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東京地検特捜部が30日、石井章元参院議員(68)=日本維新の会を除名=を在宅起訴し、昨年の広瀬めぐみ元参院議員(59)に続き、2年連続で国会議員が秘書給与詐取の刑事責任を問われる事態となった。四半世紀前にも詐欺容疑での摘発が相次ぎ、国会は再発防止を誓ったはず。制度の欠陥は明らかだ。
「国会議員は国民の模範になるべき存在。秘書の給与を横取りすることは許されない」「原資は税金。非常に悪質な犯罪だ」。ある検察幹部は秘書給与詐取の特徴をこう捉える。
公設秘書は特別職の国家公務員。国会議員1人につき3人雇用できる。月給は年齢や勤続年数に応じて約33万〜65万円。全額が公費負担だ。議員側は秘書の氏名や住所、採用日などを記載した「採用届」を国会に提出することが義務付けられている。
1998〜2004年、秘書給与詐取事件で与野党の国会議員5人が起訴された。給与を議員が自ら現金で受け取って政党支部に入金したり、実働する別の秘書名義の口座に振り込ませたりする手口が確認された。
与野党は協議して04年に国会議員秘書給与法を改正し、秘書本人への給与の直接支給▽議員の配偶者の秘書採用禁止▽原則65歳定年▽兼職の原則禁止――の対策が盛り込まれた。与野党の申し合わせで、採用届とは別に基本情報を記した「現況届」と「兼職届」の提出も必要になった。
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だが、石井元議員と24年8月に在宅起訴された広瀬元議員=有罪確定=のケースでは制度の「抜け穴」が浮かぶ。
石井元議員は「金庫番」とされる側近女性と共謀して秘書の給与口座を事務所で掌握し、政治資金に充てていた疑いがある。広瀬元議員も秘書給与の7割に当たる約260万円を秘書側から現金で受け取っていた。
国から秘書名義の口座に支払われたとしても、その先は議員の「モラル」を信じるしかないのが現状だ。
また、採用届とは別に提出する現況届は、記載情報を限定する代わりに国会事務局で誰でも閲覧が可能だ。本人が事務所で稼働していることを担保する狙いがあった。
しかし、23年9月に毎日新聞が実施した調査では、当時の与野党の国会議員273人が少なくとも1人の公設秘書について現況届の提出を怠っていた。この中には石井元議員も含まれていた。
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そもそも現況届は出さなくても罰則はない。閲覧は国会まで出向かないとできず、国民の監視の下に置かれているとは言いがたい。
石井元議員は親族から公設秘書の名義を借りた疑いがあり、親族は特捜部に名義貸しを認めたとされる。また、広瀬元議員を有罪とした東京地裁判決は「公設秘書の名義借りは他の国会議員もやっていると考えるなどあまりにも浅はか」と指摘している。
谷口将紀・東大教授(政治学)は「誰が秘書なのかをオープンにする仕組みをつくるに越したことはないが、それだけで不正は防ぎきれない。各政党が届け出がされている秘書が活動している実態をきちんと把握することが必要だ。今回の事件を契機にチェック体制を考え直す必要がある」と指摘する。【北村秀徳、佐藤緑平】
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