
フースーヤによる初のエッセイ『同☆究☆生〜ブレないふたりのプチモアイ〜』(KADOKAWA)が9月19日に発売された。
【撮り下ろし写真】ノリノリでインタビューに答えるフースーヤの二人
フースーヤといえば唯一無二の「ギャグ漫才」が魅力。いかにして独自のスタイルにたどり着いたのか。高校の同級生である二人のこれまでから、そして現在の状況までをインタビューで聞いてみた。
■コンビ結成は突然に
――お互い出会いは高校生時代だと聞いています。最初の印象はいかがでしたか。
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谷口理(以下、谷口):1年は別々のクラスだったんですけど、お互いのクラスの調子者みたいな感じで名前が聞こえてきて。その後共通の友達もいて仲良くなっていきましたね。
田中ショータイム(以下、田中):他のクラスにお調子者でうるさいいがぐり頭がおると聞いて。見に行ったら椅子に乗って「芸人になる」とか言っていて、苦手やなという感じでした。めっちゃイキってるやんと。
――お二人とも似た者同士という印象なのですが、苦手と感じたんですね。
田中:そうですね。このような言葉があります、「同族嫌悪」。
――でもそんなお二人が意気投合した瞬間があったわけですよね。
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谷口:はっきり覚えているのは、ショータイムがCOWCOWさんのギャグをみんなの前でやっていたとき。“マンキン”でギャグできるやんと思って、「あ、わかるやつや。おもろいやつや」と思ったのは覚えています。
※マンキン:お笑い用語で「本気で取り組む、全力でやる」といった意。
田中:谷口も原西さん(FUJIWARA)のギャグをやっていて同じタイプやと。いざ喋ってみたら、明るいしええやつやなとわかりました。
――お二人でお笑いをやろうと志した瞬間はあったんでしょうか。
谷口:僕は芸人になるのを公言していて、それを聞きつけたショータイムが僕のことをトイレに呼び出したんです。もう喧嘩やと思いました。トイレの奥まで追いやられて、「お笑い芸人になりたいって言ってるらしいな」と言われて、そうやけどと返したら右手が来たんです。
パンチ来た! と思ったらそのまま握手で、「俺もなりたいからよろしく」と。で、握手の次の瞬間にはショータイムが「俺、ミュージシャンとか俳優も目指しているからよろしく」って言って、なんて不安定な相方を選んでしまったんだろうと(笑)。
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田中:マルチにね。お笑いはコンビでやって、僕はマルチに活躍しますよ。
谷口:そこが二人で芸人になるとはっきり約束した瞬間ですね。
田中:こういうのってもっと仲良くなった人とか長年連れ添ってだったらわかるんですけど、高校で知り合って何か月とかですからね。でも、直感で「こいつしかおらん」と思ったんですよ。あのときの行動力も謎やし、そんな俺に「わかった。一緒にやろう」と言う谷口も謎です。
谷口:僕は中学の頃、一人にだけ「吉本とか行こうと思わへんの?」と誘ったんですよ。でも、そいつには「ないな」と言われて。それもあって、僕は相方を求めていたんやと思います。
■ショータイム「オーマイゴッドファーザー」降臨の瞬間
――その後、二人でNSCに入所されます。入所時から今の「ギャグ漫才」の原型はあったのでしょうか。
谷口:最初は言い間違い漫才をやってみたんですけど、誰も笑わんくて。慌てて修正して、変わったことやろうと決めました。あと入って気づいたのが、漫才がめっちゃうまいやつがもういたんですよ。「ハイスクールマンザイ」も流行っていましたし、同じことしていたらあかんとすぐ気づけたんです。今の漫才にはたまたまたどり着いたような形ですけど、ずっとこの道を歩んでいました。
田中:毎日もがいていた気がします。
――今のギャグ漫才に固まっていくきっかけや手応えはあったのでしょうか。
田中:「U-3」という芸歴3年目までの若手ライブがあったんですけど、そのときはどんな漫才をしようか行き詰まっていて。ちょうど谷口がNGK(なんばグランド花月)でビラ配りの仕事をしていて、渡しながら笑かすボケ合戦になったんですよ。
谷口:2〜3人からのフォローを得るためにね。
