「韓ドラ」と「ハリウッド映画」脚本なにが違う…? 韓国ドラマの人気の理由を紐解いた『韓国式ストーリーのつくりかた』(日経BP刊)が発売中。著者のパク・ソンス氏は、『勝手にしやがれ』(2002年)や『おいしいプロポーズ』(01年)などを手掛け、韓国放送作家協会教育院、韓国芸術総合学校、中央大学(韓国の大学)などでドラマの講義を行う。同書から、アメリカ映画と配信ドラマの物語の作り方の違いについて解説した内容を紹介する。
【コメント映像】可愛い予告編も!キム・ゴウン、アン・ボヒョンから見どころをご紹介!■「三幕構成」は現代には合わない
1話分の台本を書くとき、作家がいちばん苦心することのひとつが構成だ。
構成は、コンセプト、キャラクター、企画意図、テーマ、エピソード、リサーチの結果などを水が流れるようにおもしろくつなげるものだ。その上、競争力のある作品として創造する。これが芸術であり技術である。よくできた構成が、あなたのストーリーテリングを完成させる。よくできた構成が、あなたの台本に競争力を与えてくれる。
ではよくできた構成とは何か。どうすればいいのだろうか?
あらゆる創作術の本に聖書の言葉のように必ず登場するのは「三幕構成」だ。「はじまり―中間―終わり」でできている構成である。しかし、古典的三幕構成は現代で使うには、あまりにも古臭くテンポも遅々としている。
■コンテンツは今やひとりで見る時代
古典的三幕構成は、制限された時間と場所に観客を集めて見せる、演劇・映画のための方式だ。現代とは条件がまったく異なる。三幕構成は、英雄的な場面を見た人すべてを感嘆させるのには向いているが、現代ではそれと同じタイミングで共感してくれるオーディエンスはいない。
現代のストーリーテリングコンテンツは、聴衆(audience)の集団体験ではなく、費用を決済した購読者(user)の娯楽手段なのだ。
■予測可能でおきまりのパターン
「はじまり―中間―終わり」という三幕構成は、作家であるあなたの脳内にすでに内蔵されたプログラムである。ジョーゼフ・キャンベルとクリストファー・ボグラーも「三幕構成」と「起承転結」のストーリー本能が人間のDNAには内蔵されていると言う。(※)
私たちはすべての物語、経験、記憶を、三幕のストーリーテリング方式で脳内に保存している。したがって、三幕構成はわざわざ勉強したり意識的に努力したりしなくても、本能的に自然に流れ出てくる。
現代はとても複雑で多様で早い。今の視聴者にとって、予想のついてしまう三幕構成は退屈でつまらないだろうし、SNSという新しいプラットフォームのコンテンツとの競争を念頭に置かなければならない。
■ハリウッド映画に合った理論でしかない
三幕構成は、ハリウッドが世界の映画を掌握するようになったとき、金科玉条の黄金律のように崇拝された。だから、ほぼすべての創作術の本が三幕構成を基礎としている。しかし、これはアメリカ映画という特定の要件、つまりアメリカ、ハリウッド、英語、2時間前後の上映時間、劇場という制限された空間で通用する公式なのだ。
ストーリーや各種設定に強烈なインパクトのあるドラマ、映画、一話完結ものには効果的だが、オムニバス、生活コメディーなどには合わない。とくにシリーズもののドラマの構成にそのまま適用するのには限界がある。
(※)『千の顔をもつ英雄[新訳版]』、ジョーゼフ・キャンベル著、倉田真木、斎藤静代、関根光宏訳、早川書房、2015年、『作家の旅ライターズ・ジャーニー神話の法則で読み解く物語の構造』、クリストファー・ボグラー著、府川由美恵訳、フィルムアート社、2022年