自民党の新総裁に選出された高市早苗前経済安全保障担当相(中央)=4日午後、東京・永田町 日本は戦後最も厳しいと言われる安全保障環境に直面しており、自民党の高市早苗新総裁が新首相に就任すれば、外交面で真価を問われる局面が続きそうだ。まずはトランプ米大統領と信頼関係を構築し、日米関係を軌道に乗せられるかが焦点。党内きっての保守派として、歴史認識であつれきを抱える中韓両国との関係改善も試金石となる。
「まずは日米同盟の強化をしっかりと確認し合うことが大事だ」。高市氏は4日の記者会見で、トランプ氏との会談を念頭にこう強調。日米韓3カ国の枠組みなど同盟・同志国連携にも意欲を示した。
日米両政府は韓国・慶州で今月末から開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせたトランプ氏の来日を調整。新首相にとって初の日米首脳会談が28日にも行われる可能性がある。
日米関税交渉は石破政権で一応決着したものの、巨額の対米投資などの具体化はこれから。トランプ氏はかねて「日本は安保ただ乗り」と不満を持っており、安保関連費をさらに引き上げるよう求めてくる可能性もある。
高市氏は外交交渉の場数を十分に踏んでいるとは言い難い。総裁選では対米投資に関し、「不平等なものが出てきた場合の再交渉」に言及。4日の会見で早速、「日米の合意をひっくり返すことはない」などと火消しに追われた。
一方、新首相は今月下旬に開かれるマレーシアでの東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議と、APEC首脳会議に出席するとみられる。韓国の李在明大統領と会談する見通しで、中国の習近平国家主席との接触も予想される。
中国は日本産水産物の輸入再開を決めるなど日本に融和的な姿勢も見せるが、台湾周辺や東・南シナ海で威圧的な行動を強める。李氏は日韓・日米韓連携を重視し、石破茂首相と「シャトル外交」を行ったが、もともとは日本に批判的とされ「反日」路線回帰への懸念がくすぶる。
高市氏は総裁選で、島根県が条例で定める「竹島の日」式典に関し、閣僚出席を提唱。竹島は韓国が領有権を主張している。習政権が「核心的利益の中の核心」と位置付ける台湾については、「力や威圧による現状変更はあってはならない」とけん制する。
4日の会見で、高市氏は首相に就任した場合の靖国神社参拝について「適時適切に判断する」と述べるにとどめた。ただ、昨年の総裁選では参拝を明言した経緯もある。行動に移せば、両国と大きな火種を抱える可能性がある。