写真 2010年にTBSに入社し、『朝ズバッ!』『報道特集』などを担当したのち、2016年に退社したアンヌ遙香さん(40歳・以前は小林悠として活動)。
TBS退社から8年経った今年、紆余曲折を経て20年生活した東京を後にして活動拠点を故郷北海道に戻したアンヌさん。アラフォーにして再スタートを切った「出戻り先」でのシングルライフの様子や心境をつづる連載です。
第61回となる今回は、「若者を食事に誘うこと」について語ります(以下、アンヌさんの寄稿です)。
◆“謎の文脈”で仕事の評価に繋がっていたあの頃
忘年会や新年会の約束、そろそろ入り始めている頃合いでしょうか?
私は十勝ワインバイザーという北海道十勝ワインの資格を持っているくらいワインを愛しており、応援するファイターズ戦をエスコンフィールドに観に行けばビールの売り子さんから4杯は買っちゃうくらいのお酒好き。賑やかな酒席や初対面の方も含む会食だって楽しめるタイプです。
でも、「お酒の席大好き!」って純粋に言えるようになったのって、ようやく“自分のペースで楽しめる大人”になったからだよなあとつくづく感じるのです。
コロナ前後で世の中ががらりと変わったのは皆さん実感されているとは思いますが、10年、20年前はまだまだアルハラという言葉もなかったし、お酒の席に頻繁に顔をだすこと=付き合いがよいこと、とみなされていました。
付き合いが良い=ノリが良い=話がわかる、的な謎の文脈で、仕事の評価にも繋がっていた現実があったことは否定できません。これはどんな業界であっても「ニッポンの会社員」であれば避けて通れない空気感だったことでしょう。いわゆる飲みニケーション。
◆20代のころは「会食」が得意ではなかった
20代、東京キー局のアナウンサーだった若かりし私は、とにかく仕事後もしくは休みの日にまで駆り出される「会食」が得意だったかと言うと、正直そうでもなかったかも。
20代なんてそもそもお酒の味を覚え始めたばかり。なにを飲んだらよいかもわからず、美味しいお食事をご馳走になっても、翌日の仕事の入り時間が気になって気もそぞろ、なんてこともあったなあ。
高級なイタリアンもよいけど、すき家の牛丼をお持ち帰りして家の床でとにかく伸びていたい、なんて感じたときもあった……。今思えば「もったいない!! あんなお店もう行けないんだから、たくさんご馳走していただけばよかったものを! しっかりしろ!」とタイムスリップして、当時の自分を叩き起こしたいような気持ちにもなりますが。
◆若者への感謝の気持ちで「食事に誘う」ってあり?
さて、なぜこんなことを呟いているかといえば、「若者をご飯に誘うのが果たして正解なのか」が40歳になった私はわからなくなっているから。
そもそも事の発端は私の一言。20代前半の女の子にある頼み事をすることになり、お礼のお菓子を事前に用意していたのですが、想定以上にその依頼が複雑になり、彼女にかなりお世話になってしまったのです。
お菓子ごときでは申し訳ないのではないかと感じた私、こんなによくしてもらって……これはもう一緒に高級焼肉でも行こう?! と発言してしまったのです。
最近の若者はみんな気を使うことができて、とても謙虚でしかも感じが良い。そんなことをしていただかなくていいんですよ! お菓子もいただいてますし! なんて言葉をいただき、その場では一旦話が収まったのですが……。私も変にくそ真面目なところがあり、自分から焼肉に行こうと発言した手前、これはしっかりとこちらのほうでまた改めてお誘いをしたほうが良いのでは……。
いや昨今の若者は、コロナ禍に思春期を過ごした手前、会食と言うものに対して、私たちアラフォー世代とはまた違った考え方があるよな……すごく行きたくないと思っていたとしても、それをなかなか言い出せないのではないか……いやそもそも今の若者は焼肉食べないんだろうか……などなどもう頭の中は無限ループ状態。
私自身20代の頃、会食めんどくさいな、なんて思うことはあったわけだし、このご時世の若者だったら、もっともっとめんどくさいと思ってるのに違いないのでは?! などなど、考えこんでもう身動きが取れなくなってしまっているのです。
◆年齢を重ねてわかった「飲みニケーション」の良さ
同世代の友人に、自分だったらどうする? と聞いてみたところ、都合の良い日があったら教えてと予定を投げてみて、具体的な返事があったら本当に行きたいんだなぁと捉えるかなぁなんて言ってましたが……いやいやいや、今の若者はめちゃくちゃ気を使いますよ?!
具体的な日程を出さないと失礼なんじゃないかとか思わせちゃうんじゃないの?! それはむしろプレッシャーなんじゃないの?! とまた話は堂々巡り。
もちろんこの問題、人によりますとか、関係性によりますという答えに終始することも充分わかっていますが、こちらが良かれと思って、感謝の気持ちを伝えたくて、ご飯をご馳走するということでも、もしかしたら相手はめんどくさいと思っているかもしれないし……いやー、本当にわからない難しい。いったい何が正解なんでしょうね。
でもね、不思議なこと、40歳になった私が感じるのは飲みニケーションも悪くないということ。多分年齢を重ねて話題も豊富になって、会食の空気感そのものを楽しめるようになったからかなぁなんて思っていますが。舌も肥えましたしね。
私自身は、お酒の席が好きになりましたが……。誘う側に回ると一気に難しくなる。さあ貴方ならどうする?
<文/アンヌ遙香>
【アンヌ遙香】
元TBSアナウンサー(小林悠名義)1985年、北海道札幌出身、在住。現在はフリーアナウンサーとしてSTV「どさんこWEEKEND」メインMCや、情報番組コメンテーターして活動中。北海道大学大学院博士後期課程在籍中。文筆家。ポッドキャスト『アンヌ遙香の喫茶ナタリー』を配信中。Instagram: @aromatherapyanne