関西電力美浜原発=福井県美浜町 関西電力が美浜原発(福井県美浜町)で次世代炉建設に向けた調査実施を表明し、東日本大震災以来止まっていた原発新増設が動きだした。政府は制度整備などを通じて事業者を後押ししたい考えだが、思惑通りに進むかは見通せない。
震災後にすべて停止した国内の原発だが、現在は14基が再稼働。政府は今後の電力需要増加を踏まえ、2月に決定したエネルギー基本計画で、「可能な限り原発依存度を低減する」との文言を削除し、最大限活用する方針に転換した。
一方、2040年度に原発の電源構成を2割程度に高める目標の達成には30基超の稼働が必要となる。安全性の高い次世代炉への建て替えも推進し、廃炉原発の敷地内でのみ可能だった建て替え要件の緩和なども打ち出したが、実用化の技術はまだ確立されていない。
原発建設にかかるコストも課題だ。原発は調査や建設に約20年かかり、建設費用も1基当たり7000億円を超えるとされる。関電の森望社長は22日の記者会見で、「資金需要や財務状況、金融環境を総合的に判断する」と語った。
政府は既に、原発を含む脱炭素につながる発電所新設を促す制度を導入。武藤容治経済産業相は同日の閣議後会見で、「今後とも必要な検討をしていかなくてはいけない」とさらなる支援策に含みを残したが、国民の理解が得られるかは不透明だ。