福井女子中学生殺害事件の再審初公判が開かれた名古屋高裁金沢支部の法廷=3月6日、金沢市 前川彰司さんに再審無罪を言い渡した18日の判決では、検察側が裁判所の働き掛けを受けて開示した捜査報告書など287点の証拠によって、当初有罪とされた根拠がことごとく崩れた。再審手続きで広範囲の証拠開示を求める声がさらに強まるのは確実で、裁判所の姿勢にも影響しそうだ。
再審で検察側は、血の付いた前川さんを見たとする知人証言は核心部分でおおむね一貫しており信用性は高いなどとして、改めて有罪を主張した。しかし判決は知人証言について、捜査機関の不当な誘導によって得られた疑いがあるとして信用性を否定。検察側主張を退けた。
証拠開示は、静岡一家4人殺害事件で再審無罪が確定した袴田巌さんのケースでも決め手になった。有罪の根拠とされた血痕付きの衣類について、弁護側は裁判所の勧告で開示されたカラー写真で血の色の赤みが不自然だと考え、再現実験を実施。結果をまとめた報告書を新証拠として提出し、再審開始につなげた。
前川さんについても、第2次再審請求審になって初めて開示された証拠が第1次請求審で提出されていれば、より早期に無罪となったのではないか。裁判所は捜査機関へ積極的に開示を働き掛けた上で、確定判決が揺らぐ可能性に関して審理を尽くすことが求められる。