ロボ店員、アバター接客……大手コンビニ3社が進める“省人化計画”の中身

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2026年01月11日 21:30  ITmedia ビジネスオンライン

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ローソンの佐久間大輔オープン・イノベーションセンター長

 コンビニエンスストア各社は、人手不足が厳しくなる中で、レジや売り場の店員を極力少なくして省人化に努めている。この数年はその対策として、外国人の雇用やセルフレジの導入を進めてきた。だが、抜本的な解決には至っていないため、デジタルを活用して一部を無人店舗にする動きもみられる。


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 大手3社によって、日本の市場はほぼ飽和状態になっていて、店舗のスクラップアンドビルドが進む。いかにしてコストを減らしながら売り上げを伸ばし、利益を確保するかが問われている。そのコスト面で大きな比率を占めるのが、店舗スタッフの人件費だ。


 最低賃金は近年、全国加重平均が時給1000円を大きく上回る水準まで上昇し、全ての都道府県で引き上げが続いている。これが人件費増の主要因となり、収益を圧迫する要因となっている状況だ。


 コンビニは顧客サービスを低下させずに、人件費をいかに削減できるかがポイントとなっている。そのカギを握るセブン‐イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソンの取り組みを聞いた。


●“三社三様”の「省人化」の中身は? セルフレジの次はこう変わる


 三菱商事とKDDIによる共同経営体制(資本業務提携)のもとにあるローソンは、東京・TAKANAWA GATEWAY CITY内に、「ローソン高輪ゲートウェイシティ店」を開店した。この店舗は、リアルの温かみとテックの力を融合させた未来コンビニ「Real×Tech LAWSON」の1号店だ。


 店舗内のサイネージでは、演出を楽しみながら買い物ができる空間を実現させた。店内での買い物以外にも、暮らしに関わるさまざまなサービスの相談ができるリモート接客など、リアルな店舗にデジタル技術を融合。より温かみのある買い物体験の提供を目指している。


 限られた人手でも、持続可能な店舗オペレーションを確立するためのテクノロジーを活用中だ。例えばロボットが品出しや店内清掃、調理などの業務を支援する。そのほか、ロボットの運用データや店舗内の防犯カメラ映像などから、AIエージェントが業務量を算出・分析して業務効率化をサポート。店舗が抱える人手不足などの課題解決に取り組む。


 ローソンの佐久間大輔オープン・イノベーションセンター長は「KDDIさんとの提携は、通信技術だけでなく、幅広くDXを進める上で大いに役立っている」と話す。


●広がるアバター接客


 店内にはセルフレジを8台設置した。うち4台がキャッシュレス専用レジだ。残りの4台は、現金でも対応ができる。キャッシュレス専用レジの1台には3Dアバターを表示。レジ操作に関して何か問い合わせがあれば、アバターに向かって問いかけると答えてくれる。 


 実はお客の姿はカメラで見られており、裏側でスタッフがアバターとして問い合わせに答える仕掛けになっているという。このアバターは、酒類やタバコなど年齢確認が必要な商品を購入する際に、その確認作業を手伝ってくれるのだ。


 酒とタバコは店によっては大きな売上比率を占める。そのため、無人レジで年齢をいかにして確認するかが課題となっていた。お客がアバターに問いかけるとスクリーン越しにスタッフが見ているため「極めて厳密な確認作業ができる」(佐久間オープン・イノベーションセンター長)という。セルフレジで問い合わせに答えるアバタークルーは、約80人いるそうだ。


 アバターには、これまでスタッフが対応していた店内での問い合わせ応対など、業務のかなりの部分を代行できる遠隔接客機能がある。アバター接客が人手不足対策の切り札になる可能性もある。現在、ローソンでは全国の31店舗にアバターの機能を入れており、状況を見ながら拡大する方針だ。


 店内調理の先駆けとなったローソンは、名物の唐揚げ作りにも、ロボットを導入した。スタッフの調理時間の削減に貢献しているという。将来的には調理の全工程を自動化するべく、現在は実験をしている段階だ。


●「場所に合わせて使い分け」


 佐久間オープン・イノベーションセンター長は「テクノロジーを使って人手不足を解消するところと、一方で人でなければならない部分も残っています」と話す。


 「都市部でないところはお客さまとの距離感が近くなってきます。ですので接客の部分はできるだけ人が対応するようになります。逆に都市部では『レジはさっと済ませたい』という要望も強いので、場所に合わせた使い分けが必要だと考えています。全ての店舗を高輪ゲートウェイシティ店のようにしようとは思ってはいません」


 今後は「人の温かみを大切にしながら、サポートできるテクノロジーは何なのか。この検証をブレずにやっていきたい」と話す。「進化するテクノロジーを取り入れながら実験をし、本当に展開できるものは何なのかを検証していきたい。その結果、役立つ技術を取り入れていきたいので、現在はあくまでスタートの段階です」


 ローソンは、今後の出店戦略において、都市部と地方で役割が異なると考えている。


 佐久間オープン・イノベーションセンター長によると、都心部ではコンビニが飽和状態にある一方、地方の過疎地域では、スーパーの撤退などにより「コンビニのニーズが新たに高まっている状況がある」という。ローソンはこうした店舗を「地域共生コンビニ」と位置付け、地元自治体からも相談を受けながら、地域にとって不可欠なインフラとしての役割を担い始めている。