田中:そう。そのときに谷口が「このチラシ受け取ってくれないといけナッシングトゥーマッチ」って言ったんです。で、ネタ作るときに「ナッシングトゥーマッチおもろいな」という話になって。ツッコんだら普通やから、俺もギャグに乗っかってみるわと。そのときに、頭にパーン(この日一番の大声)と降ってきたんですよ。「オーマイゴッドファーザー」やと。
「U-3」の前に、先輩ゲストを迎えて僕らが色々教えてもらうという配信番組があって、ミキさんが来たんです。僕らは地元・神戸のいいところを紹介するコーナーで、そのとき初めて「神戸で皆さん楽しんでいかないといけナッシングトゥーマッチ(谷口)」、「オーマイゴッドファーザー降臨(田中)」とやったらめっちゃウケたんですよ。それからギャグをいっぱい入れたネタを作って、「よいしょ」という掛け声も入れてみて。
谷口:それまでバトルライブでは全く勝てなくて、出る資格も得られなかったんですけど、「U-3」で圧倒的1位になれてこれやと。
――ギャグ漫才は誕生した瞬間から受け入れられていたんですね。
谷口:たしかにそうですね。誕生したときにちょうどフジテレビの「新しい波24」のオーディションがあって。若手芸人がこぞって集まってやっていたんですけど、僕らのネタは局の人がめっちゃ笑ってくれたんです。
田中:外に並んでた同期から「みんなウケてないって聞いたけど、お前らのとこだけえげつない笑い声聞こえてた」とか言われて。
谷口:無事にオーディション通って、初めてのテレビに出させてもらいました。だから、ギャグ漫才が誕生してからは、バトルライブ、オーディションとトントン拍子でしたね。
――ただ、「新しい波24」終了後、フースーヤさんもテレビ出演は徐々に落ち着いていきます。
谷口:番組に1回出て手応えはあったんですけど、2回目がないんですよ。ただ、舞台出番があったのでそこまで不安はなかったですね。
田中:僕は「どうしよう、どうしよう」と不安だらけの毎日でした。「こいつらテレビで干されたやつらや」って周りの人が見てる気がして、テレビに出ても「こいつらもううええって」と思われてる気がして。
――それを打破するとしたら賞レースだったんですかね。
田中:ほんまにそうです。どうしようと話して、俺らはネタ頑張っていくしかないやろとなりました。漫才をいっぱい作って、単独ライブをいっぱい打っていこうと。やっぱり大阪におるんやったら、ネタしかない。
谷口:大阪には賞レースもいっぱいあるんで。2年目から今まで、2か月に1回の単独ライブは欠かさずやっています。
■転機はやはりM-1
――今年は「ytv漫才新人賞決定戦」で優勝しましたが、転機でいうとやはり一昨年の「M-1グランプリ」準決勝進出になるのでしょうか。
田中:M-1やな。
谷口:M-1すね。
田中:M-1でいい感じになって、霜降り明星さんの「オールナイトニッポン」にも呼んでもらって。「霜降り明星のラジオ聞きましたよ」「M-1見ましたよ」と言ってくれる方も増えました。
谷口:M-1敗者復活戦まで行って、「フースーヤってやっぱおもろいんや」になってきましたね。
田中:簡単ですよね。影響力ある誰かがおもろいと言うたら、みんなそれがおもろいと思うんですよ。
――意識している芸人や同期のライバル的な存在はいるのでしょうか。
谷口:僕はどうだろ、(明石家)さんまさんとかですね。
田中:志したかー(笑)。
谷口:でも同期となると、意外と誰も意識してないんかな。
田中:意識はしてないかもしんないですけど、ずっと一緒に大阪でライブをやっているとこで言うと、ダブルヒガシさんとかカベポスターさんに勝ちたいというのはありますね。ずっと先頭を歩いてるから。
谷口:「ytv」もあの人らが先に取って、僕らは負けてるんでね。あの人らが抜けたあとに勝ってるんで。
田中:ちゃんとは倒せてない。
谷口:一緒にM-1の決勝に行きたいという仲間意識ももちろんありますしね。
――今後、フースーヤさんが目指すべき場所はどこになるのでしょうか。
田中:さんまさんが引退する前に「もうフースーヤに全部任せるわ」って言わせたい。
谷口:そうなったら万々歳やな。二人ともクラスの人気者スタートだったんで、やっぱりテレビに出たいですね。
田中:今の千鳥さんみたいになりたいな。お互いそれぞれの番組があって、自分の好きなこともやる。もちろん漫才出番もあるし、漫才やったら大爆笑みたいな。あんなんが理想です。一番かっこいい芸人像。
谷口:そうね。テレビ、舞台、好きなこと全部やれてるのかっこいいっすね。
■エッセイの㊙︎話とは?
