中学生で妊娠「“逃げます”の一言で連絡先をブロックされて…」養育費なし。月収約15万円で息子を育てるシングルマザーの苦悩

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2025年07月15日 09:21  日刊SPA!

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横井桃花さん(左)と息子の幸希くん(右)。'24年撮影
中学3年生の時、当時交際していた同級生との間で妊娠が発覚し、卒業後に出産。現在若干23歳にして、小学2年生の息子を育てる横井桃花さんという女性がいる。
シングルマザー全体が貧困に陥りやすい状況がある中で、横井さんの場合は若くして妊娠したため出産時点で安定した収入がなく、相手からの養育費も得られないという二重三重の苦境があった。今もなお続く「お金」の苦労について聞いた。

◆元交際相手にブロックされ、養育費がもらえなかった

ーー現在の生活状況について教えてください。

横井:中学卒業後、コンビニや清掃など様々な仕事を点々とした後、ご縁があってヘッドスパ店で、セラピストとして働き始めました。’25年2月に独立し、今は愛知県名古屋市内でヘッドスパ店のオーナーを務めながら、息子と二人暮らしをしています。

個人事業主という立場で、月の収入は多い時期で15万円前後。ここに、ひとり親家庭に支給される「児童扶養(母子)手当」(約4.5万円)と、0〜18歳の児童を育てる家庭に支給される「児童手当」(約1万円)がつき、トータルの収入は20万5千円ほどです。

ーー失礼ながら、子ども1人分を育てる収入としては、いささか心もとないように思います。

横井:そうですね。例えば子どもの小学校入学に合わせてランドセルを1つ買うのにも、7万近く出費があります。その他にも水着など、都度買い替えなければいけないものもあります。

ーー現在まで、子どもの父親に当たる男性から養育費をもらえていないとか。

横井:元交際相手とは出産後もしばらくは連絡を取り合っていて、「将来迎えに行くから一緒に育てよう」と言われていました。

ただ、相手は私が出産して間もない段階で、他の女の子に手を出し、妊娠・中絶させていた。さらに「自分の子か分からない」と中絶代の支払いも拒んでいたんです。そうしたことも積み重なって、出産して1年ほどが経った時、急に「ずるずるダラダラこの人にしがみついてもいいのかな」と気持ちが引いて行ったんですよね。こんな状態でこの人の背中は子どもに見せられない、と。

縁を切る可能性も念頭に置いた上で、今後どうしたいのかをLINEで相手に聞いてみたら「逃げます」と言われました。せめて出産費は払ってほしいと伝えたのですが、そこから全ての連絡手段をブロックされてしまって。ショックはありましたが、そもそも妊娠段階から何も考えてくれない人だったので、それ以上追うことは限界がありました。

◆養育費調停を断念した理由

ーー法的な手段に訴えることは考えませんでしたか。

横井:未婚で子どもを産んだ場合、男性側が自分の子であることを認める「認知」という調停を起こした上で、養育費を請求するという2段階の調停手続きが必要になります。相談に行った弁護士からは、裁判のために時間と金銭の両面を犠牲にした挙句に、相手が支払いに応じないケースも珍しくないと聞きました。

認知すると法律上の親子関係が発生するので、父親が支援を要する場合やトラブルを起こした際に連帯する必要が出てきてしまう。それなら母と息子2人で生活する方がいいのではないかと言われ、結果的に諦めてしまいました。

◆「1回OKしたんだから」と2日に1度は体を求められた

ーー妊娠が発覚した当時のことを教えてください。

横井:子どもの父親である男性とは、中学3年に上がってから交際を始めました。当時、私の自宅が学校の隣にあったので、学校が終わった後で相手がうちに立ち寄る状況が常態化していたんです。早い段階で体を求められ、頻度でいうとほぼ毎週、2日に1度は行為があり、避妊もしてもらえませんでした。

受験も控えていましたし、妊娠した場合のリスクを説明しながら、「いや、やめて」と逃げていたんですが、「1回OKしたんだから」と強い調子で迫られ、なかなか抜け出せない状況が続いていました。

ーー自身が望んだことではなかったけれど、出産を決めたのはなぜですか。

横井:産婦人科に足を運んだのが妊娠8か月目で、法律が定める中絶可能期間(22週未満)を過ぎていたためです。胎動を感じ、子への愛情も芽生え始めていました。熟慮の末、産んで自分の手で幸せに育てあげる責任の取り方を選択しました。

◆踏み込んだ質問の挙句、面接で落とされる

ーー中学卒業後、どのようにお子さんを育てて行かれたのでしょうか。

横井:妊娠がわかった初期段階で、高校への進学は諦めました。出産予定月が7月だったので、高校生活が中途半端になってしまうのが嫌だと思ったのと、自分の家も母子家庭だったので経済的な負担をかけたくなかったからです。

出産して8か月ほどが過ぎ、母がパートを勤めるコンビニで交代で仕事を始めるようになり、その後コンビニ、清掃員、写真館などいくつかの仕事を点々としました。収入としてはいずれも月7万〜8万以内です。

小学生の時から身長もサイズ感も変わらなかったので、服は同じものを着ていました。ママ友が家に呼んでくれて夜ご飯を食べさせてくれることもあり、周囲からの支援に助けられました。

ーー仕事を点々とすることになったのは、理由があるのでしょうか。

横井:小さい子どもがいると、正社員として雇ってもらいにくいためです。子がいることを伝えると「何で?」「どうして?」と色々と聞き出された挙句に落とされてしまうこともありました。向こうからすれば悪意がないんだと思いますが、「そんなことまで?」と思うような踏み込んだ質問も多かったです。採用されても中卒であることを悪く言われたり、出勤のシフトを入れてもらえず、辞めると自分から言い出す方向に仕向けられていると感じることもありました。

◆SNSで「自業自得」と言われて

ーー現状の支援制度で、変わってほしいと思うことはありますか。

横井:児童手当も母子手当もいただける分にはありがたいですが、現状の支援額では生活ができないというのが正直なところ。制度によっては両親が揃った一般家庭の収入を基準に支援額が決められていることもあるので、各家庭の状況が考慮されるといいなと思います。

養育費の不払い自体は刑事罰の対象にはならず、男性側が逃げやすい現状も変わってほしいですね。自分に限らず、10代で妊娠してしまうケースは他にもあります。SNSでは「勝手に産む判断しちゃった方の責任」「避妊具つけない無責任な事したから自業自得」といった辛辣な意見を目にすることもありますが、子どもを産んだことに最も責任を感じているのは当事者の側です。その他のご意見については「こんな見方もあるのか」と適度に受け止めさせてもらっています。

特に養育費に関して、横井さんに限らず、女性側が泣き寝入りをしてしまうケースは多い。厚生労働省が発表する「全国ひとり親世帯等調査結果」(令和3年度版)によれば、母子家庭の場合、養育費に関して「取り決めをしている」と回答したのは46.7%、かつ現在も養育費を受給していると回答したのは28.1%と3割未満だった。

‘24年には民法が改正され、離婚時に同意がなくても養育費を一定の期間請求できる法定養育費制度が導入されるなど、状況には改善の兆しも見え始めている。ただし、養育費が受け取れるようになったとしても、それはあくまで生活費の一部。各家庭の経済状況に合わせて、トータルな支援制度の充実が必要だ。

<取材・文/松岡瑛理>

【松岡瑛理】
一橋大学大学院社会学研究科修了後、『サンデー毎日』『週刊朝日』などの記者を経て、24年6月より『SPA!』編集部で編集・ライター。 Xアカウント: @osomatu_san

このニュースに関するつぶやき

  • 中学生で結婚かぁ(-_-;)よく親が許したね。父親ならどんなに苦労しても子供は育てなきゃね。神様から授かった大事な命なら。
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