
【写真】「3つのグノシエンヌ」で松田凌が主演 共演に安野澄、岩男海史、前迫莉亜
本格推理小説や怪奇・幻想小説の祖として後世に名を残した作家・江戸川乱歩。数々の推理小説を世に送り出す一方で、「人間椅子」「鏡地獄」など、怪奇、妄想、フェティシズム、狂気をにじませた変格ものと称される作品も多く執筆している。
今年没後60年を迎える江戸川乱歩の3作品を、『RAMPO WORLD』と題して長編映画化。晩秋の夜に、妖しくも美しい乱歩の世界へと誘う―。公開されるのは以下の3作品。
■10月3日「3つのグノシエンヌ」
原案は、1925年に発表された短編小説「一人二役」。タイトルの通り、一人の男が妻の気を惹くために別人になりすまし妻の反応を楽しむ乱歩の造語である“奇妙な味”を堪能できる作品だ。
主演は、『追想ジャーニー リエナクト』や東映ムビ×ステ映画『仁義なき幕末 ‐龍馬死闘篇‐』など映画主演作が続く松田凌。共演には、安野澄、岩男海史、前迫莉亜。
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■10月17日「蟲」
原案は1929年に雑誌「改造」にて発表された中編小説の「蟲」。対人恐怖症の青年が初恋の相手に再会し初恋を再熱させ愛憎劇へと展開していく、人間の深い闇が猟奇的かつ幻想的に描かれ数多い乱歩作品の中でも問題作と言われている作品だ。
主演は、NHK連続テレビ小説『虎に翼』で伊藤沙莉が演じる主人公・寅子の同僚・汐見圭役を演じ話題を呼んだ平埜生成。本作が映画初主演となる。
共演には佐藤里菜、木口健太、北原帆夏、山田キヌヲ。
監督・脚本は、平波亘。今泉力哉、二ノ宮隆太郎の作品や直近では『ナミビアの砂漠』、『とりつくしま』などの助監督を務め、自身でも映画『餓鬼が笑う』、『サーチライト‐遊星散歩‐』、連続テレビドラマ『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』など幅広く手掛けている。
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原案は、主人公の男が妻を殺し、その遺体を蝋人形として飾っていると告白する―夢と現実の境界が曖昧な物語『白昼夢』(1925年「新青年」掲載)と、湖畔の旅館の大浴場に“のぞき装置”を設置した主人公が、そこで起きた殺人事件の一部始終を目撃するも、死体が忽然と姿を消すという謎を描いた『湖畔亭事件』(1926年「サンデー毎日」連載)の二作に脚色を加え、一つの作品として現代に新たによみがえらせた。
主演は、NHK連続テレビ小説『虎に翼』で大庭家の長男・徹太役を演じた見津賢。本作で映画初主演を務める。
共演には上脇結友、宮田佳典。
監督は、山城達郎。奥野瑛太主演で東日本大震災から3年後の福島で生きる家族をテーマにした映画『心平、』がロングランヒットし、第29回新藤兼人賞最終選考に選出されている。
脚本は、『相棒」『特捜9』『遺留捜査』など多くの人気テレビドラマシリーズ作品の脚本を手がける川崎龍太。
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3作品の各主演キャスト、監督陣のコメント全文は以下の通り。
※川崎龍太の「崎」は「たつさき」が正式表記
<コメント全文>
<「3つのグノシエンヌ」>
■松田凌
違う誰かになりたい
誰しも一度は考えたことがあるように
江戸川乱歩の生み出した少し窪んだ世界はどこか知っている場所でもありました
近からず遠からず、すぐ隣にあることのようで食べ物は喉を通らなくて
まごついている自分を監督に導いていただいて
撮影スタッフの皆さんと共演者の皆さんと
この映像をつくりました
自分もその一人として参加させていただいて
撮り終えた時、もっと撮ってもらいたいと
より映画が好きになったのを鮮明に憶えています
屈折しえぐみのある時間が皆様の目と心にはどう映るんだろう
江戸川乱歩の世界をより知っていただけるきっかけの一つになれたら幸いです
頭を開いて
ゆっくりと