 実際、山梨県の道志村に出店した事例を挙げ「これらの店舗は想定以上に高い客単価と予想を上回る売り上げを記録したことを確認しました。この成功から、過疎地域における新たな出店ニーズを確信しています」と話す。


●ファミマは「誰でも使える」無人決済レジ


 ファミリーマートは、レジに人がいない無人決済店舗を商業施設、大学、病院など約50店舗に導入している。タッグを組んだのはJR東日本グループのスタートアップ企業「TOUCH TO GO」だ。


 棚に取り付けた重量センサーと、天井に備え付けた約20台のカメラにより、客が棚から商品を取り出した時点で、どの商品を選択したかが把握できる。これによりレジの前に立った時点で手に取った商品が画面に表示されるため、バーコードの読み取りが不要になるのだ。


 お客は選択した商品を確認しながら無人決済のレジでカード、電子マネー、現金から選択して支払う。宅急便受付や、収納代行などのサービスは提供できないものの、ビルの中にあって、毎日決まった人が買い物にくるような立地には適している。


 東京駅近くのサピアタワーに設置した無人決済店舗を見てきた。通常の店舗より小さく、品ぞろえもそれほど多くない。事前の登録も必要なく、誰でも利用できる。セルフレジが2台設置してあり、すぐ近くにJR東京駅バスターミナルがあるため、スーツケースを持った若者世代のバス利用者が弁当などの食料を買っているのが目についた。このレジはスマホを持っていなくても利用できるため、スマホの扱いが苦手な高齢者でも簡単に買い物ができるようだ。


 買い物中にトラブルが起きると、レジ脇に設置したカメラを通してコールセンターにつながる。そのため、中高年もスムーズな買い物ができるという。防犯対策としては、正しく会計が終わるとゲートが開き、退店できる仕組みになっている。法人開発部 特定施設開発グループ 江川賢マネジャーは「お客さまは店内ではカメラで監視されていると感じます。そのため、ほかの店舗と比べて万引きの比率は低い」と指摘する。


●多様な出店形態


 レジは無人化している一方、店舗の裏にはスタッフが定期的に来て、品物が並ぶ棚を整えるといった作業をする。レジの無人化はできても、売り場に品物を並べたり、店舗内を掃除したりといった有人対応は、必要だという。今後の出店の在り方はどうか。


 不特定多数の顧客が来店し、終日営業する店舗などでは引き続き有人対応が必須となる。しかし病院、大学、オフィスビル内など来店客が限定される場所では、オーナーの意向を受けて無人レジ店舗を提案するケースがあるという。特に大学や病院などでは、時間帯によって忙しさが大きく変わるため、時間帯に応じて無人と有人対応を切り替えるハイブリッド型の店舗も導入されている。


 江川マネジャーは「無人決済店舗の拡大を進める方針ですが、具体的な数値目標は持っていません。その代わり、それぞれの立地条件に合わせて多様な形の店舗を出せるカードを複数持っていることが、大きな強みになっています」と強調した。


●セブンはロボットを活用


 セブン‐イレブン・ジャパンは、東京都荒川区の荒川西尾久7丁目店で、店舗業務をサポートするロボットやアバターの試験運用を開始した。ロボットやアバターの導入により店舗業務を効率化。店内で調理する「セブンカフェ ベーカリー」などカウンター商品の拡販や、接客サービスの質向上などを通じて、売上増加につなげる狙いだ。同時にこうした実験を通じて、定時業務量の3割削減を目指したいとしている。


 セルフレジに隣接して置かれているアバターを活用した接客では、セルフレジ利用時のサポートや店内の防犯強化に加え、9カ国語対応の翻訳機能によってインバウンド客へ対応する。1人のオペレーターが最大3台のアバターを同時に運用できるという。


 2025年には9月16日から、大阪・関西万博会場内の「セブン‐イレブン西ゲート店」で、来店客が操作する「蒸式(じょうしき)調理ロボット」を導入した。ラーメンやうどんなどの麺類の販売を始めた。同社によると、小売店舗において、客自身が操作する形式でロボットを導入するのは初めてという。


 蒸式調理ロボットは、人型ロボット「Pepper」や清掃ロボット、配膳・運搬ロボットなどを手掛けるソフトバンクロボティクス(東京都港区)が開発した。高圧・高温の飽和水蒸気で専用の冷凍食品を急速に調理する仕組みだ。麺のコシやスープの香りを損なわず、専門店に近い味わいを再現できるという。


●接客、調理などのサービス業務 どこまで効率化できるか


 コンビニ大手をはじめ、流通の分野では人手不足解消の切り札として、デジタルテクノロジーを積極的に店内に導入し、コストの削減を狙っている。しかし、顧客の中にはデジタル決済が苦手な中高年層も含まれるため、全てのサービスを一気にデジタル化はするのは難しい。スタッフが対応するサービスも一部残しつつの、デジタル化を積極的に進める方針だ。


 今後は接客、調理を含めたさまざまなサービス業務を、デジタル技術を駆使してどこまで効率化できるかが問われている。


(中西享、アイティメディア今野大一)



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  • 二十四時間営業を止めたり、廃棄を減らすとか、遣り様は幾らでもある。三十年前から延々と法人税だけ減額され続けている中で利益が出せないのは上層部の取り分が過大だから。人件費が負担とか企業の風上にも置けない。
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