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初代林家三平さんの妻でエッセイストの海老名香葉子さんが、老衰のため24日に死去したことが29日、分かった。92歳。海老名さんが堂守を務めていた「ねぎし三平堂」の公式サイトで発表された。
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香葉子さんは落語界きっての「肝っ玉おかみさん」だった。昭和の爆笑王として人気だった夫の初代林家三平さんが54歳の若さで亡くなった時、林家こん平をはじめとした一門の弟子たちが残され、後に林家正蔵となる長男は高校2年、二代目林家三平となる次男は小学4年だった。大黒柱の死で一門がバラバラになってもおかしくない危機的状況にあって、香葉子さんは「おかみさん」として一門の精神的支柱となって結束を図った。「母」としてはエッセイスト、絵本作家として本を出版し、講演会で全国を回るなどして一家の家計を支えた。2人の息子はそれぞれ大きな名跡を継承し、孫2人も落語家になった。
逆境にもめげない強い女性だった。昭和20年3月の東京大空襲で父母、兄弟、祖母など6人の家族を失った。疎開していたため、生き残った香葉子さんは11歳だった。三平さんと出会い、結婚するまでの苦労はあまり語らなかったけれど、困っている人、弱っている人に誰よりも早く救いの手を差し伸べた。20年前、私財を投じて、上野公園に東京大空襲の犠牲者を慰霊する「時忘れじの塔」を建立し、毎年3月9日には慰霊の集いを開催してきた。今年は体調が思わしくなく、周囲が止めたけれど、香葉子さんは出席した。それが公の場での最後の姿になった。香葉子さんに会うと、「100歳まで(慰霊祭を)続けたい」と話していたが、その思いは子供たちが受け継いでくれるだろう。
くしくも、今年は初代三平さんの生誕100年。記念する落語会なども行われ、多くの観客を集めたが、これも香葉子さんの思いが結実したものだった。初代三平の「妻」としての責任を果たし、天国で待つ夫のもとに旅立った。【林尚之】
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◆海老名香葉子(えびな・かよこ)1933年(昭8)10月9日、東京・本所生まれ。釣り竿の名匠「竿忠」の末娘。20年の東京大空襲で家族6人を失い戦災孤児に。「竿忠」の顧客だった三遊亭金馬の養女となり、52年に初代林家三平と結婚。海老名美どり、泰葉、林家正蔵(林家こぶ平)、林家三平(林家いっ平)の母としても知られる。ねぎし事務所代表取締役。
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