
「私は小さいころから、朝ドラのヒロインがいちばんの夢だったので。俳優としてというより、もう高石あかりとして。今、『ばけばけ』でお芝居できていることが本当に幸せですし、これからも夢であり続けるんだろうなと思っています」
トキと自分がすごく似ている
9月29日にスタートした朝ドラ『ばけばけ』。応募者2892人の中からヒロインに抜擢された。高石の朝ドラオーディションへの挑戦は、『舞いあがれ!』(2022年)、『あんぱん』(2025年)に続き3回目だったという。
「これまで朝ドラには、いろんなヒロインがいて。どのヒロインも素敵だなと思うのが、“その壁があったからこそ、これにつながった”という未来が見える点です。今まで、私はたくさん前を向かせてもらえました。
今回は、また違った前の向き方かもしれないですけど、見てくださる人に前向きになってもらえたらいちばんうれしいなと思います」
作品のキャッチコピーは“この世はうらめしい。けど、すばらしい”。恨み、つらみ、ねたみ……人間の業や情念までをも描く怪談に魅せられた、明治時代の文豪・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の妻・小泉セツをモデルにしている。
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「小泉セツさんの人生が壮絶で。だからこそ、うらめしい日々が続いているんですが、そんな中でも笑い合える人たちと一緒に日々生活しているという物語です」
物語は4週目に突入。時は明治19年、松江の没落士族の娘・松野トキ(高石)は父親(岡部たかし)がつくった莫大な借金を返済すべく、雨清水傳(堤真一)のもとで働いていた。
しかし傳の病死により、その繊維工場は閉鎖。婿入りした夫・銀二郎(寛一郎)は遊郭の呼び込みの仕事まで始めるが、祖父・勘右衛門(小日向文世)に叱責され、失踪してしまう。トキは銀二郎を連れ戻すべく、東京へ……。その人生はとにかくハードモードだが、決してめげない。
「私、トキと自分がすごく似ていると感じていて。本当にいろんな感情が湧き起こるんですが、そんなことより生きていかないといけない。やらないといけないことが、目の前にあって。ただそれをやるしかないという考えが根っこにあるのかなと思います」
トキと高石自身が似ている、とは?
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「お芝居をするうえで、普段は“役が何を考えるか”が最初にあるんですが、今作に関してはあまりにも近くて。それは今までにない経験で、自分自身をなんだか重ねてしまう。
今まであまりない感覚なんですが、トキが重なる自分だからこそ出せる生々しさみたいなものがお届けできたらいいなと思っています」
「毎日が楽しい」と思える撮影
撮影が始まって約半年が経過。朝ドラヒロインとして過ごす日々について聞いてみると、
「撮影に入る前、いろんな方から“大変だよ”“つらいよ”って言っていただいていたんですが、毎日がすっごい楽しくて(笑)。“まだ楽しいな”“あれ?まだ楽しいな”がずっと続いていて。自分の中でも“いつかはしんどくなるんだろうな”と思ってはいるんですけど、日に日に自分が強くなった気がして。
“こんなに私って体力あったっけ?”と思っています(笑)。ひょっとしたら、この作品を終えたとき、私は“体力お化け”になっているんじゃないかな(笑)。もしかしたら、いつかはしんどくなるときが来るのかもしれないですけども、それもいい経験のひとつとして楽しみです!」
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今後のトキは、松江に英語教師としてやってきたヘブン(トミー・バストウ)と出会う。
「ヘブンさんとトキは、言葉や文化が違う難しさがすごくたくさんある中で、それをはるかに超える驚き、通じ合ったときのうれしさ、知らない文化を知る喜び……もっといろんな楽しいことが待っていると感じていきます」
トキが好きな怪談を通じて親睦を深め、やがて夫婦となっていく。
「ヘブンさんが素敵なのは、すごくいろんなものが見えているところ。自分の好きな日本という場所に来て、言語は違えど“好きなものは好き”と言えるその強さ。逆に“嫌い”って言える強さも持っていて。すごく怒るし、楽しいときはすごく笑ってるし(笑)。
一見、自由奔放な一面もあるんですが、でも私はそこの中に、絶対に“自分の正義”というものがあると感じていて。怒るのは誰かを守るため。そして、それをトキも見逃さない。表面上のものじゃなくて“この人は何を考えているんだろう?”と思考をめぐらせたときに共感ができたり、そこから逆に“守りたい”という感情が生まれていくんだと思います」
怪談は好き?
「昔から父が怖いものやホラー映画が好きだった影響で、私も好きです。お化け屋敷とかも(笑)。でも(モデルの)小泉八雲さんが描く怪談は怖いだけではなく、人の欲や愛情……いろんな感情が組み込まれていて。私はそこが、物語としてすごく好きです。小泉八雲さんの作品で言うなら『雪女』も『おしどり』も好きです」
