
26年にわたり続いた自民党と公明党の連立関係に終止符が打たれることになりました。自民党の高市総裁は総理になれるのか。スタジオに生出演した、公明党・斉藤代表に詳しく聞きました。
【写真を見る】「クリーンな政治が一丁目一番地」公明党・斉藤代表がスタジオに生出演
四半世紀にわたる関係を「一旦白紙」に 公明党が連立離脱まもなく就任から1週間となる自民党の高市総裁。会談が始まるまで、“別れ”を告げられる事になるとは思っていなかったようです。
国会内で行われた与党党首会談。高市総裁と公明党・斉藤代表、2人の表情は対照的です。
約1時間半に及んだ会談の末、公明党が選択したのは、連立からの離脱でした。
公明党 斉藤鉄夫 代表
「自公連立政権については一旦白紙とし、これまでの関係に区切りをつけることとしたい」
対する高市総裁は…
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自民党 高市早苗 総裁
「そもそも本日の党首及び幹事長による会談は、何かを決めるという事ではなく、地方から聞いた声をお伝えするというのがきょうの議題でございました。一方的に連立政権からの離脱を伝えられました」
政界に激震が走った連立離脱。
その歴史が始まったのは1999年。当時は、自民党と自由党の連立に公明党が加わった「自自公連立」でした。
2009年、自公はそろって野党に転落しましたが、2012年に自民党が政権を取り返すと、再び公明党と連立を組み、以来、政策面や選挙での協力関係が続いていました。
四半世紀にわたる関係はなぜ終焉を迎えたのか?引き金となったのが「政治とカネ」です。
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公明党 斉藤鉄夫 代表
「政治とカネに対する取り組みは、公明党の一丁目一番地」
「クリーンな政治」を標榜している公明党。かつて放送された党のCMでは、悪事を働く代官らに、当時の神崎代表が…
公明党 神崎武法 代表(当時)
「そうはいかんざき!」
このフレーズが話題になったこともありました。
しかし、2024年と2025年の国政選挙では、連立を組む自民党の裏金問題が一因となり、巻き込まれる形で大敗。
そんな中、新たに自民党の総裁に就任したのが高市氏でした。
9月23日にnews23が行った候補者討論会では、「裏金問題は決着した」との認識を示した高市氏。
7日におこなった党の役員人事では、裏金問題で処分を受けた萩生田氏を幹事長代行に起用していました。
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公明党 斉藤鉄夫 代表
「すでに決着済みと国政運営に取り組む姿勢は、国民の感情とかけ離れており、これでは政治への信頼回復はおぼつかない」
また、公明党は連立を継続する条件として「企業・団体献金の規制強化」を求めてきましたが、折り合いませんでした。
公明党 斉藤鉄夫 代表
「自民党の回答は基本的に『これから検討する』という誠に不十分なもの。極めて残念でございます。自民党はいつも『検討する』、『検討する』、『検討する』と」
一方、連立離脱を突きつけられた高市氏は…
自民党 高市早苗 総裁
「野党の時代も含めて、協力をしあってきた関係でございますので、大変残念ではございました」
その上で、会談で公明党にこう尋ねた事も明かしました。
自民党 高市早苗 総裁
「『総裁が私でなかったら、このような連立離脱はないのですか』と。(斉藤氏は)『今回の総裁選挙で誰が選ばれていても同じです』と」
“連立離脱”の決断に、公明党の支持者は…
公明党支持者(60代)
「政治とカネの問題については、自民党にきちっと襟を正してもらいたいと思っておりましたので、そこの部分で妥協しなかったのは良かった」
公明党支持者(60代)
「反対は反対ですかね。与党にいて頂いた方が色々主張は通るのかなと。説得して自民の方を向いていてほしかったと思います」
公明党支持者(70代)
「非常に良かったなと。高市さんのタカ派というか、ああいったものとの連立はあり得ない。結党の理念に立ち戻って、もう一度弱い人の味方というか、そういうものに立ち戻っていただきたい」
対する自民党。総裁の座を争った小泉氏は…
小泉進次郎 農水大臣
「公明党が一貫してずっと言ってきたことは、基本的には人物本位であると。今後も連立の仮に外であったとしても、人物本位での関係性は続いていくところは続いていくのだろう」
萩生田氏は自身のブログに「批判に晒されても、仕事をもって信頼を取り戻す事が残された唯一の道」などと記しました。
“野党”に転じる公明党。影響が出るのが、次の総理を決める総理指名選挙です。
公明党 斉藤鉄夫 代表
「改革が実現不可能なのであれば、とても首班指名で『高市早苗』と書くことはできない。首班指名では公明党代表である斉藤鉄夫に票を投じます」
主要な野党が組んだ場合、高市氏以外の党首が総理に選ばれる可能性が出ているのです。
野党は早速、公明党に秋波を送っています。
立憲民主党 野田佳彦 代表
「懸案事項で取り上げていた政治とカネの問題で、あまり自民党に反省が見られないということに対して、相当な危機感を持ったということ」
国民民主党 玉木雄一郎 代表
「ぜひ政治とカネの問題、この問題に終止符を打てるように、これからもともに取り組んでまいりたい。内閣総理大臣を務める覚悟はあります」
混迷を極める日本の政治、今後どうなるのか。
「“一方的”という言葉は意外」 自民・高市総裁との会談で一体何が?上村彩子キャスター:
最後は握手で党首会談を終えたそうですが、連立離脱を伝えたとき、高市総裁の表情はいかがでしたか?
