画像:森七菜さんInstagramより女優・森七菜が2025年に大復活を遂げ、注目を集めている。今年だけで、話題作『ファーストキス 1ST KISS』『国宝』『フロントライン』『秒速5センチメートル』など、公開後に大きな反響を呼んだ映画に出演しており、その活躍ぶりが話題となっている。
◆ヒット作続々!注目作で見せた確かな演技力
監督・塚原あゆ子、脚本・坂元裕二というヒットメーカーが制作した『ファーストキス 1ST KISS』では、主演・松たか子の同僚である世木杏里を担当。サバサバした性格でしっかり者の杏里を自然体で表現し、主人公・硯カンナの良き理解者という重要な役目を丁寧に演じた。
国民的な大ヒットを記録した『国宝』でもその実力を存分に発揮している。主演・吉沢亮が演じた立花喜久雄に思いを寄せる歌舞伎役者の娘、彰子役を演じた森。彼女の演技は、メインキャストに負けず劣らずの存在感を放ち、作品に深みを加えた。
国民的な大ヒットを記録した『国宝』でも、メインキャストに負けない名演技を披露している。森は歌舞伎役者の娘で、主演の吉沢亮が演じる立花喜久雄に思いを寄せる彰子を演じた。大胆なベッドシーンにも挑戦し、その演技はメディアで大きく取り上げられている。
彰子は映画の後半で主に活躍するが、悲劇のヒロインとして見事に転落していく。歌舞伎界で後ろ盾を失った喜久雄に“血のつながり”を求められ、ただそのために利用される。最終的に彰子は家柄を捨て、喜久雄のどさ回りを支え続けるが、駆け落ちも成功せず、男にただ利用された悲しい女性へと変わっていく。
森はその短い時間の中で、彰子の苦悩を見事に表現した。登場当初、無邪気なお嬢様だった彰子は、荒んだ生活に追い詰められ、次第に変わり果てていく。その変化を、目の表情やセリフの強弱を巧みに使いながら、森は切なくも逞しさを感じさせる演技で見せている。
◆難役に挑戦!森七菜の演技力が光る新たなステージ
そして、新型コロナウイルスの発生を描いた『フロントライン』では、クルーズ船のフロントで働く羽鳥寛子を熱演。作中では流暢な英語を披露し、集団感染が起きた厳戒態勢の船内で、外国人乗客に寄り添いながら芯の強い女性を演じている。
また、『秒速5センチメートル』では、松村北斗が演じる主人公に恋する女子高生・澄田花苗を担当。恋する少女を繊細に表現し、映画の主軸を担うキャストとして作品のヒットに貢献している。
今年はさまざまな役に挑んでいる森だが、現在放送中の夜ドラ『ひらやすみ』(NHK総合)でも難役を演じている。ここ数年、良質なドラマを作り続けている夜ドラの最新作『ひらやすみ』で、森が演じるのは岡山天音が演じる主人公・生田ヒロトのいとこ・小林なつみだ。18歳のなつみは、美大進学のために山形県から上京してきた女の子。自意識過剰な性格で、こじらせ系の代表のような思春期真っ只中の役となる。
森は、クセのあるなつみをセリフのテンポ感、常に薄っすら不機嫌そうな表情、独特な動作でうまく表現。原作ファンからも評価が高く、ドラマの人気を岡山とともに支えている。
◆事務所移籍後の低迷を乗り越え、大復活
このように名演技を見せている森だが、昨年までは女優として微妙な立場に置かれていた。清純派女優として2021年に急成長を遂げたものの、同年には事務所移籍騒動が報じられ、メディアに取り上げられることが多かった。
移籍後、しばらくは演技が評価されず、2023年放送の月9ドラマ『真夏のシンデレラ』(フジテレビ系)では、間宮祥太朗とダブル主演を務めたものの、平均世帯視聴率は5%台(関東地区・ビデオリサーチ調べ)という結果に終わり、視聴率面での厳しい評価を受けた。移籍後は出演作も増えていたが、残念ながらその評価は必ずしも高いとは言えなかった。
そう考えれば、2025年は森にとってまさに大復活の年と言っても過言ではないだろう。では、そんな森の魅力とは一体どこにあるのだろうか?
森は、作品に自然に溶け込む演技を得意とし、複雑な感情を持つキャラクターを見事に表現する力を持っている。それだけに、設定が難しい役柄のほうがむしろ力を発揮するタイプだ。これまでは正統派ヒロイン的な役が多かったが、2025年に入ってからはさまざまなキャラクターを演じる中で、その本領を存分に発揮している印象を受ける。
今後、より難解な役がキャスティングされることで、森の演技力がさらに引き出され、人気を集めることは間違いないだろう。
かつて名監督・是枝裕和氏は、森について「森さんの中には小さな樹木希林がいる」と絶賛している。樹木希林は、難役を次々とこなし、晩年まで圧倒的な演技力で多くの人々を魅了し続けた女優。その希林と重なる部分が、森には確かに存在している。森には、“第二の樹木希林”としての素質があると感じさせる何かがあるのだ。
そんな森が次回作に選んだのは主演映画となる2026年春に公開予定の『炎上』だ。森が演じるのは、両親に厳しく育てられ、感情をうまく表現できない主人公・小林樹里恵。舞台となるのは新宿歌舞伎町で、都市の喧騒とともに主人公の内面の葛藤が描かれる。
監督を務めるのは、サンダンス映画祭などで高く評価されている長久允。長久の作品は常に挑戦的で、独自の視点から物語を展開することで知られており、『炎上』もかなり攻めた内容になりそうだ。
今年再ブレイクした森がどんな演技を新作で見せてくれるのか、多くの人に注目してほしい。
<文/ゆるま小林>
【ゆるま 小林】
某テレビ局でバラエティー番組、情報番組などを制作。退社後、フリーランスの編集・ライターに転身し、ネットニュースなどでテレビや芸能人に関するコラムを執筆