『国宝』©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会 「第30回釜山国際映画祭」ガラプレゼンテーション部門に出品された『国宝』が、現地時間9月21日に公式上映が行われ、吉沢亮、黒川想矢、李相日監督が渡韓、野外メインシアター会場でのトークセッション「オープントーク」に登壇した。
歌舞伎役者の家に引き取られ、芸の道に人生を捧げる主人公・喜久雄の50年を描いた壮大な一代記「国宝」。これを原作とした映画は、公開108日間でついに観客動員数1,050万人、興行収入は148億円を記録、邦画実写としては22年ぶりの100億円を突破し話題となっている。
本作が出品されたガラプレゼンテーション部門は、映画祭のメインプログラムであり、その年の話題作や世界で影響力のある監督の新作を上映する部門。
21日には、2,000人が集まった屋外会場で行われたオープントークに李監督が登壇し、韓国語で自己紹介。「歌舞伎は、どの国の人でもその美しさと伝統、歴史を感じることができる芸術だと思います。国や人種を問わず感動できる映画だと思っています」と挨拶。中盤には、喜久雄役の吉沢と黒川がサプライズ登壇し、共に韓国語で自己紹介すると、会場からは盛大な拍手が起こった。
吉沢は「1年半という長い期間、一つの役のために時間を費やすというのは貴重な経験でした。実際の歌舞伎役者の方々の足元にも及ばないので、稽古をすればするほど、どれほど素晴らしい方々かを実感しました。あの時は『やるしかない』という意地でやっていました。これまでの作品とは比べものにならないほど、覚悟が必要でした」と語り、「李監督からは、難しくて不可能な注文ばかりされました。しかし、一方でその注文は『役者なら乗り越えられる』という絶対的な信頼だと思いました。監督の言葉の中にある愛をとても感じることができました」と撮影当時をふり返った。
本編での演技について質問された黒川は、「演技が本当に面白くて仕方ないです。本作の中で『寝る時間が無駄だ』というセリフがあるのですが、その気持ちは分かる」と言いながらも、「演技を楽しむためによく眠るように努力しています」と付け加えて会場を笑わせた。
当日は、李監督、吉沢が参加しての韓国メディアによる記者会見(Busan Cinema Center・BIFF HILL)、オープントークに引き続き、CGV Centum CityにあるIMAX館では約300人を前に公式上映が行われ、上映後には李監督、吉沢、黒川の舞台挨拶も実施。
ヒット理由を問われると、李監督は「歌舞伎は日本の観客にとっても皆さん当然知っているのだけれども、そこまで観ている人は多いわけではないので、新しいものを発見できる映画だったと思います。歌舞伎役者ではない俳優たちがまるで歌舞伎役者のように非常に長い時間をかけてトレーニングをし、歌舞伎役者の感情をキャラクターに溶け込ませたため、役者の方々の真剣さが観客の皆さんにも届いたのではないかと思います」と分析。
「最初に台本をもらった時の気持ち、また役作りはいかがでしたか?」の質問に吉沢は、「李監督の『悪人』『怒り』は大好きな作品で、いつか李監督と是非ご一緒したいなと思っており、目標でもありました。今回オファーをいただき非常に嬉しく思いました。その時にはまだ台本もできていない中で原作を読み、歌舞伎役者の役ということでハードルの高い役だと思いました。その時点ではまだ深く歌舞伎というものに関わったことがなかったので、どれだけ大変なものか想像がつかなかったです。李監督への“愛”だけで、よくわからないけど飛び込もうと思いました。1年半くらい歌舞伎のお稽古をしましたが、稽古を重ねれば重ねるほど歌舞伎役者さんの深み、小さい頃から何十年も舞台に立って積み重ねている歌舞伎役者さんたちと並ぶということは到底無理な話だと、稽古を重ねれば重ねるほど実感していく日々でした。その中でどうにかやるしかないという覚悟と意地でどうにか必死になり撮影をしました」とコメント。
黒川へは、役について、歌舞伎の稽古についての質問があり、「この役はオーディションだったので、オーディションの少し前に台本をいただきました。歌舞伎役者さんの幼少期を演じるのには自信がなく、でもこの役は絶対に僕がやりたいと思いました。歌舞伎の稽古は半年くらいでしたが、今までダンスなどもやったことがなかったので、日本舞踊は難しかったのですが、途中からお稽古が楽しくなり、演技に近い感覚ですごく楽しかったなと今思い出しました」と明かす。
「人間のどのような部分が美しいと思うか?」という観客からの質問には、「今回、女形を演じていて、自分の感情をコントロールできない瞬間や何か必死に求めて、恋焦がれている時の表情は、外から見ると美しく見えたりするのではと、この喜久雄を演じていて感じました。喜久雄が演じた(「曾根崎心中」の)お初もその恋のためだけに命を燃やしていく。こういった演目が多いということは、そういったものが見たいのだろうと思っています。まっすぐ向き合う瞬間というのは人を美しくするのかなと思います」(吉沢)、「今作で長崎弁と関西弁の2つの方言を使いましたが、長崎弁の音の響きがとても美しいなと思いました。例えば外国語でも何を言っているのかわからなくても、気持ちが伝わるような、そういう時はとても嬉しいし、美しいなと思います」(黒川)とそれぞれ答えた。
そして今回、10月3日(金)から5都府県にて英語字幕版上映も決定。TOHOシネマズ日比谷、TOHOシネマズ六本木ヒルズ、TOHOシネマズ新宿、109シネマズプレミアム新宿、TOHOシネマズ池袋、横須賀HUMAXシネマズ、ミッドランドスクエアシネマ、TOHOシネマズなんば、シネマライカム、ユナイテッドシネマPARCO CITY 浦添の計10館で上映する。
『国宝』は全国東宝系にて公開中。
(シネマカフェ編集部)