要度ランキングでは第3位となる。ムダの削減は、もちろん重要だ。誰も読まない報告資料を2時間かけて書いているなら、すぐにやめるべきである。
ただ、この「ムダ」な作業や取り組みは、意識しなくても削減できる。
例えば、ムダだと思っていても、何となくスマホを眺めたり、家でダラダラとゲームをしたり、テレビを見たりすることはあるだろう。
そのような時間の浪費を、どのように削減したら良いか悩む人は多い。しかし、やるべきことが他にあれば、自然となくなっていくものである。例えば、「5カ月後に資格試験を合格する」と目標を決めたら、ゲームやテレビに費やす「ムダ」な時間は、知らないうちに減っていくだろう。
したがって、不要な資料作成や会議、メール処理があったとしても、やるべきことに焦点を合わせ、その作業を徹底しようとすれば、これらの「ムダ」は消滅していくのである。
●重要度ランキング2位:「ムリ」
次に重要なのが「ムリ」の解消だ。なぜ2位なのか?
その理由は、「ムダ」と違い、意識しないと取り除くことができないからだ。その人が持っている能力や、時間などの与えられたリソースを超える作業を任されてしまった場合でも、ムリをすればできてしまう場合がある。
しかし、それをしてしまうと、体調を崩したりモチベーションが低下したりすることもあるだろう。また、それぞれの行動の「質」が落ちてしまうリスクもある。「ムリ」をしすぎると、さまざまな副作用が出てしまうのだ。そのため、ムリは早めに発見し、解消しなければならない。
●重要度ランキング1位:「ムラ」
最も重要なのが「ムラ」の解消だ。ムラこそが、目標を達成できない最大の要因だからだ。
目標達成を最優先に考えた場合、どんなに第3位の「ムダ」を減らしたとしても、そこで削減した時間や労力を、目標達成のための行動のために再投資しないと意味がない。一方で、「ムラ」は違う。改善することで、大きな効果が見込めるのだ。
営業活動における典型的なムラを見てみよう。
・1週目:50件訪問
・2週目:3件訪問
・3週目:8件訪問
・4週目:0件訪問
・5週目:45件訪問
・6週目:11件訪問
・7週目:0件訪問
・8週目:1件訪問
このような訪問頻度のばらつきこそが、「ムラ」である。月単位では活動量は安定しているように見えるが、週単位だとリズムに乱れがあり、行き当たりばったりな印象を受ける。これでは「学習効果」や「質の安定」にはつながらない。
この傾向は「運動」や「勉強」にも共通している。過去の積み重ねが次の活動に生かされ、再投資されていくという視点で取り組む必要がある。そのためには、コツコツ、淡々と、黙々と、バラつきなく続けていく姿勢が重要だ。
●ムラをなくすと、PDCAが自然に回り始める
ムラなくコツコツ続けることでPDCAサイクルも回しやすくなる。それはなぜなのか?
例えば、毎週15件ずつ訪問している営業担当者を想像してほしい。月曜に3件、火曜に3件、水曜に3件……と安定したリズムで活動している。すると、おもしろいことが起きる。
「先週の火曜日と今週の火曜日で、何が違ったか」
「午前中の訪問と午後の訪問で、成約率に差があるか」
「A地区とB地区で、顧客の反応はどう違うか」
条件がそろっているため、このような比較ができるようになるのだ。このように、ムラなく同じペースで活動していれば、変化に気づきやすい。
一方で、活動にムラがある場合はどうか。今週50件、翌週3件では比較のしようがない。50件も回れば疲労で判断力も鈍り、3件では少なすぎて検証データにならない。
何かを改善するには、行き当たりばったりではなく、リズムよくやり続けることが大事なのだ。
私の知る優秀な営業パーソンは、こんなことを言っていた。
「毎日3件の新規訪問を10年続けています。最初は大変でしたが、今では歯磨きと同じ。やらないと気持ちが悪いんです」
彼の手帳を見せてもらったことがある。訪問後には必ず3行のメモを書いていた。
・良かった点
・改善点
・次回への申し送り
たった3行だが、10年分となると膨大な知見の蓄積だ。これこそがPDCAの本質である。
計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Act)というこのサイクルは、一定のリズムがあってこそ機能する。
ムラのある活動では、正しい評価(Check)ができず、すぐに次の波が来てしまう。そのため、同じ失敗を繰り返し、成長が止まってしまうのだ。
●「ムラ」に目を向け、平準化を
もう一度、「ムリ・ムダ・ムラ」の重要度ランキングをまとめよう。
1位:ムラ(ばらつきをなくす)
2位:ムリ(負荷のかかりすぎを解消する)
3位:ムダ(不要な作業を削減する)
多くの人は、「ムダ」のことしか頭にない。そして、たとえ「ムダ」が見つかって削減できたとしても、その後の行動を変えなければ、ほとんど意味がない。
正しい順番は、まずムラをなくすこと。そして、活動を平準化しリズムを作ること。すると自然にムダが見えてきて、削減することができる。そして余力が生まれ、ムリも解消されるのだ。
目標達成できない人の多くは、ムラに意識を向けられておらず、月末の追い込みで帳尻を合わせようとする。しかし、それでは永遠に同じことの繰り返しだ。
できる限り早くスケジュールをロックし、自分の仕事の「ムラ」を見つめ直すとともに、少しずつ平準化してみてほしい。そうすれば、3カ月後には、まったく違う景色が見えているはずである。
著者プロフィール・横山信弘(よこやまのぶひろ)
企業の現場に入り、営業目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の考案者として知られる。15年間で3000回以上のセミナーや書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。現在YouTubeチャンネル「予材管理大学」が人気を博し、経営者、営業マネジャーが視聴する。『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者であり、多くはアジアを中心に翻訳版が発売されている。
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