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元交際相手からのストーカー被害を神奈川県警に訴えていた川崎市の女性が殺害された事件で、県警は4日、一連の対応が不適切だったとする検証結果を公表した。担当した警察官全員が「危険性を過小評価」し、組織的な初動対応をせず、女性の失踪後も積極的に捜査しなかったと結論づけた。関わった幹部や担当者ら計43人が処分(退職者は処分相当)を受け、県警は遺族に謝罪した。
県警の和田薫本部長は4日に記者会見し「相談を受けていた女性が殺害されるという重大な結果が発生したことを重く受け止め、被害者や親族からの相談に対する不適切な対応について深くおわびします」と陳謝した。
報告書などによると、岡崎彩咲陽(あさひ)さん(当時20歳)や家族は2024年6月以降、何度も県警に連絡。白井秀征(ひでゆき)被告(28)=殺人罪などで起訴=からの暴力やつきまといについて相談したが、川崎臨港署はストーカー規制法に基づく警告を出さなかった。
12月9〜20日には岡崎さんが計9回、署に電話したが、対応した署員は「話しぶりが落ち着いている」と判断し、危険性を過小に評価。ストーカーなどの「人身安全関連事案」として扱わず、記録も取らなかった。署長と県警本部人身安全対策課へ連絡する必要があったが、しなかった。
岡崎さんは同20日に行方が分からなくなったが、その後も署や県警本部は事件性がないと判断していた。岡崎さんが身を寄せていた祖母宅の窓ガラスが割られ、22日に祖母が「白井被告が連れ去ったのではないか」と通報。署員が駆けつけたが、資材を忘れたため鑑識活動をしなかったという。署長も「自分の意思でいなくなった可能性が高い」と考え、積極的な捜査は行われなかった。
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署は過去にも2人の交際トラブルに対応したが、「復縁した」と判断していた。そのため、行方不明になってからも岡崎さんが白井被告の元に隠れているのではないかという先入観が署員らにあったという。
約4カ月後の25年4月には、岡崎さんの親族からの電話で、白井被告が米国に渡航したことを把握した。県警は同30日にようやくストーカー規制法違反容疑で白井被告宅を捜索。床下から岡崎さんの遺体が見つかり、翌日に初めて和田本部長に報告された。
県警は体制が形骸化して機能不全になっていたとして、ストーカー事件などの司令塔となる参事官級ポストを新設する。また、全ての捜査員が適切に対応できるようマニュアルを作る。
県警は事件発覚後の5月に検証チームを作り、事案に関わった140人に聴取して内部調査を進めていた。【横見知佳、宮本麻由】
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