片手で持てる合体ミニPC! スマホサイズでデスクトップPC向けGPUもドッキングできる「Khadas Mind 2s」はロマンの塊だった

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2025年08月07日 12:20  ITmedia PC USER

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ITmedia PC USER

パッと見はポータブルタイプの外付けHDDに見える「Mind 2s」

 合体ロボットものや戦隊ものにハマった人なら、合体や変形をするメカにワクワクしない人はいないだろう。もちろん筆者もその一人だ。合体/変形するロボットが活躍するアニメを見て育ち、後にハマったPCや携帯電話などのガジェットも、やはり合体や変形するデバイスにときめいてしまう。


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 また、合体や変形をしなくても、小さいのに高性能なデバイスも大好きだ。モバイル機器やノートPCも、予算が許す限りは性能を盛って購入するようにしているし、外付けのGPUボックスと組み合わせて、どうにかデスクトップPCの代わりにならないか、という妄想だけは毎日欠かさず行っている。


 そんな筆者の琴線に触れそうなPCが、中国Khadasのモジュール型ミニPC「Mind 2s」だ。超小型のPC本体には専用の端子があり、さまざまな専用モジュールを取り付けることで機能を拡張できるという、まさに筆者がときめいてしまいそうな合体メカだ。


 こんな面白いデバイスを試す機会はなかなかない。二つ返事で依頼を承諾し、今回はPC本体の「Mind 2s」(24万9999円)と、拡張モジュール「Mind Dock」(2万5900円)、「Mind Graphics」(14万5900円〜)を試してみた。


●外付けHDDサイズの「Mind 2s」


 KhadasのMind 2sは、ポータブルHDDサイズのミニPCだ。実際にスマートフォン(Google Pixel 9a)と比べてみたが、きっとその小ささが伝わるはずだ。


 本体サイズは約146(幅)×105(奥行き)×20(高さ)mm、重さは約435gという超小型のボディーには、ハイエンドノートPC向けの「Core Ultra 7 255H」が搭載されている。動作クロックは最大5.1GHz、高性能のPコアが6コア、高効率のEコアが8コア、さらに消費電力の低いLP Eコアを2基、合計で16コアと、このボディーに入っていることが信じられないほどの高性能なCPUだ。


 そしてメインメモリはLPDDR5X-8400の64GB、ストレージにはPCI Express 4.0対応のM.2 SSD(容量は2TB)が搭載されている。


 モジュールを接続していない状態でもWindows PCとして使える。Mind 2s本体の背面にはHDMI出力、Thunderbolt 4、USB4、そしてUSB 3.2 Gen 2をサポートするUSB Standard-Aの各端子が2基ある。


 そして他のミニPCにはない特徴として、Mind 2sにはバッテリーが搭載されている。容量は5.55Whと小さく、バッテリー稼働ではなく「作業を中断、スリープ状態にし、Mind 2sを違う場所に持って移動する」「移動した先に設置してある、モジュールに接続して作業を再開する」といった使い方が想定されている。


 このモジュールというのが、冒頭に挙げた「Mind Dock」や「Mind Graphics」を指す。それぞれに映像出力やUSBポートを備えているので、職場と自宅、リビングと自室など、それぞれに設置したモジュールに、ディスプレイやマウス、キーボードなどをつないでおけば、いつもの使い慣れたPC環境を本体だけを持ち運んで構築、直前まで行っていた作業を即座に再開できるというのが、Mind 2sの一番の強みだ。


 そしてモジュールとの接続だが、これはMind 2sの底面に設けられたコネクターを利用する。ケーブルレスで接続できるため見た目がキレイなだけでなく、このコネクターはPCI Express 5.0(x8)接続なので、Mind Graphicsのようなデスクトップ向けGPUとの接続でも性能のロスが少なく、Dockなどに接続した外付けストレージとのデータのやりとりも高速に行うことが可能になっている。


●Mind 2sの性能をベンチマークテストでチェック


 ここからはMind 2sの性能を各種ベンチマークテストを通じてチェックしていく。ベンチマークテスト時の設定はWindowsの電源プランで「バランス」を選択して実施している。


 Mind 2sのスコアは3Dテストに限り、内蔵グラフィックスに加えデスクトップPC向けの「GeForce RTX 4060 Ti」を搭載するMind Graphicsに接続して実施したものも掲載する。


 比較用として、可搬性の高いゲーミングノートPC「ASUS TUF Gaming A14(2024)」「ASUS TUF Gaming A14(2025)」のスコアを参考スコアとして掲載する。順に「NVIDIA GeForce RTX 4060 Laptop GPU」「NVIDIA GeForce RTX 5060 Laptop GPU」を採用したモデルだ。


