スーパーマンは「移民」だった。排外的ムード感じる選挙前、元TBSアナの私が思ったこと

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2025年07月18日 08:50  女子SPA!

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女子SPA!

映画『スーパーマン』のポスター
 2010年にTBSに入社し、『朝ズバッ!』『報道特集』などを担当したのち、2016年に退社したアンヌ遙香さん(39歳・以前は小林悠として活動)。

 TBS退社から8年経った今年、紆余曲折を経て20年生活した東京を後にして活動拠点を故郷北海道に戻したアンヌさん。アラフォーにして再スタートを切った「出戻り先」でのシングルライフの様子や心境をつづる連載です。
 第43回となる今回は、アメリカでちょっとした論争を呼んだ映画『スーパーマン』の監督の発言をきっかけに、昨今の日本で感じる“排外主義”的な空気について考えます(以下、アンヌさんの寄稿です)。

◆「スーパーマンは移民」監督の発言が論争に

 7月20日は参議院議員通常選挙。私は期日前投票で投票を済ませましたが、皆さんはいかがですか?

 この時期、あまり政治的な事を前面に押し出した文章を書きたくないのですが、最近ちょっと目についたニュースがありましたのでご紹介します。

 7月13日付のNHKニュースによると、アメリカでは今、『スーパーマン』の新作映画をめぐってちょっとした論争が起きているんだとか。

 きっかけは、監督のジェームズ・ガン氏がイギリスの「タイムズ」紙の取材で、「スーパーマンはアメリカの物語だ。ほかの場所から来てその国で暮らす移民だ」と語ったこと。

 同ニュースによると、これに対してトランプ前大統領の支持者や保守的なコメンテーターからは「イデオロギーを押しつけている」などと反発の声があがったそうです。また一方で、映画を観た人からは「スーパーマンは移民として義務を果たし、この国に尽くしている」といった肯定的な声もあったのだとか。

 ガン監督は、映画会社が公開した動画の中でこんなふうにも話しています。

「私たちが住む世界は決していいとは言えません。私が考えるスーパーマンはとても優しく思いやりがあります。スーパーマンには強さより優しさが大切なのです」

 ここでガン監督が投げかけているのは、アメリカのトランプ政権は強固な排外主義を掲げていますが、そのアメリカの「魂」ともいえる「スーパーマン」そのものが、実は移民だということを忘れていませんか? という問いかけ。

◆スーパーマンは私にとって「ヒーローの原点」

 なにを隠そう、うちの一家(私は北海道出身北海道在住ですが、父がアイルランド系アメリカ人)は幼いころクリストファー・リーヴ主演バージョンのスーパーマンが大好きで大好きで、なつかしの金曜ロードショーで放送されたものなどをVHSに録画しては繰り返しよく観たものでした。

 絵にかいたように美しいクリストファーリーヴが、普段はちょっとドジな眼鏡っこの新聞記者クラークケントとして生活し、市民の危機を聞き付ければ電話ボックスにさっと入り込み、あっというまにスーパーマンに。澄んだ青い瞳はキラキラしているだけではなく、慈愛と優しさが満ちていました。

 私の中の「ヒーロー」の原点はあの70年代、80年代スーパーマンと言ってもよいでしょう。私は今回のこのニュースを耳にしてはっとしました。そうなのです。

 今でも映画の映像を覚えていますが、スーパーマンは滅亡の危機にひんした惑星クリプトンから乳児のときに地球に送られてきて、カンザス州の夫婦のもとで育てられたという、ちょっと「かぐや姫」を思わせるような設定だったのでした。

 たしかにそうだった。いわれてみれば彼は「移民」なんだわ、なんて膝を打った私ですが、実はこの設定、原作者のルーツがヨーロッパからアメリカに逃れたユダヤ人移民だったことも反映されているとも言われているんだとか。これは初耳だった。

 アメリカはそもそも移民が集まって構成された国。排外主義を掲げる人々のルーツをたどっていけば、必ずどこかで「移民」としての背景にぶつかるわけです。

◆日本でも感じる「排外主義」と、ガン監督の言葉

 ときおり行き過ぎも感じる「排外主義」はアメリカのみならず、世界中、日本でも感じることがあります。

 特に選挙期間中の今、「外国人政策」を最重要視するという人も一部いるようですね。

 私はこの件に対しては何もコメントするつもりはありませんが、ここで紹介したいのはガン監督の言葉。

「私が当初から作りたかったのは善良で優しい心を持った人物を主人公にした話でした。なぜなら私たちが住む世界は決していいとは言えません。『優しさ』というものが最も反逆的でパンクロックだと言われる世界です。だから私が考えるスーパーマンはとても優しく思いやりがある男です。スーパーマンには強さより優しさが大切なのです。

結局のところこの映画には切なさがあります。スーパーマンは実在しないからです。でも願わくは映画を見た人たちに自分もスーパーマンになれると思ってほしいです。私の願いはこの映画を見た子どもたちが15年後、スーパーマンになって世界を救ってくれることです」(7月13日公開・NHKの記事より)

 この年になってわかりますが、実は「やさしさ」に勝る強さ、尊い価値観はない、と心底思います。だからこそ私は本当に優しい人を心から尊敬します。

 何かを強固に排除しようとする動きは本当に正しいことなのでしょうか。これ以上は言いませんが、私は今回のスーパーマンのニュースを紹介せずにはいられなかったのでした。

<文/アンヌ遙香>

【アンヌ遙香】
元TBSアナウンサー(小林悠名義)1985年、北海道札幌出身、在住。現在はフリーアナウンサーとしてSTV「どさんこWEEKEND」メインMCや、情報番組コメンテーターして活動中。北海道大学大学院博士後期課程在籍中。文筆家。ポッドキャスト『アンヌ遙香の喫茶ナタリー』を配信中。Instagram: @aromatherapyanne

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