
ロート製薬と参天製薬は、どちらも「目薬」で高い知名度を誇る企業です。両社はいずれも、公式Webサイトで「目薬シェアNo.1」を掲げており、一見すると矛盾しているように思えます。しかし、両社が戦っている市場は異なるため、実はどちらも正しいのです。
【画像】同じ「目薬No.1シェア」でもここまで違う ロート製薬と参天製薬の異なる”稼ぎ方”
本記事では、一般用医薬品(OTC)を強みとするロート製薬と、医療用眼科薬で国内トップシェアを誇る参天製薬を「業績」「事業構造」の観点から比較し、それぞれの強みや今後の成長戦略を探ります。
ロート製薬:目薬の技術を応用し、「総合ヘルスケア企業」へ進化
ロート製薬の主戦場は、ドラッグストアや薬局で購入できる一般用医薬品(OTC)などの「消費者向け市場」です。胃腸薬の「パンシロン」からスタートし、「Vロート」などの点眼薬、「メンソレータム」をはじめとする塗り薬やリップクリームなどで確固たる地位を築いてきました。
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直近5期の業績を見ると、売上高が2000億円弱から3400億円超へと右肩上がりで大きく成長しています。実はこの成長をけん引しているのは「スキンケア領域」です。
ロート製薬は、目薬のドライアイ治療や保湿機能に用いられてきた「ヒアルロン酸」などの成分研究をスキンケアに応用し、「肌ラボ」「メラノCC」といったブランドを育成してきました。現在では、スキンケア関連が同社の売り上げの約6割を占めています。
さらに近年は、東南アジア最大級の漢方メーカー(EYS)の買収による内服・食品事業の強化や、アジア市場での販売拡大など、「目薬メーカー」の枠を超えた、総合ヘルスケア企業へと進化を遂げています。
販管費や研究開発費の増加に伴い、2025年3月期は営業利益がやや減少したものの、2026年3月期には売上高、営業利益、純利益ともに過去最高を更新しています。
参天製薬:「眼科医療」に特化し収益性を追求
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参天製薬は眼科領域に経営資源を集中する「スペシャリティファーマ」(新薬を開発・販売をする製薬企業)であり、その専門性の高さを生かして、2024年3月期には初めて売上高3000億円を突破しました。
国内では医療用眼科薬市場でトップシェアを誇り、長年培ってきた研究開発力と医療機関との信頼関係が競争力となっています。近年は主力製品の特許切れや長期収載品の選定療養化(後発品との差額を患者が負担する制度)といった逆風を受けているものの、世界で初めて実用化された(同社調べ)、皮膚に塗るタイプの抗アレルギー治療薬「アレジオン眼瞼クリーム」などの新製品が売り上げに貢献しています。
海外においても、EMEA(欧州・中東・アフリカ)やアジアへグローバル展開を推し進めており、欧州で緑内障・高眼圧症向けの点眼薬「カチオランゼ」を販売するなど高収益製品へのシフトを進めています。
2023年3月期には、買収した米国企業に関する将来の収益見通しを見直したことで一時的な減損損失(約300億円)を計上しましたが、本業の販売自体は堅調に推移。その結果、2025年3月期、2026年3月期には営業利益、最終利益とも過去最高を更新。営業利益率は16%を超えるなど、利益重視の経営が成果につながっています。
●今後の両社の方向性
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ロート製薬と参天製薬の今後の成長戦略を見ると、両社のアプローチの違いがより明確に表れています。「ヘルスケア全般」へと領域を広げるロート製薬と、「眼科医療」を極める参天製薬という対照的な構図が見て取れます。
ロート製薬の中長期戦略
ロート製薬は中長期戦略において、以下の3つの課題を挙げています。
1. 事業収益力の強化
2. 技術商品力の深化と拡充
3. メディカル事業の基盤構築
目薬やスキンケア、サプリメントなどのセルフケア事業をグローバルに展開して収益性の向上を目指すとともに、EYS社との連携を生かした生薬・漢方素材のサプリメントなどの商品開発を強化する予定です。また、メディカル領域では、眼科領域における近視進行抑制の点眼薬開発や、再生医療分野における研究開発にも注力し、次世代の事業基盤構築を目指しています。
これらの取り組みにより、2030年度には売上高4150億円、営業利益540億円へと拡大し、海外売上比率を53%にまで引き上げる計画です。
参天製薬の中期経営計画
参天製薬は、中長期的な利益成長と資本効率の向上を掲げています。成長の軸は、日本で培った眼科事業の強みを海外へさらに広げることです。EMEA、アジア、中国などの市場でシェアを高め、海外売上比率を2024年度の44%から58%に引き上げる予定です。
加えて、新たな疾患領域での市場創出にも注力しています。例えば、これまで手術が主な治療法であった、加齢などによる「後天性眼瞼下垂」(上まぶたが下がってくる疾患)に対する点眼治療薬や、子どもの近視進行を抑制する点眼薬などの新薬を展開。さらに、網膜疾患に向けたパイプライン(新薬の開発候補品)の拡充を図ることで、既存の眼科薬市場以外の収益源を育てていこうとしています。
同じ「目薬シェアNo.1」でも、両社のビジネスモデルは対照的です。
スキンケアなどへの多角化を進め、売上規模の最大化を図る「総合ヘルスケア企業」のロート製薬。一方、医療用眼科薬に特化し、高い専門性で高利益率を追求する「スペシャリティファーマ」の参天製薬。
今後もそれぞれの強みを生かしながら、目やヘルスケア市場でどのような成長を遂げるのか注目したいところです。
●著者紹介:宮本建一
大阪府立大学経済学部卒。第二地方銀行にて預金・融資業務、消費者金融では債権回収、信用組合においては融資・経理・審査管理に従事。
現在はフリーライターとして、資金調達・資金繰り、銀行融資、ファクタリング等の金融ジャンルを中心に執筆する。
審査・回収・債権管理といった現場経験を踏まえ、制度や数字の解説にとどまらず、実務上の論点や注意点まで整理して提示することを得意とする。
中小企業の資金繰り改善や金融機関対応に関する記事実績多数。金融機関向け通信講座教材の企画・執筆経験あり。
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