
長編監督デビューから16年。三木孝浩監督(51)の作品に出演した多くの若手俳優は輝きを増し、スターへの階段を駆け上がっていく。今年も、6日に浜辺美波(25)とSnow Man目黒蓮(28)のダブル主演映画「ほどなく、お別れです」、3月20日には、なにわ男子の道枝駿佑(23)が映画に単独初主演し、生見愛瑠(23)と初共演の「君が最後に遺した歌」が公開される。途切れることなく新作を世に放ち続けながら「作家性は消したい」と語る真意を聞いた。【村上幸将】
★浜辺美波の一瞬のまなざし
2カ月連続での新作公開は、いずれも20代の人気俳優同士の初共演が話題を呼ぶが、作品の色は全く違う。「ほどなく、お別れです」は葬祭プランナーが最高の葬儀を目指す姿を描く。就職活動で連敗する中、目黒演じる漆原礼二に導かれ葬儀会社のインターンになる清水美空を演じた浜辺とは20年、「思い、思われ、ふり、ふられ」などでタッグを組んだ。役どころと相まって、目の色がりりしさを増しているのでは? と問うと、三木監督はそれが映画のプラスになったと成長を認めた。
「お芝居で感情表現することへのモチベーションが高かった。彼女には目線が、お客さん目線になるところを大事にして欲しいと話しました。役を作り込むより、彼女が現場で見て、生っぽく受け取るものをすくい取りたかった。今回、亡くなった方が旅立っていく瞬間は見せていませんが彼女の、一瞬のまなざしの芝居で旅立ちを表現できた」
★目黒蓮は宇宙人的存在感
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初めて組んだ目黒を「なりが異次元。宇宙人的な存在感があり、何を考えているか分からない秘めたものがある。(役と)ピッタリ」と評し、納棺師でもある漆原の役作りを追求する姿勢に感銘を受けたと語った。
「メチャクチャ真面目。Snow Manでダンスの振り入れも鍛えられているので、できるんですけど、納棺師の方からレクチャーを受けた中で『振り付けにはしたくない』と。ご遺族が、故人を送る気持ちを落ち着けるための時間にするために、どう心を寄せるかをすごく気にしていた。こちらから言わずとも『故人、遺族への思いを意識して演じたい』と言ってくれた。撮影前に完璧にできていたんですけど、午後の撮影に午前中から来て納棺師の方と練習していました」
目黒に納棺技術指導を行った納棺師の木村光希氏は、09年に邦画初の米アカデミー賞外国語映画賞を受賞した「おくりびと」(滝田洋二郎監督)で、主演の本木雅弘に指導した木村眞二氏の息子だ。長野県の壮大な雪景色を描いたのを含め、「おくりびと」へのリスペクトもにじんだ。
「素晴らしい作品が過去にあって。今回、納棺指導されたのは木村さんの息子さんです。『おくりびと』には東北の田舎町を舞台にした冬の風景があり、今作でも静謐(せいひつ)な、凜(りん)とした空気感として雪のトーン、ムードを意識した部分はあります」
★道枝駿佑、持たざる者の表情
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「君が最後に遺した歌」は、詩作が趣味の水嶋春人が、文字の読み書きをすることが難しい「発達性ディスレクシア」を抱えながらも歌唱と作曲の才能を持つ高校の同級生・遠坂綾音と出会い、歌を作り時間を共にした10年を描く。初タッグを組んだ22年、「今夜、世界からこの恋が消えても」で興収15億3000万円と大ヒットに導いた道枝からも、成長を感じたという。
「前作で、自分のアイドルオーラを消して少年を生っぽく演じられる素養が見えていました。今回は等身大で(才能を)持たざる者の表情をリアルに演じられた。期待感がありました」
初タッグを組んだ生見は、ボイストレーニングとギターのレッスンを1年続け、生粋のアーティストと見まごうばかりのパフォーマンスを披露した。
「ご本人の努力のたまもの。アーティストでやるかという話もありましたが、10年を演じられる俳優でいこうと探す中で名前が挙がった。演奏もしなければいけない。どのくらいのポテンシャル、伸びしろがあるか分からない中、音楽プロデューサーの亀田誠治さんが太鼓判を押した。素質を見る目を信じました」
★圧巻!!生見愛瑠、本気の歌
