元行員による貸金庫からの窃盗事件が起きた三菱UFJ銀行練馬支店=1月7日、東京都練馬区 外国為替証拠金取引(FX取引)にのめり込み、貸金庫窃盗を繰り返した三菱UFJ銀行の元行員、山崎由香理被告(47)。借金が膨らみ続ける中でも「やめるとお金を返せなくなると思った」と法廷で明かすなど、ギャンブル依存症の深い沼から抜け出せなくなっていた。
検察側の冒頭陳述などによると、短大卒業後の1999年、窓口業務を担う一般職として入行。行内選考を経て総合職になると、2020年4月に支店で貸金庫を管理する立場に昇進し、間もなく盗みを始めた。
山崎被告にはFXで借金を背負い、13年に個人再生手続きをした過去があった。当時は夫の金で損失を穴埋めしており、「次に同じ行為があれば離婚する」と誓約書まで出していた。
再びFXに手を出した理由について、法廷で「もっと小遣いが欲しかった」と説明。夫への罪悪感から小遣いの増額を頼めず、「他に思い付くものがなかった」と振り返った。
損失を出し、夫の金を使い込んだが気付かれ、ついに顧客の貸金庫に手を出した。多額の借金を誰にも相談できず、FXと盗みを繰り返す自転車操業状態に。夫とも離婚し、起訴後、ギャンブル依存症と診断された。
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表は、山崎被告のケースを「誰にも言えぬまま借金を取り返せると思い込む典型的なパターン」と指摘する。依存症は再発しやすく、金銭問題を一度解決した後でも再びのめり込む人が多いという。
田中代表は「神経伝達物質に異常が生じ、ギャンブル以外で脳が興味を持てなくなる病気だと理解してほしい」と強調。「周囲は借金を肩代わりなどせず、患者が一度ギャンブルから離れても、治療につなげることが大切だ」と呼び掛けた。