【インタビュー】北川景子×森田望智「嘘をついたら撮ってもらえない」これまでになかった景色が見られた『ナイトフラワー』

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2025年11月25日 07:50  cinemacafe.net

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北川景子×森田望智/photo:小原聡太
映画『ナイトフラワー』で、北川景子は貧困の果てにドラッグの販売で日銭を稼ぐ2人の子供のシングルマザー・永島夏希を演じた。そのきっかけとなったのは、ある夜に売買現場にたまたま出くわしたこと。夏希は薬をとっさに懐に入れ、しばしの逡巡の後、近くのごみ捨て場から廃棄の餃子弁当もかっぱらう。死に物狂いの顔と髪を振り乱すさまは、何が何でも生き抜く渇望の姿が映し出され、これまでの“北川景子”像を大きく塗り替えた。

そんな夏希のボディガード役を買って出るのは、森田望智演じる芳井多摩恵。夜は風俗嬢として働きながら、格闘家としての成功を夢見るぶっきらぼうなファイターだ。森田のフィルモグラフィーといえば、「全裸監督」の黒木香、『シティハンター』の槇村香、「虎に翼」の猪爪花江と、記憶に残る役を次々とものにしてきた。多摩恵も同じく、堂々としたたたずまいと献身的な姿を併せ持ち、役を自身に染み込ませてスクリーンでひときわ輝く。

劇中、夏希が多摩恵に「家族になってくれへん?」と問う――いや、懇願する。シスターフッドや家族愛をも超えた大きな何か、定義することさえ無粋な何か、を観客は享受する。まるでドキュメンタリーのような、北川&森田でしか味わえない本作。撮影のあれこれを振り返ってもらいながら、互いへの思いまでたっぷりと語ってもらった。

内田英治監督との再タッグ
「迷うことなくやりたい」
「これまでになかった景色が見られる」

――内田英治監督とは、北川さんは二度目、森田さんは四度目のお取組みかと思います。オファーを引き受けた理由は何でしたか?

北川:一番は、内田監督からお声掛けをいただいたのでやりたいという気持ちでした。WOWOWの「落日」という作品でご一緒したときに、すごくフィーリングが合ったんです。監督は洋楽が好きで、私もUKロックが大好きだから、とにかく音楽好きという共通点で話が盛り上がりました。作品やお芝居のことじゃないんですけど(笑)。監督が「今度は僕が脚本と監督をやるときに、北川さんとご一緒したいです」と言ってくださって、私も「もちろんです!」と。「落日」の最後のほうに「売人の役って興味ありますか?」と聞かれて、「あります!やりたいです!」と即答しました。その後にお話をいただいたのが『ナイトフラワー』だったので、「あのときの売人だ!」とピンときました。迷うことなくやりたいです、となりました。

――となると、夏希の関西弁も北川さんがしゃべることを想定して、あて書きのような形だったんでしょうか?

北川:おそらくそうだと思います。監督が大阪に行かれたときに、関西人の親子を見かけてその会話が衝撃だったらしいんです。お母さんはすごく怒っているんだけど、子供が言い返していて、そのやり取りが漫才みたいに見えたそうで、「関西は一般の方でも、本当に普通に漫才みたいにやりとりしているんだ…!」って。怒っているのにユーモアがあることが、面白かったそうなんです。

夏希をそんな風にしたいとひらめいたので、「関西弁にしているから」と言われました。たぶん…私も神戸(の出身)なので見込まれているかな、と思います(笑)。私自身、話に全部オチをちゃんとつけなきゃいけない、誰かがボケたらすぐに突っ込まなきゃいけない、それが当たり前だと思っていたところもあったので。

――関西弁、母親で売人の役というあたり、いざ台本を読まれてはどのように感じましたか?

