
宅配業者の配達員がマンションのオートロックを解錠できれば再配達の回数が相当減りそうですが......
連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第125回
ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!
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今年9月、宅配業者などの配達員がマンションのオートロックを解錠できる仕組み作りを支援する方針を国土交通省が発表しました。
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宅配便の取り扱いが10年連続で過去最多を更新し、再配達の負担が深刻な問題になっているなか、今回の方針が示された形です。これに対してさまざまな意見が出ているようですが、ウーバーイーツ配達員の視点から感じたことを書こうと思います。
まずは現状の説明から。オートロックのあるマンションは、ざっくり分類するとふたつのタイプに分けられると思います。
(1)建物の入口にオートロックがあり、館内に入れる人を限定するタイプ
(2)建物内にもオートロックがあり、フロア、ゾーンごとに入れる人を限定するタイプ
そして、居住されている方が不安に思うのは「知らない人が安易に館内に入ってこられるのはセキュリティ上問題があるのでは」ということ。
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タワーマンションへの配達の際、業務用エレベーターで他の配達業者さんと同乗することがよくあり、そのときの話は以前「業務用エレベーター利用者たちの悲喜こもごも!? 『配達員トーク』」で書いた通りですが、先日、宅配業者の方に「もし、配達員がオートロックを解錠できるシステムができたら仕事は楽になりそうですか?」と聞いたら、こんな答えが返ってきました。
「(2)のタイプのタワーマンションはあまり変わらないけど、建物の入口だけにオートロックがある(1)のタイプの配達は楽になるよね」
(2)のタイプの建物は警備室で入館申請をする際、宅配業者の方にオートロックを解錠できる電子機器を渡すところが多いとのこと。なので、置き配希望の部屋の前に荷物を置いてくことができますが、(1)のタイプの建物は警備室がないので不在の場合はオートロック解錠が不可能。宅配ボックスもすべて埋まっていて、置き配できないマンションが多いとのこと。そんなマンションのオートロックが解錠できれば再配達の回数が相当減るとのことでした。
ということで、(1)のタイプでは配達効率が上がりそうですが、セキュリティ上の不安を感じている人の多くも、このタイプのマンションにお住まいの方でしょう。部屋のドアの鍵だけでは不安なのでオートロック付きのマンションを選んだのに、見ず知らずの配達員が自由に入ってくることができるシステムに変えられてしまう可能性があるとしたら、たまったものではないと思います。
ウーバーイーツの配達は誰でもすぐに始めることができる仕事。そんな人が手軽にオートロック解錠システムを手にされるのは......と不安に感じる方も多いでしょう。
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ですが、オートロック解錠のシステムが将来普及したとしても、ウーバーイーツ配達員にその権限が与えられることはないと思います。なぜなら食べ物を扱う配達だから。
お腹が空いた時に利用するので、注文された方は基本、配達先にいます。置き配の場合でも不在だから置き配ではなく、配達員と直接顔を合わせたくないから置き配にするので、建物の入り口でインターホンを押すとオートロックを解錠してくれます。不在の場合は配達員用アプリで12分タイマーを起動、起動から12分経っても注文者から連絡がない場合、商品を渡せなくても配達を完了してよいというルールがあります。
数時間後に再配達すると食品衛生上の問題が出る可能性もあることから、日本でのサービス開始当初から再配達が生まれないルールをしっかり構築しているので、オートロック解錠システムを利用する意味がないのです。
今後、このシステムは運送会社やマンション会社、アプリ開発会社がシステムの開発に取り組むと思いますが、私のようなウーバーイーツの配達員用アプリを使う人にはあまり関係のない話となるでしょう。
ちなみに、こういったマンション内のルールは管理会社が決めたり、管理会社と住民で作った管理組合が話し合って決めたりするので、今後、オートロック付きのマンションを借りたり購入したりする場合は、そのあたりを管理会社などに確認してみるのもいいかもしれません。
文/渡辺雅史 イラスト/土屋俊明
