日米財務相共同声明について記者会見する加藤勝信財務相=12日午前、財務省 加藤勝信財務相とベセント米財務長官による為替政策に関する共同声明は、トランプ米政権が日本側に通貨安につながるような財政・金融政策を取らないようにくぎを刺した格好だ。日本企業の輸出にプラスに働く円安・ドル高を、米側が問題視し、水面下で圧力を強める可能性もある。
対日貿易赤字の削減を目指すトランプ大統領は日本に対し「いつも通貨安を望んでおり、今もそうしようとしている」などと批判を繰り返してきた。4月に始まった日米財務相間の為替協議でも、円安修正のための為替目標の設定や日銀の利上げなどが求められるとの観測が常にくすぶった。
共同声明では、財政・金融政策を「競争上の目的のために為替レートを目標とはしない」とし、先進7カ国(G7)での合意内容を再確認。加藤氏は12日の記者会見で、為替水準の議論について「ベセント長官との協議では出ていない」と強調した。
ただ、米財務省が6月に公表した半期為替報告書では、日銀の金融引き締めの継続が「ドルに対する円安の正常化を後押しする」と指摘。ベセント氏は8月の米通信社のインタビューで、日銀の利上げが「後手に回っている」とも述べていた。
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「米国が円安を問題視していることに変わりはない。日銀に利上げを求め、円安を是正していく素地は残っている」と指摘している。