
俳優市原隼人(38)主演短編映画「デイズ〜かけがえのない日々〜」が5日から東京・池袋シネマ・ロサで1週間限定公開される。かつての出演ドラマ「あいくるしい」(05年)や「ROOKIES」(08年)でも監督を務めた平川雄一朗監督との約10年ぶりの“共闘”となる作品で、同監督の故郷である大分市内で全編撮影。このほど2人が取材に応じ、映画に込めた思いを語った。
大分市を舞台とし、めまぐるしく時が進む都会で働く市原演じる主人公が、地元の自然や人々との温かなふれあいを通じ、自分たちが生きる日々こそかけがえのないものだと気づく物語。約40分間の短編作で、今年8月に約1週間で撮影。市原は本来は舞台稽古などで予定が詰まっていたが「『育った故郷の方々のために活動したい』という平川さんの思いに応えたかったので。どうしてもスケジュールを空けてくださいと頼みました」と初という大分を舞台とした作品へ臨んだ。
市原以外はほぼ全員を大分県出身のキャストで固めた作品。財前直見ら著名な俳優も参加したが、それ以外は約700人の応募の中からオーディションで選んだキャストも多く出演。普段は別の仕事で働いている人も多かったという。平川監督は現場でそうした役者らと密にコミュニケーションを取りながら取り組む市原の姿が印象的だったと語り「(市原の役と)友達役の方がいたんですけど、同級生の距離感でやらなければいけない。何度も打ち合わせをして、市原くんも何度も練習の相手をしてくれて。引っ張っていってくれていましたね。本当に助かりました」と振り返った。
市原は「僕も学びたいと思って現場に向かっていました」と語り、さらに「エンタメってすてきだなとか、物作りって楽しいなとかそうしたことを感じていただきながら、この作品から多くの方が羽ばたいていくようなものになればと思っていましたし、共演者のみなさんとやりとりしていて楽しかったです。画に映っていないところでもいろんなドラマがありました。普段は教員をしていて子どもたちに土産話を持って帰りたいんだとか、1人1人が思いや物語を背負って現場に来ている。とにかく人道的で愛にあふれていました」。
2人は市原が10代の頃から多くの作品で現場をともにしてきた。市原は「一緒に壁を乗り越えてきた同志と言いますか、かけがえのない存在でもあります」と語った。「まだ気持ちも不安定な10代、20代前半のころにお会いした方はいつまでも特別なので。そんな方とご一緒できることはすごくうれしいこと。どんなにキャリアや年を重ねても、人の思いに胸を打たれて共闘できなくなったら役者でいられなくなるのではと思っているので、いつまでも感情は生々しくいたいですし、それをあらためて学ばさせていただいたのが平川雄一朗監督です」と力を込めた。
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平川監督も市原について「若いときからエネルギッシュ。心根の強い人ですし、その姿勢はずっと変わっていないですよね」といい「成長してまた色気が出てきて、家族もできて。また成熟した俳優として一緒に仕事をしたいなと思わせてもらいました。やっぱり信頼していますよね。仕事への向き合い方をわかっているからこそ本気にさせられる。作品への情熱は、それを見てくれる人への思いにもつながっていると思います」と話した。
撮影は大分市内の約20カ所で行った。11月21日から大分・別府ブルーバード劇場で1週間限定公開し、今月5日からは池袋シネマ・ロサで同じく1週間の限定公開が始まる。市原は大分の魅力について「私も育てていただいた平川監督の故郷で撮影させていただき、果てしなく広がる水平線からの日の出や広がる青々とした山々、関アジ関サバ、とり天などの食べ物、そして温泉。(県)外の人間からしたら誇れるものがたくさんあってうらやましいと思いました」と語り「大分にやって来ると、社会を忘れて本能的なものを呼び起こされるような感覚にもなりました。今はSNSの発達で人の目を見ずに物事が進む時代になりました。ですが、もともとの人間のあり方や、わびさびなど、古き良き心を感じることができうれしかったです」と率直に語った。
今年は主演映画「おいしい給食 炎の修学旅行」(綾部真弥監督)も大ヒットするなど20年以上にわたって活躍を続けている。「アイデンティティーはずっと変わりません」と明かし「よりいろんな価値観を持てるようにはなったと思います。年齢を重ねていくとどうしても守りに入っていきますが、役者としてそれがいいのか悪いのかはわかりません。いつまでも片手に狂気、もう片手に花束を持って現場に向かいたいと毎回思っています。とにかく誰よりもひたむきに物事をつくる、いろんなものを積み重ねていく、そしてそれを一瞬で壊す心意気も大事にしていきたいです」と前を見据えた。
平川監督は市原との久々の共闘作に「元気や夢、可能性を感じられるものになったらいいなと思いますし、別府のブルバード劇場や池袋から波及して『デイズ』という作品が見た人の元気の活力になればいいなと思っています。大切な人と見に行ってほしいですし、楽しい映画をやっているよというものをぜひ広げていってくれたらなと思います」と呼びかけた。
市原も作品の魅力について「家族の絆や故郷の思いやさまざまな葛藤を抱えながら生きていく様を大分の景色とともに楽しんでいただきたいです。みなさまが今過ごしている何げない日常もかけがえのないひと時なのだと感じて、周りの方を大切に思うきっかけになっていただければ。僕は今回、平川雄一朗監督の情熱に応えたい、ただそれだけでした。自分は表現者ですので、どんな現場でも、道ばたでも、誰か好きな人のためにできるなら、それが夢だと思っています。今回はすてきな機会をいただけました」と締めくくった。【松尾幸之介】
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◆短編映画「デイズ〜かけがえのない日々〜」 大分市出身の平川雄一朗監督が手がけ、大分市の魅力を発信するために制作。主人公、天野幸一役を市原隼人、義母役で財前直見らも出演し、同市内約20カ所で撮影。9月から大分市内のホールなどで先行公開され、11月21日からは別府ブルーバード劇場でも1週間限定で公開された。主題歌には大分県で結成された3人組バンド、SIX LOUNGEが書き下ろした「kakegae」が採用されている。
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