――改めて書籍のお話もお聞きします。今回オファーを受けたときの心境はいかがでしたか。
谷口:僕らみたいなやつが本って何を言うてんねんと思いました。まだ何にもなれていないから、今のタイミングで本出すんはちゃうけどなと。参考にとある芸人のエッセイを読んで、「字めっちゃある。だるいやん。嫌やな」とも思いました。
田中:お前素直すぎるやろ。
――ショータイムさんはいかがですか。
田中:「はい売れたー」と。出版社の方が売れると踏んで頼んできたということは、僕らがもうそれくらいの位置にいるんだと思いましたね。
――お互いのエピソードで印象に残っているものはありますか。
田中:谷口は中学の体育祭でふざけて、その翌週には選挙委員会の委員長として「公正なやつなので、絶対にふざけないでください」と言っていたらしくて。そのときのことを思い返して「まさしく僕はキングオブ誰が言うとんねんグランプリ優勝でした」と書いていて、おもろいなと思いつつ、「キングオブ」と「グランプリ優勝」どっちかでいいやろうと言いたくなる。
谷口:よりすごいってことやろ。
田中:どっちも入れちゃうってこいつっぽいなと。
谷口:ショータイムはTWICEの話とか好きなものをまっすぐ語れるんですよ。ファンの人からするとショータイムらしいと思えるはずだし、人間味に溢れているところがめっちゃええなと思います。
田中:こんなこと書いて、何年後かに恥ずかしいやろな……とかも全く思っていないです。
谷口:根っからのタレント気質やこいつ。あと、「酔ったらどうなるか」という質問のコーナーで、最初はこいつ「おっぱいを触る」って答えていたんですよ。ほんなら、出版社さんからNGですと。
田中:そんなんしゃあないやん。ありのままや。
谷口:ここまでまっすぐかと。僕とマネージャーしか知らない部分ですね。
田中:(口に指を当て)ほんま秘密ですよ。
谷口:僕は「鼻が性感帯になる」って書いてたんですよ。もちろんボケなんですけど、「おっぱいを触る」があるせいで、出版社さんから「ちょっと……」と言われて。それは絶対大丈夫と言って押し切ったんですけど。
田中:えらい流れ弾やったな。でも、考え方によってはえぐい変態になるからな。
――最後に、この書籍がどのように皆さんに届くと嬉しいでしょうか。
田中:ギャグ漫才ばっかやってきたから、僕らのパーソナルな部分ってあんま知られていないと思う。そういうところが見られるから、老若男女笑えると思うし、こういう子らなんやとわかってもらえるかな。谷口に関しては自分のことは言っていないけど、「ボケますよ。おもろい人間ですよ」というのがわかる。だから、僕らのことが結構丸裸になって、いろんな世代の人が楽しめる一冊かなと思います。
谷口:最初は嫌やったんですけど、いざ形になって本屋に並ぶとめっちゃええなと。読んだらもっと書けばよかったなと思いました。ファンの人は僕らのことをもっと知れるし、知らん人はフースーヤってこんなんなんやと知ってもらえると思う。今一番読んでほしいのはへずまりゅうさんですね。
田中:なんでやねん。今、奈良の市議会議員になって忙しいねん。
(文・取材=まっつ 写真=田中舘裕介)
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