夜ドラ『ラジオスター』より(C)NHK 俳優・福地桃子が主演を務めるNHKの夜ドラ『ラジオスター』(総合 月〜木 後10:45〜11:00)は、あす4日から第6週に突入する。松本功介役を演じる甲本雅裕のオフィシャルコメントが届いた。
【場面カット】『ラジオスター』の動力のような存在…松本功介役(甲本雅裕) 同作は、地震で被害を受けた石川・能登を舞台に、大阪からボランティアでやって来た主人公・柊カナデ(福地)が臨時災害放送局(災害FM)のラジオでパーソナリティーとして奮闘する姿を描く。名もなき市民がスターになっていく、ノンストップエンターテインメントドラマ。全32回/8週。
■役柄・松本功介(まつもと・こうすけ)
ラジオ開局の発起人。とある理由から“笑える”ラジオにこだわっている。情熱はあるが、人とぶつかることもしばしば。米農家であり、米粉を使ったパン屋を営んでいたが、地震と豪雨で田んぼと店を失い、妻と息子とは離れて暮らす。
■甲本雅裕コメント
――出演のオファーがきたときのお気持ちと、台本を読んだ感想を教えてください。
向き合うには決して簡単ではないテーマであることは確かですが、今このときに、能登が舞台のドラマに役者として参加できることが純粋にうれしかったです。台本を読んだ第一印象は、正直なところ、一人一人の語りが長いなと思ったんです。演じるうえでは負担が大きそうだなと。でも、この物語の登場人物はみんなそれぞれに何かを抱えている。「こんな経験を経た人たちが思いを語り出したら、きっとそうなるだろう」と納得しました。一行や二行のセリフで済まされるわけがない。かといって、言葉ですべてを伝えられるわけでもない。けれど、その中でつかみとれるものがあるだろうと感じました。
――甲本さんが演じる松本功介は、「鈴野の町に笑いを届けたい」と願う「ラジオスター」の発起人で、物語の動力のような存在です。どのような人物だと捉えていますか?
松本は「能登を離れた息子に帰ってきてほしい」という動機から、最初はラジオを一人で何とかしようとしていました。そんな彼の呼びかけによって少しずつ仲間が集まってきます。そして、カナデ(福地桃子)の歓迎会のために「すずの湯」に集まった人たちの笑顔を見た松本は、やっぱり人と人が話をすることがいちばん大切なんだと痛感したんでしょうね。「鈴野の人たちの声と思いを、電波にのせて届けよう。そうすることで町に活気が戻っていけば――」という熱い思いが、彼の中に生まれていった。「自分の家族を守りたい」という動機が、結果として町を守ることにつながっていったと思います。
松本は、ラジオに何より必要なのは「笑い」だと考えています。演じる自分としては、このドラマを見た皆さんが笑っていてくれたらいいなと願って役作りをしました。僕はそれを、能登の皆さんに教わった気がします。撮影に入る前、2025年10月に一度能登を訪れたとき、地元の皆さんが地震のあとの話を語ってくれました。まだまだ復興が進んでいなくて、道はガタガタだし、がれきがそのままになっている風景もたくさん目にしましたが、それでも、能登の皆さんは笑ってくれていた。話しながら泣く人が一人もいなかったんです。どなたも笑っていました。「ああそうか。笑うことで、はじめて前に進めるんだ」と、僕は目からうろこが落ちたというか。無理に努めて笑うのではなく、「笑いたくて笑おうよ」という気持ちがいちばん大切なんだと教わりました。笑っているうちに、目の前のことを見つめる力や、向かっていく力が生まれるのではないでしょうか。能登の皆さんから、とてつもなく大きなものをもらいました。
――甲本さんはかつてラジオのパーソナリティーもされていましたが、その経験が松本の役作りに生かされたところはありますか?
30年以上前に僕がやらせていただいたラジオ番組はほとんど台本がなく、一人で1時間しゃべる、というものでした。毎週、話しているうちに、自分の中からいろんな思いが湧き上がってきて、大笑いしてしまうこともあれば、泣いてしゃべれずに沈黙が続いてしまうことも。ラジオでは「数秒以上の無音は放送事故」とされていますが、そこはあまり考えないようにしていたし、そのうち番組のスタッフも、僕のそのスタイルに「そのまま、恐れずやろう!」と言ってくれるようになった。魂を届けることのほうが大事で、リスナーは沈黙の間にも何かを聞いているはず、という思いで当時はラジオをやっていました。
出てしまった言葉を飲み込まない、取りつくろわない。番組は開始と終了の時間が決まっているだけで、その中で起こることはさまざまである。「ラジオスター」も似たところがあるな、と感じました。やっぱり、湧き上がる「本当の思い」を話せるのが、ラジオの良さですよね。松本としてミキサー席からカナデやさくら(常盤貴子)、多田(大八木凱斗)がしゃべる姿を見ながら、「ああ、この感じ。あったあった!」と思い出していました(笑)。それが表情にも出ているかもしれません。
――カナデ役の福地桃子さんとの共演はいかがでしたか?
桃ちゃんとの芝居は、大きな安心感があります。ミキサーの松本とパーソナリティーのカナデは、ラジオの放送中にアイコンタクトでやり取りをすることが多く、台本にないところでもカナデは松本をよく見てくれているんです。その中で、言葉のない芝居も生まれました。そのたびに「ここに言葉はいらないな」と感じる場面を何度も経験しました。
カナデの声がとてもいいですよね。松本は、その声にパーソナリティーとしての素質を見いだしたのだと思います。ラジオはやっぱり「声」のメディアで、声を通して言葉が入ってきて、そこから意味が伝わってくる。カナデの声には特別な魅力があると思います。
――視聴者の皆さんへのメッセージをお願いします。
このドラマを見た皆さんが、ちょっとでも上を向いて笑っていてほしい。能登の皆さんはもちろんのこと、もっと言えば、今を生きるすべての皆さんに生きている限り笑っていてほしい。そんな願いがこめられた作品です。道の途中途中で人は笑わないとその先に進んでいけませんから。「笑わせるんじゃない、笑わせられるんでもない。笑うんだ」。僕が能登の皆さんに教わったことを、『ラジオスター』で伝えることができていたら幸せです。