2026年FIA F3第1戦メルボルン フィーチャーレースで3位入賞を果たした加藤大翔(ARTグランプリ/HFDP)とホンダ・レーシング/HRCの渡辺康治社長 オーストラリアのアルバートパーク・サーキットで開催された2026年FIA F3第1戦メルボルンのフィーチャーレース(レース2)でホンダの若手ドライバー育成プログラム『ホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト/HFDP』所属の加藤大翔(ARTグランプリ)が3位表彰台を獲得した。
順位変動が激しい展開となるなか、機転を効かせた作戦がポジションアップに繋がったと、加藤はレース後に振り返った。
フィーチャーレースを7番グリッドからスタートした加藤。スタート直後のターン1、ターン2まで7番手を守るが、続くターン3で行き場を失い9番手にポジションダウン。その後セクター3の終盤ターン13でノア・ストロムステッド(トライデント)をアウト側からかわし、オープニングラップを8番手で終える。
「スタートはターン3で行き場がなくなり、唯一スペースがあったアウト側に行ったらイン側の誰かがロックアップして押し出されました。そこでポジションを落としましたが、そこからは焦らずにタイヤセーブに入りました。ペースはよかったですし、チームが良いクルマを用意してくれたおかげです」と、加藤。
「チームからも『1周目はクラッシュせずに帰ってくることがミッションだ』と言われていたので、わずかなポジションを落とすだけなら、クラッシュするよりはぜんぜん良いので、そこは焦りませんでした」と思いのほか冷静に対処し、すぐにタイヤの温存に入ったという。
「後半はタイヤがデグラデーション(劣化)でキツくなるとわかっていたので、タイヤをセーブし続け、それで後半にどんどん追い上げていくことができました」
その言葉のとおり、レース後半に入ってからペースが落ち始めたドライバーを着実にオーバーテイクしていった加藤。17周目に5番手に浮上し、その前の集団も目の前にいたが、残り3周のところでシン・ウヒョン(ハイテック)がウォールにヒットしたことでコース脇に停車。これによりセーフティカー(SC)が導入されて、そのままチェッカーフラッグとなった。
加藤は5番手チェッカーだった。しかし、3番手チェッカーのテオフィル・ナエル(カンポス)がジャンプスタートで5秒ペナルティ。4番手チェッカーのストロムステッドにはニコラ・ラコルテ(ダムス・ルーカスオイル)との接触行為に対して10秒ペナルティが出たことで、加藤のポジションが2つ繰り上がり、3位フィニッシュとなった。
「運も実力のうちですけど、実力で獲った3位ではないので悔しいと言えば悔しいです」
チェッカー後に3位浮上を知った加藤。表彰台では笑顔を見せたが、その後の取材では悔しさが滲み出ていた。
「ペース差もあって、前のクルマよりはぜんぜん速かったので。もう少し何かできたかなという感じです。SCが入らなかったら、おそらく前のクルマを抜けていたと思います」
昨年のフォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパ(FRECA)やマカオGP/FRワールドカップでも、貪欲に前を目指しているからこそ、現状の結果には満足していない様子だった。
ただ、ARTグランプリとしては昨年のメルボルンではトップ10圏内に食い込めず『シーズン一番の苦手どころ』と捉えていたという。そのため「メルボルンで表彰台には上がれたので、ここから先が楽しみです」と加藤。今季もFIA F3ではカンポス・レーシング、トライデントが少し優勢という雰囲気はあるが、ARTグランプリも十分に戦えると手応えを掴んでいた。
この週末は、アストンマーティン・ホンダの初戦ということもありホンダ・レーシング/HRCの渡辺康治社長も駆けつけていた。渡辺社長は「率直に嬉しいですね。ホンダは4輪で言えば、F1に上がれるような選手をHFDPプロジェクトを通じて育てていくことが我々の目標です。彼はまだFIA F3ですけど、着実に能力を高めています。加藤選手の活躍を見ると、我々としてもさらに応援したいなと思います」と、コメントした。
■初のFIA F3で感じた“タイヤと時間”の難しさ
今回のフィーチャーレースで追い上げる上でカギとなったのはタイヤマネジメント。土曜日のスプリントレース(レース1)でも後半に勝負をしかけにいく作戦で徐々に前とのギャップを詰めていたが、プレマ・レーシングの2台がクラッシュしてテックプロバリアを破損。レースは7周終了時点の順位で途中終了となったこともあり、フィーチャーレースでのロングランは未知の要素が大きかった。
「スプリントレースも(レース途中終了で)できなかったので、まったくデータがない状態でしたが、後半にタイヤがタレるだろうと思って、タイヤをセーブしていたのですけど、デグラデーションはうまくマネジメントできました。今回はその判断がハマったなと思います」と、加藤。
「特に(FIA F3の)ミディアムタイヤが難しくてセンシティブです。いきなりグリップの崖が来ちゃう感じで、そこをいかにうまくマネージできるかが勝負のカギになる。もしタイヤのデグラデーションがうまくマネージできたら、どこからでも勝てるのではないかなというくらいです。本当にタイヤの使い方が大事になります」
「あとFRECAではコースインしてから3〜4プッシュはできますけど、FIA F3はアウト・ウォーム・プッシュで(グリップが)終わってしまうので、そこはけっこう違います」
加えて、FIA F3はフリープラクティスが45分しかないため、持ち込みのセッティングもかなり重要だ。「FRECAと違うのは練習(フリープラクティス)が45分しかないので、2〜3プッシュして予選に行くことになります。セットを外したら予選は後ろに下がってしまうので、ドライバーのパフォーマンスはもちろんですが、チームがどれだけ良いクルマを用意してくれるかが重要ですね」
またFIA F3の場合、ドライバーミーティングや記者会見は、F1と同じプレスカンファレンスルームで行われる。そのため、加藤も何度かF1パドックに来る機会があったのだが、F1パドックに関してはこんなエピソードがあるという。
「2018年くらいの頃にF1日本GPのグリッドキッズでパドックに入ったことはあります。そのときに一緒に写真を撮った(当時ルノーの)メカニックとかとは今でも連絡をとっています」と加藤。
「テレビで見ている人たちが目の前にいて、(F1が)身近になったなというくらいです。でも(感じたことは)それくらいですね。目指しているものは一緒ですけど、昨年よりは確実に一歩近づいたなと感じています」
目標はもちろんF1の舞台で戦うことだと語る加藤。今度の活躍から目が離せない。
[オートスポーツweb 2026年03月09日]