第72回マカオグランプリ 加藤大翔(ARTグランプリ) 11月13日から開幕した第72回マカオグランプリ。メインレースはFIAフォーミュラ・リージョナル・ワールドカップ(FRワールドカップ)で、2025年は7名の日本人ドライバーがエントリーし、難攻不落のギア・サーキットで奮闘している。
マカオGPは、最初の2日間(木・金)の午前がフリー走行、午後が予選というスケジュール。2回の予選で記録した各ドライバーのベストタイム順で、土曜日に行われる予選レースのグリッドが決まるというスケジュールだ。今年は天候にも恵まれ、2日間ともドライコンディションとなるも、金曜日に行われた予選2回目の路面温度が前日比で10度以上も上昇したこともあり、全体的にタイム更新が少ない印象だった。
そんななか注目を集めたのが、初日のフリー走行1回目(FP1)でトップタイムを叩き出した加藤大翔(ARTグランプリ)。今回がマカオGP初挑戦であるが、経験者たちを差し置いて、いきなりのトップとなった。そのまま午後の予選1回目も好タイムが期待されたが、加藤のアタック中に赤旗が出されるなど、不運が続いて予選1回目の結果は8番手だった。
「途中まで2番手のペースで来ていましたが、赤旗になってしまいました。結局ニュータイヤでアタックができていないません。きちんとフィニッシュしていたら、トップ2にはいたと思うので……仕方がないですけど、勿体ないです」とかなり悔しそうな表情をみせていた。
リベンジを誓って臨んだ予選2回目も、途中に3度の赤旗中断がある波乱のセッションとなったが、最終盤に2分15秒916をマーク。前日の自己ベスト(2分16秒886)を1秒近く更新し、総合4番手につけた。
「昨日のままだったら8番手だったので、本当に良かったです。トップとは0.3秒くらいですし、2番手から4番手は0.01秒単位の僅差でした。マカオにしては接戦の予選でしたし、かなりレベルが高かったと思います。そのなかで、うまくまとめられたので良かったです」と、前日とは対照的に加藤は笑顔を見せた。
「予選2回目も赤旗が多くアタックができないときもありました。僕たちはピット位置が後ろの方だったので、いろんな状況はありましたが、そのなかでもチームメイト(エバン・ギルテール)が3番手で、僕が4番手。このピット位置でセカンドロウというのは、かなり奇跡に近いと思います。しっかりとパフォーマンスは出せました」と、加藤。
「初めてマカオで予選をやって、ルーキー(マカオ初経験者)の中でもトップだったので、そのなかでもうまくこなせたのかなと思います。もちろんレースの結果も重要ですけど、速さが求められる予選でタイムを残せたことが、とにかく嬉しいです」
いずれにしても、マカオ初経験で上位に入ってくるというのは、そう簡単なことではない。その辺の要因について聞くと「チームが良い仕事をしてくれて、クルマが速いです。もちろんシミュレーターでの練習も頑張りましたが、やはりクルマが速いときは気持ちが楽ですね」とのこと。
現在はフランス・パリを拠点にしており、ARTグランプリのファクトリーからも近い場所に住んでいる。チームとのコミュニケーションも円滑にいっている様子で、そういった部分も好結果に繋がっているのかもしれない。
そんな加藤は、マカオグランプリに関しては思い入れがあるようで「マカオを走るのが夢でした。そこで(FP1で)1番手を獲れたのも嬉しいですし、『カペタの世界』みたいな感じですね」と加藤。
詳しく聞くと、モータースポーツを題材にして約20年前に連載された漫画『capeta(カペタ)』がきっかけで、レーシングドライバーを目指したという。
「僕はカペタを見て育ってきて、全巻の全てのシーンを覚えていて、今でも細かく話せるくらいです(笑)」と、一気にカペタの話題へ。作中ではマカオグランプリも登場するが、漫画で読んで知った舞台に自身も立つことができ、本人としても感慨深いものがあるようだ。
「まさにカペタで見たマカオですね! まったく一緒でトラックウォークの時も感動しましたし、FPや予選の時もタイヤを(ウォールに)擦って、タイヤメーカーのロゴが削れているんですよ。そういうのとかも、カペタのシーンで出てきました。そういうところが(漫画に出てきたシーンと)ほぼ一緒で、(作者の)曽田正人先生の画力はすごいですね。いつかお会いしたいです!」と、カペタの話題については、話が止まらない様子の加藤だった。
話を戻して、土曜日は予選レースが10周、日曜日には決勝レースが15周行われる。まずは決勝に向けて上位をキープしつつ生き残ることが絶対条件となってくるが、加藤は「優勝を狙える位置なので、まずは予選レースを生き残っていきたいです。セカンドローからなら全然戦えると思います」と自信をみせていた。
■マカオ2度目の挑戦・中村仁は予選14番手「予選直後はブルーに」
加藤と同じく、今年はフォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパ(FRECA)に参戦した中村仁(R-ACE GP)は、予選2回目のタイムが思うように伸びず総合14位に終わった。
「昨日からの状況を考えると7〜8番手はいけるかなと思ったのですが、戻ってきて順位を見たら『あれ? みんなそんなに速いの?』という感じでした。今日の朝(FP2)もけっこう良かったので、ちょっと想定外でした」と、中村は悔しそうな表情をみせた。
「みんなちゃんとアタックができていなかったとはいえ、セクター2〜4(山側区間)は常に上位にいましたし、タイムもそんなに悪くなかったと思います。正直もうちょっといけると思っていたんですけど……ニュータイヤを履いたときに、自分が思っていたよりもグリップがなく、そこに対するアダプト(適応・順応)も良くなかったと思います」
「もう少しできた部分はありますけど、ちょっと想定外で……予選が終わった後はブルーになっていました」
それでも、残る2日間で少しでも順位を上げるべく、中村は気持ちを切り替えている。
「明日やることはシンプルに前にいくだけです。予選結果は悔しいですけど、気持ちを切り替えるしかないです。ただ次は予選レースなので、まずは生き残るということが大事になってきます。マカオは何が起こるかわからないですが、自分がその当事者にならないように気をつければ、順位は上がっていくと思います。昨年も経験もあるので、頭を使いながら上手く前にいきたいです」と、前を向いていた。
その他の日本勢では、山越陽悠(エヴァンスGP)が16番手。FP1でタイヤが外れるトラブルに見舞われ、予選1回目ではリスボアでクラッシュを喫するなど苦しい初日となったが、2日目で何とか取り戻して中団グループにつけた。加藤と同じARTグランプリから参戦するりー海夏澄は、アクシデントやドラブルなどで2日目は満足に走れず、22番手から予選レースに臨む。
日本のシリーズで戦っているメンバーでは、スーパーフォーミュラ・ライツに参戦する佐野雄城(TOM’S RACING)の17番手が最上位で、梅垣清(VAR)は予選1回目の終盤でクラッシュを喫したものの、2回目でタイムを更新し20番手につけた。鈴木斗輝哉(TOM’S RACING)はトップ10付近を狙えそうなペースを発揮していたが、予選2回目で壁に軽くヒットした際にサスペンションアームにダメージが及んで、セッション終盤を走ることができず。前日のタイムを更新できず24番手となった。
なお、ポールポジションはテオフィル・ナエル(KCMGエンヤ・ピナクル・モータースポーツ)が獲得した。予選1回目でトップだったフレディ・スレーター(SJMセオドール・プレマ・レーシング)はタイムを更新できず、2番手に終わった。
[オートスポーツweb 2025年11月15日]