『A90型GRスープラ・スーパーカー』を走らせるブラッド・ジョーンズ・レーシング(BJR)は、新たにキャメロン・ヒルとの複数年契約締結を発表 来季2026年からオーストラリア最高峰RSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップに新規参入を決めたトヨタ・ガズー・レーシング・オーストラリア(TGRA)の一角として、ホモロゲーション登録担当チームであるウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド(WAU)とともに『A90型GRスープラ・スーパーカー』を走らせるブラッド・ジョーンズ・レーシング(BJR)は、新たにキャメロン・ヒルとの複数年契約締結を発表。これで来季はアンドレ・ハイムガートナー、マコーレー・ジョーンズと契約の残る所属ドライバーらとともに、4台中3台のシートが確定している。
■スープラで歴史の一部になりたい
改めてマット・ストーン・レーシング(MSR)からの移籍が決まったヒルの加入により、現在チームに所属するブライス・フルウッドの離脱も正式に確定させたBJRだが、チームの声明によれば、まずは残る4戦をシボレー陣営として「2025年選手権の残りの戦いに全力で取り組み、シーズンを力強く締めくくることを目指しています」とし、残る1枠に関して「2026年のラインナップについては、追って発表します」と記された。
2015年にフォーミュラ・フォード、2021年にはポルシェ・カレラカップ・オーストラリアでチャンピオンを獲得している28歳のヒルは、2023年よりMSRに移籍し最高峰カテゴリーで戦っており、今季3月のF1併催ラウンドでは、スーパーカーで初優勝も飾っている。また2016年にはトヨタ86のワンメイクでも創設初年度の開幕戦勝利を皮切りに、通算28回の出場で13勝を挙げ総合3位と2位を獲得、自身にとっても10年ぶりにトヨタとの再会を果たすことになる。
「2026年以降、新たにブラッド・ジョーンズ・レーシングに加入できることを大変うれしく思っている」と応じたヒル。「BJRへの加入で大きな意味を持つのは、トヨタとの新たな提携だ。トヨタは中途半端なことをせず、世界中で大きな成功を収めているメーカーだからね」
「僕にとってトヨタとはすでに深い繋がりがある。トヨタ86レーシング・シリーズが始まった当初から参戦し、初戦で優勝した。この経験は僕のキャリアに大きな影響を与えたんだ」
「僕はチームが醸し出す文化がとても気に入っており、ぜひその一員になりたいと強く願っていた。最終的な目標はチャンピオンシップ優勝だ。トヨタ・スープラでその歴史の一部になりたいと思っているよ」
自らもドライバーとしてキャリアをスタートさせ、成熟したチームを牽引してシリーズでの地位を築いたブラッド・ジョーンズ代表も、新規加入のヒルと豊富な優勝経験を持つハイムガートナー、そして自身の息子であるマコーレーのラインアップに期待を寄せる。
「来季、キャメロンをチームに迎えることができてうれしいね。彼はスーパーカーで確かな才能を発揮しており、我々のドライビンググループに新たな視点と経験をもたらしてくれるだろう」と続けたジョーンズ代表。
「キャメロンと彼のチームとともに、このプロセスを進めていくなかで、彼らの情熱と決意に改めて気づかされた。彼がBJRにふさわしい人材だと確信している。現在は2026年に向けた計画を策定中で、もちろん、大きな変更も予定している。今後の展開に期待していて欲しいね」
■フォード陣営に回帰したトリプルエイト
これでホモロゲ担当のWAUはチャズ・モスタートとライアン・ウッドの2台体制、BJRも4台中3台のシートが確定と、参戦初年度に向けほぼ体制の固まったトヨタ陣営だが、同年よりフォード陣営への電撃的スワップを表明している強豪トリプルエイト・レースエンジニアリング(T8)も、ブルーオーバルとの将来像を垣間見せ、チーム史上初となるGen3規定の第7世代フォード・マスタング・スーパーカーを公開した。
シリーズにおけるGM(ゼネラルモーターズ)との豊かな歴史を考慮し、今季初めの発表当初、このニュースは賛否両論を巻き起こしたが、カテゴリー史上最大のチームメーカー変更と言えるT8のフォード陣営“回帰”は、古豪ディック・ジョンソン・レーシング(DJR)からホモロゲーション登録担当チームの座を引き継ぐことも意味している。
現在、レッドブル・アンポル・レーシングは2025年のドライバーズ選手権とチーム選手権の両方で首位を走り、来週末に開催を控える『バサースト1000』では、これまで通算10勝のうち7勝をGMのマシンで獲得している。
かつてT8が製造したフォード(・ファルコン)は、チームが2010年にホールデンに移籍した後もスーパーカーに出場し、皮肉なことにライバルであるDJRが製造されたそのクルマで、その年のチャンピオンシップを獲得した。
「これは真に重要な節目であり、トリプルエイトが製造した最初のフォード・マスタング・スーパーカーが完成したばかりだ。年末に向け、スーパーカーで義務付けられた風洞試験のため、アメリカへ向かう準備は整っている」と記したのは、チームのマネージングディレクターを務める“7冠”王者ジェイミー・ウインカップ。
「まさに、すべてが一周したような瞬間だ。記憶に新しい方もいらっしゃるかもしれないが、トリプルエイトは2003年にフォードのチームとしてスーパーカーに参戦し、2009年末までブルーオーバルで成功を収めた。その時代、クレイグ・ラウンズと私がバサースト1000で3度の優勝を果たし、2008年と2009年には私にとって初のドライバーズチャンピオンシップも獲得した。この素晴らしい時期は、チームの将来に於ける覇権の礎を築いたんだ」
「そして今、2026年を見据えてフォードに戻ることになった。ワークショップの興奮は手に取るように分かるね。このマスタングがひとつひとつ完成していく様を見るのは、計り知れない誇りに満たされた。チーム全員の献身と努力は、まさに驚異的だよ」
これはブルーオーバルが先日、グローバル部門を『フォード・レーシング』にブランド変更したことを受けての発表であり「これは単にバッジを変更するだけの話ではない」と強調する。
「フォード・レーシングとの新たなパートナーシップと共通のビジョンを築くことを意味する。マネージングディレクターとしての私の役割は、トリプルエイトにとって最善を尽くすことであり、今回の変更はチームの将来にとって理にかなった前進だ」と続けたウインカップ。
「トリプルエイトと同じ情熱をフォードにも見い出し、彼らのモータースポーツ、とくに世界規模でのモータースポーツ、そしてスーパーカーへの取り組みは素晴らしいものがある。私たちはこれまでの成功の伝統を受け継ぎ、マスタング・プラットフォームでパフォーマンスの限界をさらに押し広げていきたいと考えている」
[オートスポーツweb 2025年10月03日]