
元U-15〜U-17日本代表監督(2015年〜2023年)
森山佳郎(現・ベガルタ仙台監督)インタビュー@後編
◆森山佳郎・前編>>「鈴木彩艶は17歳でA代表に招集しようと......」
◆森山佳郎・中編>>「なんで久保建英ばっかり注目されるんだ!」
2017年U-17ワールドカップを目指した2000年以降生まれの世代で、瀬古歩夢(当時・セレッソ大阪U-18/現・ル・アーヴル)は守備の大黒柱だった。チームを指揮した森山佳郎監督(元・U-15〜U-17日本代表監督/現・ベガルタ仙台監督)は、「立ち上げからチームを引っ張っていった存在でした」と振り返る。
「彼は14歳ぐらいから見ていますが、同世代のなかでは飛び抜けていました。『こんな選手は見たことがないぞ』と言うぐらいで、ほぼ出来上がっていました。かなり早熟でしたね」
当時からフィジカルに優れていた。「球際で激しくプレーする」ことや「素早い切り替え」といった森山監督の要求にも、高いレベルで応えていった。
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「早熟だっただけに、同世代の選手とは体力差が大きすぎるところがありました。同世代のまだ身体が出来上がっていない選手に対して球際で厳しくプレーすると、ファウルになったり、相手を吹っ飛ばすようなことになったりもするんです。
それで相手チームの指導者や審判に目をつけられるようなところがありました。けれど、私からすれば代表活動で話したことを日常から実践してくれている、という理解でした」
ピッチ外でも"大物"だった。
「ちょっとヤンチャなところがあったらしく、彼が所属していたセレッソ大阪U-18のスタッフからは(反省させる意味を込めて)選ばないでくれと言われたこともありました。こちらでもしっかり指導しますということで招集させてもらって、かなり厳しく叱責したこともあります」
森山監督は瀬古に厳しく接するだけでなく、その後の反応を注意深く観察していた。「もうホントに強心臓で......」と、森山監督は笑った。
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「僕が言ったことを気にしていないぐらいに、普通に行動していました。それが悪いというわけではなくて、ホントに強心臓だということです」
CBとしてはもちろん、ボランチでも高いクオリティを示した。
「身体の大きな外国人選手とマッチアップしても、なんら臆することなくバチバチ戦っていました。これはかなり高いレベルまでいくだろうな、と感じました。U-17ワールドカップにケガで招集できなかったのは、今でも残念ですね」
【サイズがあって将来が楽しみ】
北中米ワールドカップでは、チュニジア戦とスウェーデン戦に出場した。
「瀬古も菅原由勢(ブレーメン)も、出場機会は与えてもらって、信頼して使ってもらったと思うんですけれど、どこまでチームの力になれたかと言うと......。まだまだこう、積み上げていかないといけない、力をつけていかないといけないということを、まざまざと見せつけられた大会じゃないかなと思いますね」
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今回の北中米ワールドカップに出場した選手では、伊藤洋輝(バイエルン)も森山監督のもとでプレーしている。2015年にU-16日本代表として活動したチームに、MF登録の伊藤を見つけることができるのだ(当時・ジュビロ磐田U-18)。
「2大会ほどスポットで監督をさせてもらった時に、彼を招集しました。GK大迫敬介(当時・サンフレッチェ広島ユース/現・サンフレッチェ広島)、橋岡大樹(当時・浦和レッズユース/現・ヘント)、齊藤未月(当時・湘南ベルマーレユース/現・京都サンガF.C.)、藤本寛也(当時・東京ヴェルディユース/現・バーミンガム)らもいたチームで、フランスと対戦して3-0で勝ちました。この試合で伊藤をボランチで起用して、相手はサイズの大きな選手が多かったのですが、自信を持ってプレーしていました」
所属していたジュビロ磐田U-18では、主にボランチでプレーしていた。ただ、当時からセンターバックの適性も見出されていた。
