水戸地裁 茨城県古河市の介護老人保健施設「けやきの舎(いえ)」で2020年、入所者2人が体内に空気を注入され殺害された事件で、殺人罪などに問われた元職員赤間恵美被告(39)の裁判員裁判の初公判が10日、水戸地裁(山崎威裁判長)であった。赤間被告は「殺害しておりません」と述べ、無罪を主張した。
初公判を含め計60回の期日が指定されており、判決は来年7月7日。
公判では20年5月に死亡した入所者の鈴木喜作さん=当時(84)=についての審理が優先され、検察側は冒頭陳述で、鈴木さんが死亡する直前には元気だったと主張。犯行可能時間帯に鈴木さんの部屋を出入りしたのは被告のみだとした。
空気注入にはシリンジ(注射器の筒)が使われたとみられるが、検察側は、本来所持する必要がない被告のバッグに2本入っていたとも指摘。「被告以外に、現実的に犯行可能な人物はいない」と訴えた。
弁護側は、鈴木さんには持病があり、解剖も行われていないことで正確な死因特定は困難と反論。「想像を巡らして殺人事件にすることは許されない」と無罪を主張した。
起訴状などによると、被告は同施設で働いていた20年5月、鈴木さんの点滴チューブに空気を注入し、空気塞栓症による急性循環不全で死亡させ、同年7月には吉田節次さん=同(76)=を同様の手口で殺害したとされる。
いずれもシリンジとチューブをつないで静脈内に空気を注入したとみられている。
被告は万引きしたとして窃盗罪にも問われ、同罪については認めた。