公明党 斉藤鉄夫 代表:
今回、我々が高市新総裁に会うのは3回目です。最初の段階から私達は、特に政治とカネの問題について、「『今回、自民党も変わっていくんだ』という明確なメッセージがなければ、連立政権はあり得ない」ということはずっと申し上げてまいりました。
そして2回目も1時間半、今回も1時間半、「政治とカネの問題」を中心に協議しました。
そういう意味で、「これからも検討する」ということでは、全国から集まってきた地方議員の皆さん、中央幹事会からやっと一任を取り付け、参加した私として、「それは持ち帰れない」ということで、「これでは、政権協議を打ち切らせていただきます」と。一連の話の中での話でしたから、決して驚いた様子はなかったように私は思いました。
上村キャスター:
連立離脱を伝えたときの第一声は何だったんでしょうか?
公明党 斉藤鉄夫 代表:
「これまでずっと協議を進めながら、一定の結論が得られないのであれば、今後も『検討する』というような曖昧な答えであれば、連立協議はここで打ち切らせていただきたいと思います」というのが私の最初の言葉でした。
上村キャスター:
それに対しての高市総裁の言葉は。
公明党 斉藤鉄夫 代表:
「私もまだ総裁になって5日目だから、皆さんに相談しないと決断できません」という趣旨のことをおっしゃったと思います。
そのことが、「一方的に協議を打ち切られた」「離脱を通告された」という言葉に繋がるかと思うのですが、私から見れば、政治とカネの問題、特に企業・団体献金の規制強化については1年前から協議をし続けてきたものです。
また、ちょうど1か月前には、自民・立憲・公明の3党党首会談があり、立憲民主党も公明党の案まで下りて、「一緒に協議しよう」ということを受け、自民党の石破総理も「自民党も一緒に協議をしていく」ということで決まっておりました。そういう中で、ずっと「検討する」と。そして今回もそうです。
総裁の権限の範囲だと思いますが、これもまた「検討していく」ということでしたので、「これではいつまでたっても結論が出ない」というふうに思い、私達はこのような決断をさせていただいたところです。
上村キャスター:
ずっと伝え続けていたのに「一方的」という言葉が出たことに対してはどう思いますか。
公明党 斉藤鉄夫 代表:
ちょっと意外です。「それは言葉の使い方としておかしいんではないでしょうか」というように申し上げました。
特に高市総裁だけに限っても、1週間前に新総裁として挨拶に来られたときに「三つの懸念事項がある。この懸念事項がなくならなければ、私達は連立政権ということにはなりません」ということはもう明確に伝えてあるわけです。
そして、今週の初めに1時間半の協議を行い、かなりギリギリまで詰めました。特に「企業・団体献金の規制強化」については、これまでの経緯も踏まえ、自民党に決断していただきたい内容について説明していたところなので、「一方的に」というのは少し違うんではないかなと私は思っております。
TBS報道局 岩田夏弥 政治部長:
地方組織の皆さんとの会議ではかなり侃々諤々、色々な議論が出たということを聞いております。
そして、代表一任を取り付けて今日臨んだということで、大変重い決断になったわけですが、支持者の皆さんからは色々な声が代表には届いているかと思うのですが、反応はいかがでしょうか?
公明党 斉藤鉄夫 代表:
今日、たくさんのメールがきましたが、「よく決断した」という声や、「やはり連立離脱は行きすぎだったのではないか」という両方の声が来ましたが、「離脱してよかった」という声の方が多いです。
喜入友浩キャスター:
「やはり連立しといた方がよかったのではないか」という声に引っ張られるような気持ちは今ないですか?
