乙武洋匡が問う「誰のための選挙?」点字なし投票が生んだ見過ごされた不公平

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2026年02月18日 08:50  日刊SPA!

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写真/産経新聞社
’26年2月実施の衆院選は解散から投開票日まで戦後最短の16日間だった。さらに野党の再編が重なり、候補者固めにも時間がかかった。その結果、候補者の主張などが記載された視覚障害者向けの「選挙公報」の発行が遅れ、点字投票用紙が作られないなど投票時に不便を強いられることとなった
作家の乙武洋匡氏は「選挙は“誰のための制度”なのか。その前提が、今回の解散・日程設定で見失われていたのではないか」と語る(以下、乙武氏による寄稿)。

◆点字が利用できない環境で投票を迫られた障害者も…

先の衆院選は自民党の歴史的大勝に終わった。高市旋風が吹き荒れたと言っても過言ではない。しかし、結果はさておき今回の選挙のタイミングに疑問を抱いた人も少なくない。報道やネット上では「雪国の状況をわかっていない」「受験生にとって大事な時期なのに」といった批判の声は聞こえてきた。だが、メディアでさえあまり取り上げなかった問題がある。今回は“冬の総選挙”だったのと同時に、降って湧いた突然の選挙でもあり、それに伴って超短期決戦にもなった。そのために視覚障害者の方々が非常に不便な思いを強いられることとなったのだ。

視覚障害者は晴眼者(視覚に障害がない人)と異なり、文字によるコミュニケーションが難しい。そのため、点字を利用する方が非常に多いのだが、点字を打刻するにはエンボス加工と呼ばれる、紙の表面に凹凸をつけて文字や模様を立体的に浮き上がらせる加工を施すことが必要になる。

しかし、今回の衆院選はあまりに突然の選挙だったこともあり、投票用紙にエンボス加工を施すことが間に合わず、視覚障害者が点字を利用できないという事態が起こってしまったというのだ。

◆このタイミングでの選挙の意義について

東京都選挙管理委員会はNHKの取材に対して、「選挙管理委員会というのは選挙を当然のことながら執行することが使命ですので、大変心苦しい判断にはなったんですけど、点字を施すことができない点字投票用紙を作ることになりました」とのコメントを残している。だが、点字を頼りとする人々のための準備ができずして、果たして「選挙が執行できた」と判断してもいいのだろうか。大多数の人々が投票できる環境さえ整えれば、少数派が選挙権を行使することの担保は疎かにしてもいいのだろうか。

もちろん、選挙管理委員会には何の罪もない。上から降ってきた条件下で精いっぱいタスクをこなそうとした結果、どうしても収まりきらない“漏れ”が生じてしまったのだ。問題は「上から降ってきた条件」のほうにある。冒頭でも述べたように、雪国では投票以前に積雪でまともな選挙活動ができない地域も多くあった。車椅子ユーザーは、果たして大雪の中で投票所に行けただろうか。18歳で初めて投票する機会を持てた有権者も、自身の受験を控えて候補者について十分に調べる時間が取れなかったかもしれない。そして視覚に障害のある方々は点字を利用できない環境での投票を強いられた。果たして、このタイミングで選挙を行うことは適切だったのかという問いは、今回の選挙を機にしっかり検証されるべきだと考える。

<文/乙武洋匡>

【乙武洋匡】
1976年、東京都生まれ。大学在学中に執筆した『五体不満足』が600万部を超すベストセラーに。卒業後はスポーツライターとして活躍。その後、小学校教諭、東京都教育委員などを歴任。ニュース番組でMCを務めるなど、日本のダイバーシティ分野におけるオピニオンリーダーとして活動している

このニュースに関するつぶやき

  • 悪いけど、普段の生活の中で、点字の投票用紙の事を気にしているヤツなんていないと思う。君たちが声を上げないと。始まる前に。でも、不倫野郎の言う事なんて聞く耳持たない。って話
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