写真おしゃれな知人のコーディネートが羨ましくなり、つい真似をしてしまった……そんな経験が誰しも一度はあるのではないでしょうか?
今回は、そのようにして新たに購入した服が巻き起こしたエピソードをご紹介しましょう。
◆おしゃれなママ友に、ファッションのアドバイスをもらう
今村紘子さん(仮名・37歳/主婦)には、最近初めてできたママ友がいます。
「幼稚園のお迎えの時間がよく一緒になる麻耶さん(仮名・29歳)が、いつもおしゃれでかわいい服を着ているなと気になっていて。勇気を出して『急にすみません、お洋服はいつもどこで買っているんですか?』と話しかけたのがきっかけでしたね」
麻耶さんはとても気さくな人で、すぐにLINE交換をすると、お気に入りの通販サイトを教えてくれたそう。
「麻耶さんはスタイルが良くスラッとしていて、Tシャツワンピっていいうんですか? 半袖のTシャツを足首まで伸ばしたようなストンとしたシンプルなワンピースが、とても似合っていたんですよね」
紘子さんは、もし自分がそのワンピースを着たらきっと、ゴミ捨てのために一瞬部屋着で外に出てしまったおばさんにしか見えないだろうなと思いました。
「ですが麻耶さんが『こういうワンピの時はキャップを合わせたり、大きめのピアスをしたりとメリハリをつければ、部屋着感は薄らぐと思いますよ』とアドバイスをくれて、ワンピースに合わせる靴や小物まで一緒に選んでくれたんですよ」
◆おそろいのTシャツワンピースを購入
今まで挨拶を交わしたり顔見知り程度の薄い付き合いのママ友はいましたが、こんな風に個人的なやり取りのできる一歩踏み込んだママ友は初めてだったので、紘子さんはとてもほっこりした気持ちになりました。
「麻耶さんはかなり歳下でしたが、ファッションの好みが似ていたし、娘同士が同じ歳で仲が良かったこともあり、仲良くなれて嬉しかったんですよね」
そんな紘子さんは教えてもらった通販サイトで、麻耶さんとおそろいのワンピースを購入しました。
「さっそく着てみたら、自分で言うのもなんですが、結構似合っていたので安心しました(笑)。麻耶さんが選んでくれた靴やアクセサリーもとても可愛かったし、何よりストンとしたワンピースなので体の線を拾わず若見えするのが嬉しくて! しかも着ていて楽だし最高だなと思ったんです」
そのワンピースがとても気に入った紘子さんは、色違いを追加で3枚も購入してしまいました。
「麻耶さんもとても似合うと褒めてくれたし、夫の評判も良くテンションの上がった私は、しょっちゅうそのワンピースで出歩くようになったんですよ」
◆ピクニックで撮った写真に衝撃!
そんなある日の午後、麻耶さんに「今日はお天気がいいからピクニック気分でスイーツでも食べませんか?」と誘われて、お互いの娘と共に4人で公園に向かったそう。
「映えるドーナツと飲み物を買ったので、写真を撮り合ったりしながら楽しい時間を過ごしたのですが……」
さて紘子さんに何が起こったのでしょう?
「その晩に、LINEのアルバム機能で麻耶さんが昼間に撮った写真を大量に送ってくれたんですが、そこには目を背けたくなるような“現実”がたくさん映し出されていて。思わず気を失いそうになってしまったんですよね」
◆お腹のぽっこり、股間の三角形までくっきり
その日は風が強く、風に吹かれて身体にワンピースが張りついたようになっている写真ばかりでした。紘子さんの後ろ姿が映った写真に目をやると、腰回りに浮き輪のように脂肪がついているのが丸分かりで、背中の余計な肉やお尻の垂れ具合、下着のラインまでくっきりと浮かび上がっていました。
「正面から撮った写真も、胸のすぐ下からお腹がぽっこりした見事な中年太りっぷりが分かる酷い状態で、おまけに股間の三角形がくっきりの恥ずかしいやつもあり……とにかく普通の服を着ている時より身体の線が妙に強調されていて悲しかったですね」
しかも「身体の線が隠れているから安心」と思い込んで気を抜いていたこともあり、いつもよりさらにたるんだ身体に見えたそう。
「部屋の鏡の前でストンとしたワンピースを着てただ立っているいる自分しか見たことがなかったので、まさか風に吹かれたらこんな残念な姿になってしまうなんて思わなかったんです。なので、今まで何度も風の強い日にこのワンピで外出していたなと思い出して血の気が引きましたね」
◆すっかり元のファッションに
そして同じワンピースで風に吹かれていても、身体が引き締まっていてスリムな麻耶さんは綺麗なままなことにもショックを受け、自分が分不相応な若作りをしてはしゃいでいる痛いおばさんだとしか思えなくなってしまった紘子さん。その日以来、そのワンピースは部屋着へ格下げし、二度と外では着なくなりました。
「すっかり元のファッションに戻ってしまった私に、麻耶さんも少し『ん?』と何かを感じていたようでしたが、特に言及せず今まで通り仲良くしてくれていて助かっています」
「あのワンピースは、若いかよっぽどスタイルが良くないと手を出してはいけない危険な服だと身に染みて分かりましたね」とため息をつく紘子さんなのでした。
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop