限定公開( 4 )
「汗染みが気になって、濃い色のTシャツが着られない」──。
そんな声に応えて開発されたのが、ニッセン(京都市)の「汗染みしにくいTシャツ」シリーズである。2021年の販売開始以来、2024年までに累計8万枚を販売。2025年には新作2点を追加し、3月から6月までの3カ月間で3万枚を売り上げるなど、売れ行きは好調だ。
なぜ「汗染みしにくさ」に着目したのか。そして、なぜ売れているのか。ニッセン ファッションブランド本部の担当者に話を聞いた。
●夏の悩みを起点に商品開発
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ニッセンでは、以前から夏特有の悩みに応える機能性商品を多数展開してきた。例えば、2015年に発売したレディースインナー「滝汗さん」は、汗対策に特化したインナーとしてシリーズ展開を拡大し、累計販売数は58万枚を突破。今や夏の定番商品となっている。
2016年には、大きめサイズ専門ブランド「スマイルランド」から、シャツ風の見た目で実はTシャツ素材という異色の商品「あたかもシャツ」を発売。背面にはカットソー素材を採用し、脇には汗取り布と消臭テープを備えることで、重ね着しても着ぶくれしにくく、見た目は「きちんとしている感」があるという特徴が支持された。暑さと見た目の両立を図ったこの商品は、改良を重ね、今も売れ続けるロングセラーだ。
●Tシャツこそ“汗染み対策”が必要という発想
「あたかもシャツ」の開発を通じて、ニッセンは汗対策に特化した商品のニーズが高いことを改めて実感した。実際、レビューやアンケートでも「汗染みが気になる」といった声が多く寄せられていたため、同社は汗染みしにくい商品の開発に本格的に取り組むことを決めた。
2025年4月に実施した自社調査(回答数2275件)では、66.6%の人が「汗染みがとても気になる」「気になる」と回答。消費者の悩みがはっきりと浮かび上がった。
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当初はトップスやパンツなどの展開が中心だったが、「一番よく着るのはTシャツ」との声に後押しされ、2021年にスマイルランドでベーシックなTシャツの展開を開始した。「本当に汗が染みない」「モカ系の色でも安心して着られる」といった声が届くようになった。
サイズの種類を増やし、現在はSから10Lまで10サイズを用意している。販売ルートも拡大し、カタログ『nissen,』に掲載されるなど、いまでは同社の主力商品となっている。
●2025年の新作はさらに進化
ニッセンは2025年、新作2アイテムを追加した。いずれのアイテムも、本体に加えて襟のリブ部分にも汗染み対策を施し、洗濯を重ねても型崩れしにくい設計になっている。
人気アイテム「綿100%汗染みしにくいVネック5分袖Tシャツ」(1639〜2739円)に加え、新作として「綿100%汗染みしにくいクロップド丈Tシャツ」と「綿100%汗染みしにくい5分袖重ね着風チュニック」を投入。価格帯はそれぞれ1639〜2739円、2189〜4059円である。
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クロップド丈Tシャツは、今季トレンドの短め丈とオーバーサイズを組み合わせた設計。肌ざわりのよい綿100%素材に汗染み防止加工を施し、見た目と快適性を両立させている。
重ね着風チュニックは、人気の重ね着風デザインに汗染み防止機能を取り入れた。体のラインを拾いにくく、ワイドパンツやロングスカートにも合わせやすいデザインが支持されているという。
●「綿素材+機能性」に高まる評価
ニッセンによると、近年の猛暑続きにより、ファッション市場でも「機能性は当たり前」といった認識が広がっているという。特に2018年以降は、吸汗速乾、接触冷感、UVカットなどの機能素材を使った商品が各社から急増している。
同社のTシャツシリーズが注目されたのは、こうした市場の潮流に加え、「綿100%で汗染みしにくい」という“ありそうでなかった”点にあった。
同社が2024年10月に実施した調査(回答数3646件)でも、8割以上の女性が「綿素材が好き」と回答。肌にやさしい印象や自然素材であることへの安心感が背景にあるとみられる。
ユーザーレビューの評価も高い。特に「綿100%汗染みしにくい5分袖重ね着風チュニック」は、レビューで5点満点中4.8と高評価を得ている。「本当に汗染みが目立たない」との口コミが購買に結びついていると分析している。
2025年の調査では、秋冬でも暖房などで「汗をかくことがある」と答えた女性が69.5%に達したという。これを受けて同社は、残暑や秋冬など、季節を問わず汗の悩みを解消する商品を展開する方針だ。
(熊谷ショウコ)
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