こども家庭庁=東京都千代田区 虐待を受けるなどした子どもを短期的に受け入れる児童相談所(児相)の「一時保護施設」で、都市部を中心に定員超過が目立っている。入所日数も長期化する傾向にあり、過酷な労働環境から職員の不足も続く。識者は職員が置かれた状況を社会全体で理解することが必要だと指摘する。
こども家庭庁によると、東京都や千葉県、神奈川県では、2023年度の一時保護施設の平均入所率が100%を超過。入所日数も21年度は全国で平均32.7日だったが、千葉は同75.5日、東京と埼玉は同40日超と多かった。児相が対応する虐待相談件数も毎年増加し、一時保護される子どもの数はおおむね右肩上がりで推移している。
児相の業務は心理的な負担も大きく、採用活動をしても職員の確保が難しい状況だ。同庁によると、23年度に全国の児相で退職した児童福祉司の数は270人に上り、8割超が心身の不調や業務上の不満などを理由に挙げた。
職場環境を巡り、裁判となるケースも出ている。千葉県では施設の元職員が、定員の倍の子どもが入所する環境で長時間労働を余儀なくされたとして県を提訴。地裁は今年3月、県に安全配慮義務違反があると認定し、計約50万円の支払いを命じた。
児相での勤務経験がある鈴木崇之東洋大教授(子ども家庭福祉論)は、給与などの待遇が不安定な嘱託職員も多く、夜勤も敬遠される傾向にあるため、慢性的な人手不足が続いているとみている。
同教授は「保護者からの理不尽な要求や苦情も多く、休みたい時に休めない。社会の関心も薄く、やりがいを感じる前に辞めてしまう人が多い」と指摘。職員の待遇改善に加え、モチベーションの維持や向上も重要だとして、社会全体で職員が置かれた状況への理解を深める取り組みが欠かせないと話した。