CINEBENCH R23


 3Dレンダリングを通してCPUの性能を確認する「CINEBENCH R23」の結果は以下の通りだ。


・シングルコア


・Mind 2s:1608ポイント


・TUF Gaming A14 2025:1950ポイント


・TUF Gaming A14 2024:2026ポイント


マルチコア


・Mind 2s:5363ポイント


・TUF Gaming A14 2025:1万5333ポイント


・TUF Gaming A14 2024:2万2532ポイント


 シングルコアでは比較用のゲーミングノートPCに近いスコアを記録したが、マルチコアでは大きく差がついてしまった。


 理由はいろいろ考えられるが、独自端子を経由していること、Mind 2sの超小型のボディーでは熱を逃がしきれず、CPUの性能をフルに発揮できる時間が短かったなどが考えられる。


 また、Mind 2sに搭載されているCore Ultra 255Hは、合計16コアといえど性能よりも電気効率の高いEコアやLP Eコアを多く採用しているので、全てが高性能コアを搭載するAMD Ryzen AIシリーズに比べると、どうしてもマルチコアでのスコアが出づらいことも要因だろう。


PCMark 10


 続いて、PCの総合ベンチマークテスト「PCMark 10」の総合スコアを見てみよう。


・Mind 2s:6921ポイント


・TUF Gaming A14 2025:7315ポイント


・TUF Gaming A14 2024:7946ポイント


 こちらのテスト結果では、CINEBENCH R23に比べて比較対象のゲーミングノートPCとの差が小さい。


 PCMark 10のテスト内容はブラウジングやWord文書のようなドキュメントの作成、ビデオ会議や簡単な画像編集など「一般的なPC操作」のパフォーマンスを計測しているが、こうした用途であれば超小型のMind 2sと、ゲーミングノートPCでは動作の快適さにそこまで差がないということだろう。


 また比較用スコアに掲載はしていないが、一般的なビジネスノートPCやモバイルノートPCで、同じテストを行うと5000〜6000ポイントくらいのスコアを記録するため、Mind 2sはこんなに小さなボディーながら、普段使いの範囲では大きく性能や使用感で劣るということはないということだ。


3DMark


 では、3D性能はどのくらいあるのだろうか。PCの使い道として、日中は仕事、夜はゲームなど趣味のために使うなど、昼夜で用途が大きく変わるケースは珍しくない。


 ゲーミングノートPCなどはまさに昼間は高い性能を持て余すほど、仕事での利用は快適に行え、さらに夜の自由時間には性能を存分に発揮してゲームに活躍する、1台2役の存在だ。ここからのテストでは、Mind 2sとMind Graphicsを組み合わせた場合も実施している。


 3D性能の一番手は定番の「3DMark」だ。実施したのはDirectX 12をテストする「Time Spy」シリーズ、DirectX 11をテストする「Fire Strike」と、レイトレーシング性能をテストする「Port Royal」を実行し、パフォーマンスのチェックを行った。総合スコアは以下の通りだ。


・Time Spy


・Mind 2s(内蔵GPU):2680ポイント


・Mind 2s + Mind Graphics:1万512ポイント


・TUF Gaming A14 2025:1万499ポイント


・TUF Gaming A14 2024:9171ポイント


Time Spy Extreme


・Mind 2s(内蔵GPU):1191ポイント


・Mind 2s + Mind Graphics:5072ポイント


・TUF Gaming A14 2025:5038ポイント


・TUF Gaming A14 2024:4611ポイント


Fire Strike


・Mind 2s(内蔵GPU):5533ポイント


・Mind 2s + Mind Graphics:1万7387ポイント


・TUF Gaming A14 2025:2万5766ポイント


・TUF Gaming A14 2024:2万1846ポイント


Fire Strike Extreme


・Mind 2s(内蔵GPU):2870ポイント


・Mind 2s + Mind Graphics:1万3109ポイント


・TUF Gaming A14 2025:1万2366ポイント


・TUF Gaming A14 2024:1万934ポイント


Fire Strike Ultra


・Mind 2s(内蔵GPU):1542ポイント


・Mind 2s + Mind Graphics:7132ポイント


・TUF Gaming A14 2025:6589ポイント


・TUF Gaming A14 2024:5591ポイント


Port Royal


・Mind 2s(内蔵GPU):1220ポイント


・Mind 2s + Mind Graphics:8024ポイント


・TUF Gaming A14 2025:6442ポイント


・TUF Gaming A14 2024:5306ポイント


 さすがにMind 2sのCPU内蔵グラフィックスでのゲームプレイは厳しそうな結果となった。DirectX 11をテストするFire Strikeシリーズのうち、フルHDでのテストとなるFire Strikeはテスト中でもなんとか遊べそうなくらいの動きをしていたが、それ以上の解像度や処理が重たいTime Spyシリーズのテストでは、スコアの通りまず動かないと思った方がいいだろう。


 ただ、ここにデスクトップ向けGPUのGeForce RTX 4060 Tiを搭載するMind Graphicsを接続すると、当然ではあるが、かなりスコアが伸びる。


