国内巨大流通グループを標的にした買収劇が17日、唐突な幕切れを迎えた。セブン&アイ・ホールディングスに対し、カナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールが買収を提案して1年。翻弄(ほんろう)され続けたセブンにはこの日、安堵(あんど)が広がった。一方、株価は急落。単独で企業価値向上を目指すセブンの前途はなお険しい。
「意図的に混乱と遅延をもたらすような動きをしている」。クシュタールは買収提案の撤回に際し、セブンへの不満をぶちまけた。セブンも「協議を一方的に終了し、撤回の決定を下したことは不本意」とコメント。最後まで議論は平行線をたどった。
セブンはこの間、対抗策に追われた。株価引き上げに向け、祖業イトーヨーカ堂などを切り離し、コンビニへの事業集中を決断。2026年下半期までの北米事業の上場や、総額2兆円の自社株買いも表明した。今年5月にはスティーブン・ヘイズ・デイカス社長を迎え経営体制も一新した。
クシュタールに対しては、買収が米独禁法に抵触する恐れがあるとして、米国内の2000以上の店舗売却を主張。今回の撤回について、セブン関係者は「独禁法のハードルが高いことをようやく理解したのではないか」と推し量る。
一方、17日のセブンの株価は前日比200円超下落し2007円50銭で終わった。10日に発表した25年3〜5月期連結決算は増益を確保したものの、国内コンビニの苦境は変わらず、市場には単独路線への疑念も根強い。
今後の焦点は、セブンが来月発表する中期経営計画だが、ある幹部は「株価を上げなければ、また別の企業が襲ってくるかもしれない」と身構えている。