本家のRIP SLYMEは2025年4月に期間限定で5人での再始動を発表
画像:株式会社エフエム東京 プレスリリースより(PRTIMES)今や当たり前の存在となったYouTuber。自分の主張を訴えたり、TV番組のように面白い企画にチャレンジしたり、ゲーム実況をしたり……。YouTubeには毎日のようにたくさんのYouTuberの動画が投稿されています。しかし、YouTubeが現在のように有名人も参画するスタイルになる前は、一般人が普段の何気ない日常や余興などを投稿するホームビデオのような動画も少なくありませんでした。
◆「熱帯夜 高校生」――伝説となった素人動画
そうした中、2025年9月現在において1382万回再生を記録している一般人の動画があることをご存じでしょうか。その動画が投稿されたのは2014年。制服を着た男子高校生4人組が学校の校舎を使ってRIP SLYMEの曲『熱帯夜』のPVをパロディしている動画です。動画のタイトルは「RIPSLYME 熱帯夜 高校生」。
動画内で4人はそれぞれ本物の音源をバックに口パクしながら、RIP SLYMEのメンバーになりきって一人ひとりが歌唱パートを担当。校舎の廊下をうねうねと練り歩いたり、カメラに向かってラッパーのようにアピールしたりする姿が見られます。
男子高校生が友達とふざけているだけの動画ではあるものの、彼ら4人の個性や子どもらしい悪ふざけの雰囲気がありながらも、大人に片足を突っ込んだ年齢特有の気だるさ、放課後の校舎、そして粗削りな画質や直録の音源、2007年リリースの『熱帯夜』という曲のセレクトなどが、同時期に青春を送ったアラサー以上の世代に刺さっている様子。
コメント欄にも「国民の“友達のお兄ちゃん”」、「高1のときに見ていた高3の格好いい先輩たちって感じ」、「髪型や制服の着こなしが平成感があってたまらない」、「俺はこいつらからしか青春を摂取できない」といったコメントが続出していました。
彼ら4人の存在を無視して放課後を過ごす他の生徒や、校舎の廊下を後ずさりしながら撮影し、彼らと同じスピードでカメラワークをこなす“5人目のメンバー”の存在など、細部にまで着眼して動画を評価する視聴者も。
この4人や投稿主の詳しい素性はまったくわからないという一般人としての匿名性、さらにはマネタイズなどを求めず単純に仲のいい友達とふざけて撮影したというノスタルジックさに胸を打たれる人も少なくない様子でした。
◆「熱帯夜 社会人」――11年ぶりの“奇跡のカムバック”
その動画の持つ魅力に惹かれたユーザーたちの間でYouTube上では伝説となった彼ら。そんな中、2025年8月に突如「RIPSLYME 熱帯夜 社会人」というタイトルで11年ぶりに動画を投稿したのです。そこには、新しく建て替えられた校舎でスーツ姿に身を包み、同じく『熱帯夜』のPVのパロディをするアラサー世代になった4人の姿がありました。
「高校生に戻りたいと思ってたけど、大人になるのも悪くないって教えてもらった」、「制服からスーツに、古い校舎から新しい校舎に、上履きから来客用スリッパに、粗削りな画質から高画質へ。いろいろ変わったけど4人組の関係性だけは変わらないのが大人の青春って感じでエモすぎる」、「世界一熱い一般人のカムバック」、「国民的グループの再結成くらいネットが盛り上がっている」
といった興奮のコメントが殺到。平成文化や自身の青春時代に思いを重ねる30代・40代の視聴者で溢れています。
また中には「自分たちの都合ではなく、本家の復活を祝うタイミングでカムバすることに一番『社会人』を感じる」といったコメントもありました。
◆本家RIP SLYMEとの“神がかった流れ”
本家のRIP SLYMEはグループとしての活動休止が続いていた中で2025年4月に期間限定で5人での再始動を発表しています。そう考えると確かに彼ら4人は社会人としての誠意や本家へのリスペクトとして今夏での再結成および動画投稿に至った可能性はあるでしょう。
ちなみにYouTubeでは音源を使用する場合、著作権の許諾が必要であることはよく知られています。元の動画「RIPSLYME 熱帯夜 高校生」は、『熱帯夜』を1曲丸ごと使用しており、通常であれば著作権侵害として削除されてもおかしくありません。
しかし、RIP SLYME側はこれを削除せず、さらに社会人バージョンの動画には公式チャンネルがコメントを残すなど、本家も公認の存在となっていることには驚きです。
さらには、偶然のタイミングと思われますが、本家のRIP SLYMEは「RIPSLYME 熱帯夜 社会人」が投稿された数日後にYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」の第582回に登場。『熱帯夜』の一発撮りを披露し、コメント欄には「リップ復活→熱帯夜高校生が復活→熱帯夜ファーストテイクという神がかった流れ」などと盛り上がりを見せています。
昨今、炎上商法によって視聴数を稼ごうとしたり、ネットでバズった人物がメディアに出て掘り下げられたりという動きが一切ない彼ら。多くを語らないという、あくまで一般人としてYouTubeを楽しんでいる姿には「そういうのもネット黎明期の平成っぽい!」と郷愁を感じる視聴者も多い様子でした。
「RIPSLYME 熱帯夜 高校生」も「RIPSLYME 熱帯夜 社会人」もともに1万以上のコメントがされており、一般人の投稿動画としては異常と言える数字です。彼らがこれだけ支持されているのは、昨今のYouTubeやネットにはない平成感がウケているのかもしれません。
◆平成ノスタルジーが呼び起こした“ネットの奇跡”
昨今の炎上商法によって視聴数を稼ごうとしたり、ネットでバズった人物がメディアに出て掘り下げられたりといった動きが一切ない彼ら。多くを語らないという、あくまで一般人としてYouTubeを楽しんでいる姿には「そういうのもネット黎明期の平成っぽい!」と郷愁を感じる視聴者も多い様子でした。
「RIPSLYME 熱帯夜 高校生」も「RIPSLYME 熱帯夜 社会人」もともに1万以上のコメントがされており、一般人の投稿動画としては異常と言える数字です。彼らがこれだけ支持されているのは、昨今のYouTubeやネットにはない平成感がウケているのかもしれません。
最近では今年の7月、5人組ロックバンドORANGE RANGEが2007年のヒット曲『イケナイ太陽』の令和版MVを発表。“令和版”と銘打っているものの、『イケナイ太陽』がヒットした当時の青春あるあるが詰まった内容になっており、「平成文化詰め合わせすぎる」として大きな話題となっています。
『熱帯夜』のPVパロディ動画を投稿した彼ら4人がここまで人気を集めているのは、音楽業界やネットに限らず、日本国内全体で平成文化を懐かしむ大きなムーブメントが巻き起こっていることの現れではないでしょうか。
一般人の投稿したYouTubeを発端とする平成感溢れるネットのお祭りは、まだまだ盛り上がり続きそうです。
<文/エタノール純子>
【エタノール純子】
編集プロダクション勤務を経てフリーライターに。エンタメ、女性にまつわる問題、育児などをテーマに、 各Webサイトで執筆中