エヌビディア(NVIDIA日本法人)は7月31日、東京都内に在住する女子中学生/高校生を対象とするオフィスツアーを開催した。これは山田進太郎D&I財団が主催する「Girls Meet STEM in TOKYO 女子中高生向けオフィスツアー」の一環として行われたもので、抽選で当選した20人の女子中高生が集まった。
この記事では、オフィスツアー当日の様子をお伝えする。
●そもそも「Girls Meet STEM」って何?
「Girls Meet STEM」は、山田進太郎D&I財団が取り組んでいる女子中学生/高校生向けのツアー式プログラムだ。
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その名の通り、Girls Meet STEMでは女子中学生/高校生に「STEM(科学/技術/工学/数学)」に関連する仕事や研究/学習をしている人や現場と“出会う”機会を提供している。その出会いを通して、自分がやりたいことや関心のあることを見つけるきっかけにつなげることを目的としているそうだ。
「Girls Meet STEM in TOKYO」は、同財団が東京都と連携して開催するプログラムで、参加対象は東京都内に在住または通学する女子中学生/高校生となる。女子中高生向けオフィスツアーは東京都が「STEM分野魅力発信事業」として2023年度から開始したもので、2025年度からGirls Meet STEM in TOKYOの一環として開催されることになった。
今回のオフィスツアーは大きく「第1弾」「第2弾」の2期間に分けて開催され、両期間で合わせて50社以上の企業が協賛している。ツアーはリアルまたはオンラインでの実施となり、参加可能な人数(組数)は企業によって異なる。1回の申し込みで3社まで参加希望を出すことが可能で、企業が定めた定員を超えた場合は抽選で参加者が決まる。
エヌビディアのツアーは2024年夏に次ぐ2回目の実施で、第1弾企業の1社だ。20人を募集したところ、20人を超える応募があり抽選が行われたという。つまり、参加した女子中学生/高校生は抽選を“勝ち抜いた”ことになる。
●オフィスツアーでどんなことをした?
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今回のオフィスツアーでは、3つのプログラムが用意された。
プログラムの開始前には、エヌビディアの大崎真孝社長(NVIDIA副社長を兼務)があいさつに立った。大崎社長は、エヌビディアの約200人の従業員のうち約2割が女性であること、女性従業員が営業職やエンジニア職として会社で活躍していることを紹介した上で、「(今回のイベントで)少しでも未来を感じていただいて、皆さんが将来について考える時に、ちょっとでも参考になれば幸いだ」と述べた。
会社紹介
まず、エヌビディアで広報を務める吉川香葉子氏がグローバル企業としてのNVIDIAの概要を紹介した。
吉川氏はCM制作会社やPR会社を経てエヌビディアに入社したという経歴を持つ。テクノロジー企業というイメージから、エヌビディア(NVIDIA)はバリバリの“理系”企業というイメージを抱きがちだが、吉川氏はむしろバリバリの“文系”である。そのことを引き合いに、吉川氏は「理系が多そうな会社でも、文系の人が活躍できる部署(分野)は必ずあり、その逆もある。自分の得意なことや好きなことは、想像以上に幅広い分野の会社で生かせる」と、参加者にアドバイスをしていた。
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AIデモツアー
会社紹介の後、参加者は10人ずつに分かれて「AIデモツアー」と「ASK Me Anything」に参加した。
AIデモツアーでは3つのコーナーでNVIDIAのGPUとそれを生かした技術を体験できた。ノートPCが3台並んでいる一角では、Valveが開発したゲーム「Portal」が展示されていた。
パッと見ではいずれも同じPortalのデモンストレーションに見えるのだが、左のPCはオリジナルの(=2007年にリリースされた)Portal、真ん中のPCはNVIDIAのGPU(GeForce RTXシリーズ)に最適化された「Portal with RTX」、そして右のPCはPortal with RTXに超解像/マルチフレーム生成技術「DLSS」を適用した場合と、技術の進化や効果を体感できる展示構成となっていた。
参加者には普段はPCゲームをしないという人もいたのだが、Portalを“遊び比べる”ことで違いは十分に体感できたようだ。
GeForce RTX 5090を搭載するデスクトップPCでは、生成AIを使ったアーキテクチャデザイン(部屋の設計)のデモンストレーションを実施していた。左側の部屋の写真にマウスで“何か”を書き込むと、生成AIが右側の部屋のイメージに家具や調度品を描き加えてくれるという趣向だ。
参加者は「何が出てくるのかな?」という観点で楽しんでいるようだった。
そして機材が置いてある一角では、同社のAIプラットフォーム「NVIDIA DGX」に関する説明が行われた。さすがに実際に稼働しているデモンストレーションは難しく、このコーナーのみ説明員による解説となった。しかし案外質問する参加者は多かったようで、盛り上がりを見せていた
ASK Me Anything
その名の通り、ASK Me Anythingではエヌビディアの女性従業員が参加者の質問に答えていた。女性従業員の職種は「営業」「エンジニア(2人)」「広報」という布陣で、経歴も多様だった。
わざわざ応募してからの参加ということもあってか、参加者からはさまざまな質問が出てきた。例えばエヌビディアが外資系企業ということもあり、「仕事に英語は必須か」「英語はどの程度できないとマズいか」という質問は比較的多かった。英語は話せるに超したことはないが、「言語を問わず、コミュニケーションを取ることは重要」という回答には個人的にも「なるほどな」と思った次第だ。
また主にエンジニアという仕事を意識してか、「中学校/高校でどういう勉強をしておくべきか」「大学の勉強で役立ったことはあるか」「大学院まで行くべきか」といった質問もあった。営業と広報は海外大学卒業で留学経験があったことから「留学にメリットはあるのか」「なぜ海外の大学に行ったのか」といった質問もあった。
面白い質問としては「大学でアルバイトはすべきか(する暇があるのか)」「どんなアルバイトをしているのか」「仕事とプライベートのバランスをどう取っているのか」というものもあった。
エヌビディアの女性従業員は、参加者の質問に真摯(しんし)に答えていた。
●将来の進路を考える上で良い機会に
東京都が女子中高生向けオフィスツアーを始めたのは、「STEM分野での女性活躍を推進する」ことが目的だ。男女共同参画の観点から、女性の従業者が少ないとされるSTEM分野に、もっと目を向けてもらうという意図もある。
「STEM」に「女子」というと、いわゆる「リケジョ(理系女子)」を増やすという目的なのかなと思われがちだ。しかし、この取り組みはあくまでも女子の進路やキャリアの“選択肢”を増やすことに主眼がある。
事実、エヌビディアのツアーに参加していた女子中学生/高校生の中には「理系科目(数学や理科)はむしろ苦手」という人も複数いた。ある参加者は、仕事に携わる人の話を聞いた上で将来について“逆算”して考えたい(何をしなければいけないのか見定めたい)という意図で参加したという。
ASK Me Anythingにおいて、エヌビディアのある女性従業員が「教科的な得意/苦手だけで、将来を決めてしまうのは良くない」という内容の発言をしていた。まさにその通りで、将来にしたいこと/やりたいことを見定めて、取り組むべきことを考えることは大切だ。
今回のプログラムを通して、参加者の“選択肢”は確実に増えたと思う。参加者の将来に幸あれ。
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