混雑する築地場外市場。大勢の人が路上に出て車の通行を妨げている=2025年12月、東京都中央区 2025年の訪日外国人数と消費額は過去最高を更新したが、足元では日中関係の悪化が影を落とし、一部地域に観光客が過度に集中するオーバーツーリズム(観光公害)も問題となっている。政府が掲げる30年に訪日客6000万人という目標の達成には、特定の国に依存しない集客戦略や、持続可能な受け入れ態勢の構築が不可欠だ。
関西空港を運営する関西エアポート(大阪府泉佐野市)によると、昨年12月の中国路線(香港・マカオを除く)の旅客数は前年同月比で約4割減少。高島屋大阪店も中国客による免税売上高が4割落ち込んだ。
札幌ホテル旅館協同組合の調査では、約3割の事業者が訪日旅行自粛の影響が出たと回答。台湾や韓国などからの観光客が増えているものの、春節やさっぽろ雪まつりを控え「今後の影響を懸念する事業者は多い」(担当者)という。あるホテル大手の役員は「受け入れ国の分散を進めてきた」といい、今後もこうした対策を継続する構えだ。
オーバーツーリズム対策も喫緊の課題だ。京都市観光協会のマーケティング担当者は「まだ知られていない場所にも経済的恩恵が行き届くよう支援すべきだ」と主張する。野村不動産ソリューションズ(東京)リサーチ・コンサルティング部の米川誠氏は、混雑エリア以外の魅力も掘り起こして分散型観光へと転換を図ることで、「地域住民の生活の質と、観光客の満足度を両立させる持続的な観光モデルの構築が必要だ」と訴える。
地方自治体が宿泊税を引き上げる動きも出ている。大阪・ミナミの繁華街では、ごみのポイ捨てやスーツケースの放置などが問題となっており、大阪府は宿泊税を活用し、26年度に約10億円をかけて環境美化に取り組む方針だ。大阪商工会議所なども府内の客足分散に手を打っているが、「多言語表記や従業員の外国人対応など課題は山積み。順調に進んでいる感触はない」(大阪の財界関係者)といい、手探りが続く。

北海道小樽市の「船見坂」で観光客に注意を呼び掛ける多言語の看板を持った警備員=2025年2月