北川:一言では言い表せない衝撃がありました。夏希という人間はすごく一生懸命で、子供を大切に思う気持ちがあるお母さんじゃないですか。昼も夜も違う仕事をして頑張っているのに生活は良くならないし、最後は売人にまでなってしまって…。夏希にせめて夫がいたら違うけれど、夫は蒸発してさらには借金まで残されていて。なおかつ下の子は私にとっては大事な子供だけれど、世間的には発達に問題があると言われているので、預かってもらう先もなかなか容易ではなかったりする。そんな条件がすごく重なってしまうんです。

元から荒くれていたり、常軌を逸した人間じゃないのに、追い込まれて売人になるところがとにかく衝撃でした。腐った餃子弁当を拾ったり、薬物を売りさばくしかなくなってしまうんですよね。じゃあ夏希はどうしたらよかったんだろうとすごく考えたんですけど、答えが出なかったんです。その何とも言えないドーンとした気持ち、そんな印象を台本から受けました。

――森田さんは、「全裸監督」以来、「Iターン」「湘南純愛組!」の内田監督作品でした。同じく、お引き受けの理由からうかがえますか?

森田:格闘技で多摩恵をやっているという自分が、想像できなかったんです。思い描こうとしても描けなかったので、内田さんは何を私に見ているんだろう、とまずは興味が湧きました。同時に、内田さんの元でしか、この想像ができない役を掴むことはできないんじゃないのかな、という確信もあったんです。まったく想像できない、縁遠くて難しい役だからこそ、きっとこれまでになかった景色が見られるんじゃないかなと。やりがいを感じましたし、今まで出会えなかった自分に出会える気がして、ちょっとワクワクした気持ちでお引き受けしました。

――お二人がインするまでなるべくコミュニケーションを取らないようにしてほしいと、内田監督から要望があったお話は本当ですか?

森田:そのお話、言われて思い出したぐらいなんですけど…。

北川:言ってた、言ってた!

森田:言ってましたか! 確かに景子さんと会う機会はなくて、初めてのシーンが夏希にワセリンを塗るところだったんです。

北川:すごい大事なシーンでね!

――夏希と多摩恵が初めて出会った夜のシーンですよね。

森田:そうなんです。内田さんは「初めまして」の緊張感を大事にしたかったんだと思うんですけど、私は「わ!北川景子さんだ!!」と緊張しちゃって。多摩恵じゃなくて、私が緊張しちゃって、全然役になりきれてなかったんです。内田さんに「多摩恵じゃありません」みたいに言われました(笑)。

北川:「こないだ、さっくんとやってたやつやってよ」みたいに言われていたよね(笑)?

森田:そうです(笑)。その前に佐久間(大介 ※多摩恵の幼馴染・海役)さんとクランクインしていたのですが、撮影前に一度お会いする機会があったんです。幼馴染という設定もあって、「自分から積極的にコミュニケーションを取らなきゃ」と思っていたのですが、佐久間さんがとてもフレンドリーで気さくな方でした。会話のシーンからだったこともあり、自然と関係性が築けていたと思います。

でも景子さんの場合は、事前顔合わせ無しだったので本当に緊張して! 自分が上から目線でワセリンを塗らなきゃいけないので、「わー!どうしよう!!」と内心なっていました。それを内田さんが気づいて、「内田さんが会わないようにしよう、とか言うからですよ!(笑)みたいな話をしたのを思い出しました。「初めての緊張感は出ていてよかった」とは言われましたけど、結構苦戦しました。



作品のテイストとは真逆の明るい現場

――北川さんは、初めて森田さんとご一緒していかがでしたか?

北川:私は最初、イン前にリハーサルをするので会う機会があると聞いていたんです。でもリハの場に森田さんはいらっしゃらず、子役さんとだけリハをやりました。なので、そのワセリンの現場で初めてお会いしました。今振り返っても、森田さんで良かったと思うことしかないです。

森田:うれしいです。

北川:内容としては緊張感のあるシーンも多い作品だけれど、森田さんはいつもこんな感じ、本当にゆったり時間が流れていて、おおらかなんです。ご本人は格闘技とか絶対やらない人だと私は思うんですけど。

森田:その通りでございます…。

北川:本当に穏やかで優しくてあったかい空気が流れている方だったから、「この方とだったらできる」と初めてお会いしたときに思いました。体も今と全然違うよね、本当に大きかったんです。だから、どれほどトレーニングをして臨まれたんだろうと。作品に臨むその姿勢にもすごく感銘を受けて、私もちゃんとやらなきゃと思いました。…なんか現場、すごい楽しかったよね!

