
盲目のお笑い芸人・濱田祐太郎さん
『R-1ぐらんぷり』第16代王者にして、盲目のピン芸人・濱田祐太郎。彼のコラムが週刊プレイボーイで好評連載中! その名も「盲目のお笑い芸人・濱田祐太郎の『死角からの一撃』」。
第5回は、濱田さんの冠番組について。
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皆さんこんにちは、濱田祐太郎です。突然ですが、お笑い芸人にとって誇りに思うことはなんだと思いますか?
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賞レースで優勝すること、テレビで冠番組を持つこと、不倫スキャンダルをスクープされること......。芸人によってそれぞれあると思うんですけど、今回は目の見えない僕にとっての誇りに思う冠番組の話をします。
いや、不倫スキャンダルを誇ってどうする。と、ぬるっとツッコミを入れたところで、僕の冠番組『濱田祐太郎のブラリモウドク』(ABCテレビ)を紹介しますね。
この番組は、先輩の藤崎マーケットのトキさんと一緒に街ブラをする番組です。一見「目の見えない芸人が街ブラをしたらどうなるのか?」を軸にした福祉番組のようなものと誤解されそうですが、そこはしっかりバラエティ。
オープニングからトキさんに「おまえ本当は見えてるだろ! あそこのキレイな看板見て!」とボケられ、僕が「見えてへんわ! 看板なんて俺にとってただの硬い板です」とツッコむ。
熱海にロケに行ったときは、なんならこっちから「熱海は空気がキレイな感じしますね。大阪はどこに行っても基本臭いですから」とボケて、トキさんに「いいかげんにしろ!」とツッコまれる。
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収録していると、僕はついついボケたくなっちゃうので、トキさんがロケの進行のために必要な説明をしようと「今日は絶景のオーシャンビューの温泉旅館に行きます!」と言っているところに、「俺は見えへんからオーシャンビューいらんねん! 何ビューでも一緒ですから」とボケたりもします。そういうやりとりが楽しくて、ロケも自然体でやることができました。
この番組では、いろんなことを体験しました。例えば、大阪の天王寺で射的。目の見えない僕がですよ?
でも、そこで景品を3連続で撃ち落として、トキさんに「絶対見えてるやろ」と、ゲストで来てたバッテリィズのエースにも「濱田さん、見えてますやん」と一斉にツッコまれたりしました。
ほかにも、ボルダリングもやりました。壁にあるでっぱりをつかんだり、足場にして登り、タイムとかを競うスポーツですね。これもまた楽しかった。
僕は壁にあるでっぱりが見えないので、スムーズにいかないだろうなと思ったんですけど、初挑戦にしてはそこそこスムーズに登れました。
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だから、登りながら思ったのが「見えてるなら早く登れて当然ちゃう?」です。見えてればでっぱりがどこにあるかわかるわけですよね。そりゃ早く登れるでしょ。
競技としてもっと面白くするために、これからは全員スタート前から目隠しをして、でっぱりがどこにあるかわからない状態でタイムを競うものにしたらいいんじゃないかなあ。
たまに低周波が流れてるでっぱりがあって、触った瞬間「うわっ」ってなったり、ローションまみれのでっぱりがあって、足をかけた瞬間にツルッと滑って下まで落ちてやり直しみたいなね。
話を戻しまして、『ブラリモウドク』のディレクターを務めている児玉さんという女性がすごく熱心な方で、番組の真っすぐさや面白さが表現されているのはこの人のおかげです。本当に感謝です。
そしてありがたいことに、この番組の評判が良くて、2025年日本民間放送連盟賞のバラエティ部門の最優秀賞を受賞。さらにその後の選考を経て、テレビ部門で準グランプリまでいただきました。うれしいなあ。
●濱田祐太郎(はまだ・ゆうたろう)
1989年生まれ、兵庫県神戸市出身。2013年より芸人として活動を開始し、『R-1ぐらんぷり2018』(フジテレビ)で優勝。関西の劇場を中心に舞台に立つほか、テレビやラジオなどでも活躍。公式X【@7LnFxg25Wdnv8K5】
撮影/梅田幸太