「ダブルボランチの一角とセンターバックで起用しましたが、サイドチェンジのパスをビシッと通す。どこのスペースが空いているのかの認知も含めて、ビルドアップはかなり優れていた印象があります。
フランス戦は当時の日本サッカー協会会長の田嶋幸三さんが視察していました。GKの大迫、橋岡、それに伊藤が勝利に貢献したのを見て、『彼らはサイズがあるし、これは将来が楽しみだな』と話してもらったのは覚えています」
【攻撃の時間を作れる選手がいたら】
森山監督が指揮した年代別代表からステップアップし、GK鈴木彩艶(パルマ)、DF菅原由勢(ブレーメン)、DF瀬古歩夢(ル・アーヴル)、DF伊藤洋輝(バイエルン)、MF久保建英(レアル・ソシエダ)、MF中村敬斗(スタッド・ランス)が今回のワールドカップで日本代表入りした。伊藤と久保は2大会連続の出場となった。
ポスト北中米ワールドカップのチームでも、彼らは中核を担っていくことになる。
「ワールドカップでベスト4や優勝を狙える存在になるには、主体的に攻撃できないといけない、というのはあらためて感じます。サイドバック、サイドアタッカーを含めて、より多彩な攻撃をしていくというか、プレッシャーを受けたなかでもキープできたり、局面を打開できたりする選手の数を増やさないと。
ブラジル戦も、もうちょっと攻撃の時間を作れる選手がいたら......。三笘(薫)、南野(拓実)をケガで招集できず、ブラジル戦は久保も不在でしたが、それでも戦えるチームにならなければ、と感じました」
そう言って森山監督は、ブラジルの選手層に触れた。
「ブラジルも何人かケガ人が出ていましたけど、それでもアーセナルに所属するガブリエウ・マルティネッリが交代で出てきた。トップレベルのクラブでプレーする選手が、途中から出てきて試合を決めた。日本もそれぐらいの選手層を持てないと」
アルゼンチンにはリオネル・メッシがいる。フランスにはキリアン・エムバペがいる。ブラジルにはヴィニシウス・ジュニオールがいて、イングランドにはハリー・ケインが、ノルウェーにはアーリング・ハーランドがいる。
「勝ち上がっていくチームには、飛び抜けた個を持つ選手がいます。中村とか久保には、飛び抜けた存在になってほしい。そういう選手を見て、自分も負けないぞと意欲を燃やす選手が出てくる。そうやって、全体のレベルが上がる」
【一番悔しい思いをしたのは......】
アタッカー陣だけでなく、DF陣のレベルアップも不可欠だ。
「ブラジル戦はかなり押し込まれて、みんなで集中して守っていましたが、なかなか攻撃の時間を作れなかった。そこで、クリアをするだけじゃなく、ひとり外してしっかり前の選手につけるとか、うしろからの配球能力も必要でしょう」
森山監督は田中碧(リーズ)にも言及した。U-16日本代表コーチとして、若き日の彼を知るという(当時・川崎フロンターレU-18)。
「今回のワールドカップで一番悔しい思いをしたのは、彼だと思います。個のレベルを上げてまた挑戦したい、みたいなことを話していましたけど、ヨーロッパのビッグクラブで中心となる選手が出てきて、その数が増えていくことで、いよいよワールドカップで優勝を狙えるのかなと思うのです」
4年に一度のワールドカップで、輝く「個」となるために。チームを勝たせる存在となるために──。
6月29日のヒューストンで感じた悔しさこそが、現状打破の原動力となっていく。
(了/文中敬称略)
【profile】
森山佳郎(もりやま・よしろう)
1967年11月9日生まれ、熊本県熊本市出身。筑波大学から1991年にマツダ(現・サンフレッチェ広島)へ加入。球際に強いDFとしてJリーグ草創期の広島を支え、1994年のサントリーシリーズ優勝に貢献する。のちに横浜フリューゲルス、ジュビロ磐田、ベルマーレ平塚(現・湘南ベルマーレ)でプレーし、2000年に引退。同年から広島ユースの監督などで手腕を発揮したのち、2015年からはU-15〜U-17日本代表監督を歴任し、久保建英らを擁して世界大会を戦った。2024年からはベガルタ仙台の監督を務める。日本代表・通算7試合0得点。ポジション=DF。身長176cm。
