東京都健康長寿医療センターの看板 東京都健康長寿医療センター(板橋区)の研究チームは8日までに、アルツハイマー病治療薬「レカネマブ」と「ドナネマブ」の導入実態を分析した研究結果を公表した。高額療養費制度により自己負担が抑えられる中でも、症状の進行や副作用への懸念などから、実際に投与に至ったのは2割にとどまった。
井原涼子医師らの研究チームは2023年12月〜25年4月、同センターの外来患者を分析。治療薬の投与を希望した456人のうち、専門外来で詳しい検査に進んだのは205人で、実際に投与を開始したのは87人(19%)だった。
治療に至らなかった主な理由は、病状が進んで適応外と判断されたケースや、副作用への不安や通院負担などから本人や家族が見送ったケースが多かった。治療のターゲットとなる脳内のたんぱく質「アミロイドβ(ベータ)」が確認できなかったり、MRI検査で安全に投与できない状態が見つかったりするなど、医学的な理由も影響した。
75歳以上の高齢者や男性、症状が比較的軽いケースでは、治療開始率が低い傾向も示された。研究チームによると、軽症の場合は受診を見送ったり、来院しても「もう少し様子を見たい」と判断したりするケースが多いほか、検査でアミロイドβの蓄積が確認できない割合も高い。高齢者は生活の質や余命を踏まえて現状維持を望む人が多く、年齢が上がるほどその傾向が高まるという。
二つの治療薬は病気の進行を抑える効果が期待される一方、定期的な投与も必要で患者負担は小さくない。治療へのアクセスを巡る地域格差の解消も課題で、厚労省の研究班などが実態把握を進めている。
論文は国際学術誌に掲載された。井原医師は「臨床試験では、症状が軽いうちに治療を始めた方が効果が大きいことが示されている。認知機能に違和感があれば早めに受診してほしい」と話している。