
「ドラマの本読みのときに村井さんを真っ先に捕まえて『いつも見てます。ファンです』って……。すごいファンだったわけじゃないけどそう言っちゃって(笑)」
そう笑うのは、夫で俳優の村井國夫さん(81)と、今年1月2日に結婚50周年の金婚式を迎えた女優の音無美紀子さん(76)。
2人は1971年放送のポーラテレビ小説『お登勢』(TBS系)での共演をきっかけに仲が深まった。
「ドラマの撮影中、私がケガをして、ディレクターが車で病院まで連れていってくれることになったんです。車がスタジオを出るときに後ろから追っかけてくる人がいて、ふとバックミラーを見たら村井さんだったんです。それで私がケガの手当てを終えて再びスタジオに戻ったときに村井さんが、まだ待っていてくれて……。『私のこと好きなんだな』って(笑)」
その後、1976年に村井さんと結婚。1982年に長女・麻友美さんを出産。その3年後には長男・健太郎さんを授かり1男1女に恵まれた。
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「お互い仕事が忙しかったし、村井さんは『役者なんていつダメになるかわかんないし、子供を作っている場合じゃない』という考えだったんです。でもいざ子供ができたら、まぁ、こまめなお父さんでデレデレ(笑)。私が仕事に出かけたら率先して育児をやってくれて。『自分のおっぱいからミルクが出ないのが悔しい!』って言ってました(笑)」
幸せな家族に危機が訪れたのは音無さんが38歳のときのこと。入浴時に胸のしこりが見つかったのだ。病院を受診すると、仕事が落ち着いたら大きな病院で診てもらうよう勧められた。
「スケジュールが詰まっていたので、3カ月ほっといたんですよ。そしたら洗濯物を干すときに痛みが出て、村井さんに話したら『すぐ、病院に行け!』ってなって……そしたらやっぱり乳がんでした」
手術の方法として乳房を残す温存手術と全摘手術の2択があった。
「私は温存を希望したんですが、先生は『できないわけじゃないですが、再発する可能性もあるので、より安全な全摘手術をしたほうがいいです』という意見で。それで私が迷っていたら村井さんが『先生いいです。バッサリやってください。胸がなくてもいい。女優ができなくなってもいい。生きてもらわないと困るんです!』って泣きながら先生にお願いして。それを見て私も決心して、左乳房全摘とリンパ節切除の手術を受けました」
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■「生きていれば子供たちの成長が見られるよ」
術後は乳がんのことを公表せずに、音無さんは仕事復帰することに。
「ドラマの本読みのときに俳優さんたちを見て気後れして。『みんな元気にやっているなか、私は病気をしていて。うまくできるのかな?』って。そしたら『こんにちは』って言う一言目も声が出てこなかったんです。監督も『音無さん、もっと大きい声出して』って言われて。その言葉で具合が悪くなってパニック障害の発作が起きたんです。そのまま家に帰ってきちゃって。そのドラマは降板しました」
それをきっかけに自身の女優人生が終わったと感じ、うつ病を発症したという。
「笑うことも口をきくこともできなくなって。全く眠れないし、子供を愛おしく思えない。いつも体がだるくて、なにも行動に移せないような感じで、ずっと死にたいと思ってました。
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その当時は子供たちの親としても女優としてもダメだし、『自分がいちゃいけない』って思うようになったんです」
村井さんは、そんな音無さんを献身的に支えてくれた。
「私の背中をずっとさすり続けてくれたり、『生きていれば子供たちの成長が見られるよ。大人になっていく姿を見たいでしょ』って励ましてくれて。『子供のために、あと5年生きてみよう』、それがダメなら『あと3年』。最後は『あと1年生きてみよう……』って。その1年の間に『主婦業を僕が君から習う。区役所の手続きや学校のことなどを全部教えてくれ。そしたら君は逝っていいよ』って。今考えたら『1年でいいのか?』ってガックリくるけど(笑)、でも結果長生きしてます」
うつ病が回復するきっかけとなったのは、長女・麻友美さんの存在が大きかった。
「手術の傷を見られるのがいやで娘とお風呂に入ってなくて。でもここは乗り越えないと元気になれないし決心してお風呂に入ったんです。そしたら小学1年生の娘が、私の首から上しか見ないの。それを見たときに、『こんな小さな子が、気を使うことができるんだ』と感動して……。私がお風呂の中で泣いちゃったんですよ。そしたら娘が『ママは大丈夫だよ。おっぱいは生えてくるよ!』って。それで『この子のために生きなきゃ』と思いました」
当時を回想する音無さんの目には涙がにじんでいた。
2019年には村井さんが舞台公演中に、軽度の心筋梗塞で倒れ舞台を降板。コロナ禍でもあり、2人は家にいることが増えた。
「一緒にYouTubeチャンネルを始めたりとか、今とても夫婦仲がいいんですよ。夫婦で1年に1回ぐらいですけど歌のライブをやったりと、現役で2人でいられることが幸せ。こうなったら結婚60周年を祝うダイヤモンド婚を目指したいですね。10年後は村井さんは91歳ですが、生きてるんじゃないですか。私より長生きすると思いますよ(笑)」
(取材・文:インタビューマン山下)
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