森田:はい、全然殺伐としていなかったですよね。「カット」と言われたらケラケラ〜と笑うような(笑)。

――作品のテイストとは真逆の明るい現場だったんですね。

北川:そうなんです。雨降らしのときも、待っている間ずっとしゃべりましたよね。

森田:沢山しゃべりましたよね! 景子さんは本当にすごくて、うわーっとあれほど涙を流していたのに「カット」がかかった瞬間、ケラケラと笑ってくださるんです。逆にさっきまで笑っていらしたのに、撮影スタート同時に一気に涙を流される。その瞬発力にどこからその涙が生まれてくるのか、「スタート」と「カット」の声だけで役に入り込む姿に衝撃を受けました。

北川:でもずっと(役として)いるのも疲れませんか?

森田:たしかにそうですよね。ですが、景子さんみたいにパッと役になれるのは難しいので、本当にすごいと思います。

北川:森田さんは何回も何回も重ねるうちに、すごくアジャストしていくんですよね。印象的だったのが、「私は走るのが苦手だから、格闘家みたいな走り方ができない」とずっと言っていたこと。走る姿はすごい美しかったんですけどね。

森田:いえいえ! 私の走り方があまり運動している人っぽくなかったんです。内田さんに「女の子みたいなかわいい走りだから、もうちょっと勇ましく運動できる感じで走って!」と言われて。なかなかできないから、内田さんと一緒に走りの練習をしました。

北川:内田さんと? あ〜それ見たかった!

森田:公園の周り、道路とか、一緒に走る練習を撮影の合間に付き合ってくださいました。私が本当にできなさすぎて、3日目か4日目くらいにOKをもらいました。「でも、今のもかろうじてOKなだけで、ぎりぎりセーフ」と言われましたが(笑)。

北川:初号は全然大丈夫だったよ!

森田:そう言って頂けて安心しました!

――森田さんは、最初のシーンの緊張以降は北川さんとご一緒していかがでしたか?

森田:景子さんは毎回、私の体のことをケアしてくださっていました。すごく思いやってくださるやわらかいお気持ちが、夏希さんの多摩恵に対しての思いと重なる部分が私的にはあって。多摩恵をやる上でも、きっとこの夏希さんだからこそ、頑張りたいんだな、と。危険を冒してでもついていこうとすることは、景子さん自身の持っている温かさと相まったんだと感じました。それは恋愛でもあり、家族愛でもあり、人類愛でもあり。愛の形というのではなく、夏希さんの持つものに惹かれている感じが、私としてはありました。絶対に景子さんだったからだと思います。



撮影を通しての新たな発見

――最初に森田さんがおっしゃった「今まで出会えなかった自分に出会える」感覚は、本作の役を通してお二人にはあったんでしょうか?

北川:「落日」のときに、お芝居について内田監督がいろいろアドバイスをくださったんです。私は自分の滑舌が本当に良くないと思っていたので、きちんと「あ、い、う、え、お」をはっきり聞こえるようにセリフを言うことを意識して、今までやってきていました。けど、内田監督には「普通の人は、そういう喋り方しなくない? そんなに滑舌よくしないで。声もそんなに張らないで、そんなに大きい声で普段喋らないよね」と言ってもらえて。それからは、自分としてはびっくりするぐらいボソボソ声で話して、「聞こえますか? 大丈夫ですか?」くらいの感じで「落日」をやっていたんです。

監督は「夏希と多摩恵という人がいて、こういう家族がいるんだと、見た人がドキュメンタリーを見ている気持ちになるような作品の撮り方をしたい」とおっしゃっていたんです。それは「落日」のときも同じように言われていて。だからこそ「あまりお芝居をやってる、みたいにしないでね」と。私はずっと芝居をしなきゃいけないと思ってやり続けてきたので、そぎ落とした表現について、今回特に向き合いました。