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パフォーマンスを最大限に見せるのがライブシーンだ。収容人数1000人規模の会場を借り、作り上げた本物のライブシーンは、ソニーミュージック出身でPV、ライブ映像を手がけた手腕のたまものだ。
「ウソがない感じ、リアリティーは担保できるようにしました。ミュージックビデオを作っていたからかも知れませんが、音楽は画と50%、50%くらい重要だと思って作っています」
ライブシーンの撮影で、生見が披露した歌唱が本編そのものを変えたという。
「スタジオで事前録音したものを現場で流して、それに振りを当てて演じてもらうんですが、彼女がすごかったのは、オンマイクで歌っている声が表情を含めて素晴らしくて。口パクじゃなく、本気で歌っている歌に録音部が感動して、現場で歌った声を採用しようという話になりました」
★大林宣彦監督「ふたり」が原点
お金を払って映画館で見た最初の映画は、大林宣彦監督の91年「ふたり」。「暗闇を出て世界が変わって見えた」感覚が、映画監督の原点だ。一方で、SNSでの肩書は「MUSIC VIDEO DIRECTOR MOVIE DIRECTOR」。音楽を大事にするポリシーの裏には、映画の感動を音楽で反すうした原風景がある。
「僕らの時代はビデオが高く1本1万円はしました。テレビで好きな映画をやってくれないから、サントラを買って学校の行き帰りに聴き、感動をリフレインしてきました。音楽からドラマを想起するのは無意識でやってきたかも知れない」
★ミュージックビデオで
原作があるものを一貫して映画化し、ヒットが継続するから、さらなる人気原作の映画化話が途切れない。ミュージックビデオ制作で体得したものを、映画製作に生かしてきたという。
「素材をどう生かして届けるかを、ずっとやってきて、自分の作品を作っている感覚がない。自分なりのスタイルができていない若い俳優が映画の中で皆、成長していく。その過程と物語のキャラの成長曲線がシンクロした時、お客さんは感情移入し応援できる。それが良い作品だと思うし評価されることも多かった」
★早大時代、岩井俊二監督に感化
自主映画を撮っていた早大時代に、ミュージックビデオ出身の岩井俊二監督が映画を撮る姿を見てミュージックビデオ監督からキャリアを始めた。キャリアを重ねる中で作家性が高まり、脚本を一から手がけるオリジナル作品や国際映画祭を目指す監督もいる。作家性を高める方向に行かないのか? と尋ねると「ないですね」と即答した。
「大林監督もCM出身で、おふたりとも多分、与えられた素材をどう生かすか、というスタンスで物作りをしていた先にたどりついた作家性だと思う。(オリジナル作品は)いつか撮れたらとは思うんですけど最優先ではない。むしろ、作家性を消したいと思っています。映画を見た時、監督が誰か、感じない方がいい。ジャンルに関係なく、作品が面白そうだと見えれば良いだけ。この監督だから、見てもらおうっていうのは全然、考えていない」
こういう監督が1人、いてくれるから日本の映画館に、若い世代が映画館とつながる交点が生まれ続ける。
▼「ほどなく、お別れです」主演の浜辺美波
三木さんは、ちょっと時間が空いても、いつも同じ温かい笑顔で迎え入れて緊張をほぐしてくださる。全身全霊をかけて三木さんに飛び込もうという気持ちで撮影しました。私自身、映画への出演もお芝居するのも、その時期は久しぶりだったんですけど、三木さんの現場で本当に良かったと思いました。三木さんだからこそスタッフ、キャストと、現場が温かさに包まれる。
◆三木孝浩(みき・たかひろ)
1974年(昭49)8月29日、徳島県生まれ。早大第一文学部在学中に自主映画「青空」で早稲田インディーズフィルムフェスティバルでグランプリ。98年にソニー・ミュージックエンタテインメントに入社。00年からミュージックビデオ監督を始め、ZONE、ORANGE RANGE、YUIらのミュージックビデオを手がけた。10年「ソラニン」で長編監督デビュー。12年には「僕等がいた 前篇・後篇」で邦画初の2作連続公開を実現。
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