公明党 斉藤鉄夫 代表:
もう決断しましたので、これから公明党として我々中道改革の軸になっていく決意しております。
今回、我々が「政治とカネの問題」を連立協議に上げざるを得なかったのは、参議院で公明党は大敗しました。そのことで私は全国を歩いて皆さんの声を聞きました。それを「総括」という形で文章にしましたが、地域の自民党の広報を一生懸命応援している我が党の支持者が、自民党の問題である「不記載問題」を自民党にかわって説明して、「どうかこの人を応援しましょう」と言って努力に努力を重ねてきた。
ですが、「もう限界です」と。「自民党の不祥事を、なぜ公明党の私達が有権者の皆さんに向かって説明しなきゃいけないんですか」と。「自民党の人はほとんどしてないのに、何で公明党が説明しなきゃいけないんですか、もう限界です」という声をいっぱい聞いてきました。
そういう声を受けて今回、この懸念の中で、特に「不記載問題」について、有力議員の秘書が起訴されるという新たな事実もあった。それに対して、「もう禊は済んだ」ということで説明責任を果たそうとしていないというような姿もございました。
そういう意味で、「『政治とカネの問題』だけは1丁目一番地の問題で、この解決がなかったら連立政権はない」ということを最初にお会いしたときから申し上げていても、今回も具体的な回答がなかった。
色々な声がありましたが、「政治とカネの問題」について一定の前進があるということを前提に、「それがなければ決着すべきではない」という声が多かったので、今回こういう決断をさせていただいたところです。
喜入友浩キャスター:
そうした中で、迫っているのが総理大臣指名選挙です。10月20日か21日に召集される臨時国会で行われる予定ですが、斉藤代表は「高市早苗と書くことができない」とおっしゃっています。
そうすると、野党のまとまり方次第では自民党単独の196を超えて、野党側から総理大臣が選ばれる可能性が高まったと思います。
総理大臣指名選挙は野党側から総理大臣が選ばれてもいいとお考えでしょうか?
公明党 斉藤鉄夫 代表:
1回目の投票では、公明党は代表である私の名前を書いていただくことになると思います。2回目の投票の話かと思いますが、そのときの状況によって変わるので、まだどうなるかわかりません。
そのときは党のみんなと協議をして決めるわけですが、少なくともこれまで自民党と色々な政策協議をして、法案や予算の準備もしてきた。そういう経緯からすれば、いきなり野党の方の名前を書くということはないのではないかと思っていますが、これは私の個人的な考えです。
最終的には党のみんなで話し合って決めますが、個人的にはそのように思っています。
TBS報道局 岩田夏弥 政治部長:
今回、1番テーマにした「政治とカネの問題」「企業・団体献金の問題」について、自民党は回答をしてくれなかったということですが、斉藤代表の決断の後に、例えば国民民主党や立憲民主党、維新の会のトップも今回の公明党の判断に理解を示して、「これから協力していきたい」というような姿勢もにじませていました。
ということは、若干の考えの違いをどこまで厳しくするかは別にしても、公明党と国民民主党、立憲民主党、維新の会で協力をすれば、企業・団体献金をめぐる法制度は今よりももう少し厳しく厳格にという形で協力をして成立させることも可能かと思いますが、そういったことは目指していかれるんでしょうか?
公明党 斉藤鉄夫 代表:
立憲民主党の野田代表は、今まで「禁止」一辺倒でしたが、1か月前の3党党首会談で「公明・国民案に一緒に協議してもいい」と、それを受けて石破総理も「それでは自民党も検討します」と1か月前におっしゃっていた。
今回、その検討はしていなかったということがわかったのですが、そういう意味では、政策実現のために他の党と協力をしていくというのは当然のことでございます。
上村キャスター:
今回の決断ですが、公明党にとっても痛いところもあると思います。
比例票はこの20年で激減し、2004年のときは862万票あったのが、2025年は521万票まで減っています。どのようにして票を取り戻していくとお考えでしょうか?
公明党 斉藤鉄夫 代表:
「公明党らしさを前面に出す」ということだと思います。
「クリーンな政治」というのは公明党の1丁目一番地ですが、これまで自公政権の中で、自民党の不祥事があったら、そのダメージは自民党そのものよりも、一緒にやっている公明党の方が特にダメージが大きいということで、比例票が減るということがありました。
これからは、清潔な党、人権の党、平和の党、地域の党という公明党らしさをしっかり出し、中道改革の中心軸になっていく。
中道というのは「真ん中」という意味だけではなく、「人間中心」という意味です。人間という存在を中心にして、イデオロギーではなく人間を優先して考えていく。そういう中道主義、改革主義を前面に立てて、それに賛同してくれる他の党の方と協力しながらその道を開いていく。そういうことに国民の皆様のご支持を得て、減った票をまた取り戻していきたいと思います。
上村キャスター:
そうすると、今回の連立離脱が反転攻勢の第一歩と捉えていますか?
公明党 斉藤鉄夫 代表:
まさにその通りでございます。公明党らしさ、公明党が本来主張することをもっと前面に主張して、これまでは与党の一角ということで、与党との政策協議、与党の全体の中の整合性の中でしか政策提案ができなかったわけですが、これからは公明党独自の政策提案もどんどんしていきたいと思ってます。
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<プロフィール>
公明党 斉藤鉄夫 代表
2024年11月 公明党代表に就任
岸田・石破両内閣で国交大臣を務める
岩田夏弥
TBS報道局 政治部長
元官邸キャップ
小渕総理以来、主に政治取材を担当