■ウエダアツシ(監督・脚本・編集)
学生の頃に『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』(石井輝男監督)をはじめ、『D坂の殺人事件』(実相寺昭雄監督)や『双生児‐GEMINI‐』(塚本晋也監督)など、乱歩原作の傑作映画には大きな影響を受けましたので、本企画に参加できたことは光栄な限りです。
今回原案とした「一人二役」はちょうど100年前に書かれた短編小説です。この100年で社会は大きく変わりましたが、乱歩が描いた“人間の本質”は変わらない…というか、むしろその狂気性や欲望の類いは多様化とともに個人化が進む現代において、新たなリアリティを生み出しているようにさえ思えます。そんな乱歩の世界観を松田凌、安野澄、岩男海史、前迫莉亜という4名の素晴らしい個性をもつ俳優たちが見事に体現してくれました。
とてもシリアスで、とても滑稽で、とてもイビツな“愛の奇談”をぜひ映画館でお愉しみください。
<「蟲」>
■平埜生成
初めての主演映画で凄まじい作品と出会うことが出来ました。俳優として、これほど幸せなことはありません。この作品は、『蟲』というタイトルからは想像つかないほどの「愛(アイ)」が詰まっています。究極のラブ・ストーリーといってもいい。また、乱歩への愛、映画への愛、人間への愛にあふれています。なにより、平波監督の愛に満ちています!
のぼせるほどアツい撮影でした。必死でした。夢中でした。がむしゃらでした。キャスト・スタッフの烈しいエネルギーが凝縮されています。強烈です。毒々しいです。艶やかです。そして、やっぱり愛おしいです。この「愛(AI)」の物語が、たくさんの方の胸をつき抜きますように!
■平波亘(監督・脚本)
『蟲』という映画をつくりました。
このお話をいただいた時、小学校時代に図書館で初めて借りた書籍が江戸川乱歩だったことを、鮮明に思い出しました。
脚本化するにあたって、ひさびさに読んだ乱歩の世界は、そこに生きる人たちの倒錯的な愛や歪んだ欲望が、現代社会に棲む私たちの生態がそのまま映し出されているようでした。そうです。ようやく時代が乱歩に追いつきつつあるのです。
この映画は、理不尽な世界に翻弄されながら、叶わぬ愛を届けようとする愚かものたちの想いを、本当に素敵な役者とスタッフで可視化することを目指しました。結果、自分の想像を遥かに超えたとても可愛くてポップな映画になったと思います。ぜひ、劇場でお楽しみください!
<「白昼夢」>
■見津賢
本作で主演を務めました見津賢です。
はじめて脚本を読ませていただいた時に、面白い題材で、観る人はどんな印象を抱くんだろうかと予想ができない危うさみたいなものを感じました。そこから主人公や作品について山城監督達と話し合いながらブラッシュアップをしていきました。実際に撮影を終えてもはっきりとした答えは出ないままでした。でもそれが乱歩の世界観に近いのかと気付かされたのです。乱歩二作品の題材を織り交ぜ現代に落とし込んだこの『白昼夢』で起こる化学反応のような何かを、観た皆さんがどう感じるのか、まるで非現実なることが起こる夢の中にいる感覚を味わっていただけるのではないでしょうか。
■山城達郎(監督)
「あれは白昼の悪夢だったのか、それとも現実の出来事だったのか。」
江戸川乱歩の『白昼夢』は、この印象的な一文から始まります。わずか数ページの“掌握小説”でありながら、乱歩独特の妖しさと不穏さが凝縮された作品です。今回、映画化するにあたり、『白昼夢』の世界観に、長編小説『湖畔亭事件』の“覗くことに執着する男”という人物を組み合わせ、主人公の内面に深く踏み込みながら、現代を舞台に再構築しました。
乱歩が描いた人間の“性(さが)”は、100年経った今もなお強烈で、鋭く私たちの心に刺さります。見津賢さん、上脇結友さん、宮田佳典さんという魅力的な俳優陣と共に、“覗く男”と“覗かれる夫婦”という特殊な関係性の人物たちを丁寧に掘り下げていきました。
その先にある真実は果たして――「白昼の悪夢か、現実か」 ぜひ劇場でお確かめください。