 ゲーミングノートPCも十分に性能が高く、重量級のゲームタイトルもかなりの高画質で遊ぶことができるが、それと変わらないスコアを記録しているため、超小型PC+デスクトップ向けGPUの組み合わせであれば、ゲームは十分に遊べると考えていいだろう。


FF14/FF15ベンチマーク


 では、実際のゲームをベースとするベンチマークテストはどうだろうか。「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー(FF14)」「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION(FF15)」のベンチマークアプリを試してみよう。


 ベンチマークテストは解像度をフルHD(1920×1080ピクセル)に、画質設定はどちらも最も高い設定にしてテストを行った。結果は以下の通りだ。


・FF14ベンチマーク


・Mind 2s(内蔵GPU):2980ポイント


・Mind 2s + Mind Graphics:1万2772ポイント


・TUF Gaming A14 2025:1万4339ポイント


・TUF Gaming A14 2024:1万4018ポイント


FF15ベンチマーク


・Mind 2s(内蔵GPU):2387ポイント


・Mind 2s + Mind Graphics:8915ポイント


・TUF Gaming A14 2025:1万998ポイント


・TUF Gaming A14 2024:8240ポイント


 こちらのテスト結果も、傾向としては先に行った3DMarkに近い。やはりCPU内蔵グラフィックスではゲームのプレイは難しく、結果は「設定変更を推奨」「重い」と散々な結果になってしまったが、Mind Graphics接続時は「とても快適」「快適」と、不満なく遊べるであろう結果になった。


 実際、Mind 2sを使うとすればだが、例えば普段のデスクにはMind Dockを設置し、そこにPCモニターや周辺機器を接続し「PC」として使うと便利だろう。グラフィックス性能を求められない日常的な使い方であれば、ベンチマークテストの結果の通り、十分に高速、快適に使えるはずだ。


 そしてMind GraphicsはTVなど、PCディスプレイとは別の大画面に接続しておくと良さそうだ。仕事が終わった後に一度Mind 2sをスリープにして、Mind Dockから取り外し、Mind Graphicsにセット。Mind Graphicsにはゲームパッドなどゲーミングデバイスを接続しておけば、すぐに仕事からオフに切り替えてゲームプレイモードにスイッチ可能だ。


 部屋が無限に広ければ、仕事用のPCデスクとゲーム用のPCデスクを別々にできるが、なかなかそうした広さを確保するのは難しい。


 日中、仕事用のデスクの上にゲーミングデバイスがあっても邪魔になり、ゲームをプレイするときに日中使った仕事道具が並んでいても邪魔だ。


 これを片付けモードを切り替えるような手間を、Mind 2sであれば「場所ごと変えてしまう」という、半ば強引な方法ではあるが実現できるのはなかなか面白い。


●専用の設定アプリもあり、機能はまだまだ少ない


 Mind 2sには専用の設定アプリも用意されている。その名も「Mind」と、そのままだ。Mindで設定できるのはMind 2s本体の設定だけでなく、接続されているモジュールの設定も変更できる。


 ただ、レビュー時点では設定できる項目の数は少なく、Mind 2sは内蔵バッテリーの充電上限の設定くらいだ。


 Mind Dockに至っては特になし、Mind GraphicsもLEDの色をプリセットされた中から変更できるだけだ。もちろん、それぞれのファームウェアアップデートなど重要なメンテナンス機能もあるのだが、あまりカスタマイズ性には富んでいないのは少々残念だ。


 複数のモジュールを切り替えて使うMind 2sだからこそ、特定のモジュールに接続して起動した際には「指定したアプリケーションが復帰時に起動する」ような設定、機能があるとうれしいと感じた。


 またMind Graphicsに動作モードを選択できる設定や、イルミネーションもランダムやレインボーなどの発光パターンを選択できる機能が追加されると面白さが増すのではないだろうか。


 ぜひ、Khadasにはモジュールのバリエーションの追加だけでなく、モジュールを生かした設定ができるようなMindのアップデートに期待したい。


●モジュールで拡張、合体は面白い! 可能性はもっと広げてほしい


 KhadasのMind 2sだが、やはりモジュールとの合体機構と、合体することでMind 2sだけでは苦手なことを克服できるのは面白く夢がある(価格はネックだが……)。


 これは完全に合体ロボと同じで、そのままでは倒せない敵にも、合体することでパワーアップし倒せたり、苦手なフィールドに適した装備と合体し、新しい必殺技を見せられたときの気持ちと同じだ。


 だからこそ、このモジュールという方式はなるべく長く続けてほしいし、世代が変わっても互換性を保ってほしい。現状はモジュールもMind Dock、Mind Graphicsしかなく、ノートPCに変身できるようなモジュールや、DTM機器など特定のジャンルに強いハードウェアと一体化できるようなモジュールなどがあったりすると面白いだろう。


 もちろん既存のモジュールも、より新しい世代のGPUを搭載したモデルや他社メーカーのものを搭載したものがあってもいいだろう。Khadas以外から、互換性のあるモジュールが登場するといった展開にも期待したい。



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