「人間国宝」って、どんな人?! ─映画「国宝」の大ヒットで改めて注目

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2025年07月19日 08:00  日刊スポーツ

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映画「国宝」のポスター (C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会

<ニュースの教科書>



歌舞伎のある女形役者の壮絶な半生を描いた映画「国宝」が、上映時間約3時間にもかかわらず異例の大ヒットとなっていて、あらためて「人間国宝」に注目が集まっています。今年度はちょうど、制度が約50年ぶりに見直されることになり、これまでにない分野からも“国の宝”が誕生する見通しです。知っているようで知らない、人間国宝について学んでみたいと思います。【久保勇人】


    ◇    ◇    ◇


■重要無形文化財のわざを高度に体現・体得


国は、文化財保護法で「演劇、音楽、工芸技術その他の無形の文化で、我が国にとつて歴史上または芸術上価値の高いもの」を無形文化財と定義。特に重要なものを「重要無形文化財」に指定し、同時にこれらの「わざ」を高度に体現・体得している人や集団を、保持者または保持団体として認定しています。


保持者や保持団体の認定には、「各個認定」、「総合認定」、「保持団体認定」の3つの方式がとられ、このうち各個認定を「人間国宝」、正式には「重要無形文化財の保持者」といいます。この指定・認定は1955年に始まりました。


重要無形文化財はこれまで芸能と工芸技術の2分野で指定されてきました。芸能では、能楽、文楽、歌舞伎、舞踊などで指定。例えば「尺八」を重要無形文化財に指定し、その高度な体現者である野村峰山さんを人間国宝として認定。「歌舞伎 女方(女形)」で、坂東玉三郎さんを認定しています。工芸技術では、陶芸、染織、漆芸、金工などが指定され、例えば、「八重山上布」で新垣幸子さんを認定、「色絵磁器」では十四代今泉今右衛門さんが認定されています。


総合認定は、重要無形文化財に指定される芸能を2人以上が一体で体現している場合に、団体の構成員を認定します。例えば、「雅楽」では、宮内庁式部職楽部部員が認定されています。保持団体認定は、重要無形文化財に指定される工芸技術で、そのわざを保持する人が多数いる場合、これらが主たる構成員となっている団体を認定します。例えば、「津軽塗」では津軽塗技術保存会が認定されています。


人間国宝は現時点で、芸能(指定38件)認定54人、工芸技術(33件)50人の計104人。これまでには、のべ401人、実数398人(過去に1人で2分野で認定されたケースが3人あったため)に上ります。


■芸能、工芸技術で最大116人


人間国宝は、文化庁が有識者らにより構成される文化審議会の専門調査会を開催し、芸能や工芸技術の実態などを踏まえて検討・答申し、文部科学相が認定します。申請制度や推薦制度はありません。文化審議会は18日、陶芸技法の1つ「釉下彩」の中田一於さんら6人を新たに人間国宝に認定するよう文科相に答申しました。答申通り決まる見通しで、これで計110人となります。


人間国宝には事実上定員があり、116人です。保持者の技術の錬磨や伝承者養成などに対して、国は年200万円の助成金を支給しています。その予算が02年以降は毎年2億3200万円のため、最大116人となるのです。総合認定は現在、15団体、保持団体認定は16団体です。ちなみに、美術工芸品や建造物などの国宝は現在、計1144件です。


■約50年ぶり制度見直しで食文化からも認定へ


一方、文化庁はこのほど、制度を約50年ぶりに見直し、料理人など食文化に関わる人も人間国宝に認定できるようにすることにしました。対象分野に「生活文化」を加えて、伝統的な食文化に関しても貴重な優れたわざを持つ人を支援し、技術を保護し後世に残していこうという趣旨です。


すでにユネスコが「和食」や「伝統的酒造り」を無形文化遺産に登録するなど、日本の伝統的な食文化は世界的にも評価されるようになっています。しかし、例えば郷土料理や酒などは、生活や食文化の変化、少子高齢化や過疎化による後継者不足などが課題となっており、継承のため支援や保護が必要な状況でもあります。


国は保護の網を広げるため、21年に登録無形文化財の制度を創設。すでに「生活文化」分野も対象とし、食文化ではこれまで「伝統的酒造り」「菓銘をもつ 生菓子(練切・こなし)」「京料理」「手もみ製茶」が登録されています。


文化庁は、人間国宝に食文化の人々を加えるにあたり、助成金の予算額をどうするかについても検討しています。定員が増えるのか、従来のままなのかも注目されます。


また文化庁は食文化について、人間国宝制度とは別に、さまざまな分野の第一人者を「食の至宝」のような呼称で顕彰する制度を近く始める方針です。【久保勇人】


◆久保勇人(くぼ・はやと)1984年入社。文化社会部、アトランタ支局、スポーツ部など経験。


■「圧巻」原作もミリオンセラー


映画「国宝」(李相日監督)は、任侠の家に生まれた少年が歌舞伎の名家に引き取られ、女形の芸に人生を捧げる物語。血筋が大きな意味を持つ世界でもがき続ける主人公を演じるのは吉沢亮。生まれながらに将来を約束された御曹司は横浜流星。血筋も才能も異なり、盟友でもありライバルでもある2人が、激動の道のりを芸にしがみつきながら高みを目指していきます。


6月6日に公開されると、見た人のほとんどが、2人の演技をはじめ、単なる映画でも舞台でもないような特別な映像体験に圧倒され、「圧巻」「時間を忘れた」「映画館で観るべき」など絶賛する声が加速度的に拡散。リピーターも多く、動員は右肩上がりに増えて、週末観客動員ランキングが3週目で1位になった後も、前週比超えが続く異例の展開となりました。公開から1カ月間で観客動員数は319万人、興行収入は44・8億円に達し、7月13日時点で398万人、56億円を突破しています。吉田修一さんの原作小説(朝日新聞出版)も、文庫で上下巻ながら累計発行部数が計100万部を突破するなど、社会現象といえます。

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