「落日」のときは戸惑いながらで、自分ではうまくいったかどうかもわからなかったけれど、この作品ではちょっと掴めた気がします。それは森田さんと一緒にいて、セリフじゃなくて生まれた会話もありましたし、台本にない部分も2人で埋めていって、自然に役としてそこに息づくことが体感できた瞬間があったからだと思うんです。こういう表現、お芝居もあるんだと気づいたことは、すごく新しかったです。今後も必要とされるときには今回のようにやっていこうと、引き出しが増えた気がしています。

森田:私自身、本格的にお芝居と向きあうきっかけになったのは内田さんとの「全裸監督」でした。なので、お芝居のベースを内田さんが作ってくださいました。内田さんは、当時から嘘をついていたら撮ってくれないんです。それは、その役になっていなくて私自身が出ていたり、何か別の思考が働いていたりするときです。今回、役としては自分とはものすごく遠いので、嘘なく自分ごとに落とし込むまでには、きっと想像以上に大変だろうなと思っていました。

これまで私は内面からアプローチすることが多かったんですが、多摩恵は格闘技の選手なので、今回は内面というより格闘技の練習から始めて、半年くらいやっていたんですね。体がちょっとずつ大きくなったり、格闘技の力がついたりすることで、内にすごく影響がありました。これまでは内面からでしたが、逆のパターンを初めて体験できたので、体と心はものすごくつながっているんだな、と思いました。お芝居をする上で体作りをしている期間、思いを馳せている時間も、とても大きく役に影響するということが初めての感覚でした。

“生涯ベスト”映画は?

――シネマカフェは映画媒体なのですが、お二人の「生涯ベスト」作品をぜひ教えてください。

森田:いっぱいあるんですけど、私は『ラ・ラ・ランド』です。

北川:あー、私も大好きです!!

森田:王道すぎて言うのを控えていたんですけど、好きなものは好き!と思って言ってみました。この映画は、私がまだ全然お仕事をもらえなかった学生のときに公開されていた作品でした。エマ・ストーンさんが俳優の役だったので、そこと自分が重なるものもすごくあったのと、ダンスが好きだったので、踊りながら歌っている映画も好きなんです。最初の7分間、高速道路のシーンがあるじゃないですか? 私、あそこで大号泣しゃちゃって。

北川:えー!

森田:不思議すぎますよね(笑)。感動しすぎて。「私もここに出たい!!」という気持ちになって、そこから映画館に足しげく通ったのを覚えています。

北川:すごく好きな作品で、私は『ショーシャンクの空に』を挙げたいです。こういう(ポスター写真の真似をする)シーンが、大好きです! 映画だけでなく、音楽や本もジャケ買いが多いんですけど、あのポスターを見たときに「どういうことなんだろう?」と思って、まだ若いときにDVDで観ました。意味がわかると、「そういうことだったのか!」と衝撃を受けました。自分の稼いだお金で画素数のちょっといいDVDを買ったのも初めてでしたので、そんな思い出も含め好きです。

▼北川景子
■スタッフ
ヘアメイク:島崎杏奈 Shimazaki Anna
スタイリスト:林 峻之 HAYASHI TAKAYUKI

■衣裳
トップス¥12,100/ノーク(ノーク 03-3669-5205)
パンツ¥46,200/レ コスタンティーネ×アロー(アロー info@alorsparis.fr)
他スタイリスト私物
▼森田望智
■スタッフ
ヘアメイク:スズキ ミナコ Minako Suzuki
スタイリスト:丸山晃 AKIRA MARUYAMA

■衣裳
ジャケット¥29,480、パンツ¥26,950(マウジー/バロックジャパンリミテッド)、中に着たシャツジャケット¥41,800(イコールメント)、ベルト¥75,900(DEHANCHE/S&T)、ネックレス¥187,000、イヤカフ¥55,000、リング右小指¥47,300、右人差し指¥143,000、¥29,700(オールニーク)、リング左人差し指¥610,500(トムウッド/トムウッド 青山店)、その他スタイリスト私物


(text:赤山恭子/photo:小原聡太)

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