松岡充、アーティストとしての自身と共鳴したミュージカルに挑む「同じ感覚を持ったセリフたちがそこにあった」

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2026年07月13日 18:10  クランクイン!

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松岡充
 ミュージカル『SHOWMAN〜4番目の影武者〜』が、2026年9月1日から9月13日まで、新国立劇場 小劇場にて上演される。本作は、第7回韓国ミュージカルアワーズにおいて大賞・脚本賞・主演男優賞の三冠を受賞し、音楽賞にもノミネートされた話題作。エンタテインメント性、芸術性、社会性を兼ね備えた作品として高い評価を受け、韓国ミュージカル界を代表する傑作として注目を集めた。物語は、独裁者の“4番目の影武者”として生きた過去を持つ老人ネブラと、過去の傷を抱えながら生きる若い女性スアの出会いを軸に展開。2人の交流を通して、「自分自身であるとは何か」という普遍的なテーマを問いかけ、観る者の心に深い余韻を残す。主人公のネブラを演じる松岡充に本作への思いを聞いた。

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■30数年の音楽活動に共鳴する作品テーマ

――最初に脚本を読んで、出演を決められたときの思いを聞かせてください。

松岡:僕はアーティストとして、30数年活動してきましたが、自分の中にある心のひだのようなものを表現するために、歌詞や楽曲、作品の中で、1つずつ「こうじゃないか」と創りながら壊して、壊しながら創ってやってきました。そうして創り上げた楽曲は、200曲以上あります。ただ、それらはもちろん一気にできたものではなく、足の裏に伝わってくる感覚や痛みといったものを伴いながら、一歩ずつ、長い時間をかけて紡いできたものです。今回の脚本の中には、「僕のこれまでの作品を聴いてくれてたんですか?」と思ってしまうほどの言葉が脚本に詰まっていたんです。当然ながら、原作を書いた方は僕のことを知らないと思いますが、知っていたのではないかと疑ってしまうくらい、自分が表現したい、してきた言葉たちと酷似していて、同じ感覚を持ったセリフたちがそこにあった。それが、この作品に出演したいと思った1番の理由でした。

――そうすると、SOPHIAのファンの方や、松岡さんをずっと見てこられた方がこの作品をご覧になったら、「これか」とピンとくる言葉もたくさんあるということですね。

松岡:きっと同じ感覚になってくれると思います。例えば、チラシに書かれた「跳び上がる、ただ呼吸するために」というキャッチコピーや波を模したビジュアルもそうです。僕はこの作品のお稽古の最中の週末ごとに全国ツアーがあるのですが、そのツアーは1998年にリリースしたアルバム『ALIVE』のテーマを28年ぶりに引っ提げて行うツアーなんです。SOPHIAの音楽的位置を決定づける作品と言っても過言ではないと思います。この『ALIVE』というアルバムの中の「DIVE」という曲の中に「波をきって泳いでいけたら」という歌詞があるのですが、今回のビジュアルを見ているとこの曲が流れてくるんですよね。それに、『SHOWMAN』というタイトルからは、同じくアルバム『ALIVE』に収録されている「ビューティフル」という楽曲の歌詞「永久未来 続くものなど あるはずはないから」という歌詞が思い浮かんでくる。この「永久未来 続くものなどない」に全てが詰まっているような気がします。僕はこれまで何十年間か演劇やドラマ、映画をやらせていただきましたが、ここまで自分の作品のベクトルとアンテナが共通していると感じたのは初めてです。

――今回演じるネブラという人物にも、共感するところや自分を重ねるところも多いですか?

松岡:これまでの人生を考えたときに、共感するところはたくさんあります。ネブラは、俳優をやっていたときに、自分に模写する才能があることに気づいて、(独裁者の)影武者となりますが、そのときに初めて自分の居場所を感じることができたんです。その後、戦犯となってしまいますが、自分自身に「自分は人としてどうなんだ」と問いかけながら、余生を生きています。僕の人生も例えば、「本当の松岡充は何者ですか? ミュージシャンですか? 1人のヴォーカリストですか? それともバンドのヴォーカリストですか? それとも俳優ですか? どれですか?」と聞かれてもその答えは分かりません。かといって、自分の中で切り替えているわけでもないんですよ。じゃあ、全てが松岡充の素なのかと言われたらそうでもない。結局、自分は何者なのかを探しているんだと思います。俳優、SOPHIAのヴォーカリスト、ミュージシャン、コンポーザー、タレントの仮面を使い分けているのではなくて、松岡充という仮面をつけている何者かなんですよ。ネブラもネブラという仮面の下に隠れている自分を知りたい。それを知った上で人生を終えたいと思っている人に僕は見えます。そうしたところは、シンクロしている気がします。

――松岡さんも「自分が自分自身であるとは何か」を今も問い続けているんですね。

松岡:「これが僕です」ということはなかなか難しいですよね。それが正直な気持ちです。そのとき、一緒にいる人によっても変わってきますから。どれも自分だと言えるけれど、それはどこか綺麗事な気もする。もっともっと汚い部分もあるし、もっともっとずるい部分も、人様に見せられない自分もいるということはどこかで分かっている。きっとそうした想いは、誰もが抱いているものなのではないかと思います。僕も、最初に脚本を読んだときに、「俺って何者なんだろう」と改めて考えましたし。なので、劇場でこの作品をご覧になる方も、きっと僕と同じ感覚になってくれるのではないかと思います。

■小劇場で贅沢な生演奏「本当に安心できます」

――ネブラという人物をどのように演じたいと考えていますか?

松岡:すごく難しいんですよね、試されている感じがするので。ただ、今の段階では、あまり作り込みすぎたくないなと思っています。僕がネブラを演じるのではなく、僕の中からネブラを出していくというイメージです。じゃあ、具体的にどうするのかと言われると、そこで迷っていて。ネブラが劇中で写真を撮ってもらう期間3日間なんですよ。ネブラはその3日間で迷い、揺れ動いていますが、でもそこで答えを出していない。なので、僕もそうやって創っていくのがよいのではないかと考えています。いつまでも未完成で、1本1本が全く違う。そうしないと、嘘を作ってしまう気がします。

 実は、短いものでしたが、韓国版の資料映像を観たときに、「これは作りすぎだろう」と思ったんですよ。僕よりも若い俳優さんが年老いたネブラを演じていましたが、70代のネブラを演じている姿が最初は嘘くさく見えたんです。でも、70代のネブラに違和感を持たせることさえも、演出だったのかもしれないとも思いました。それを証拠に、後半になるにつれて、違和感が薄れていくんですよね。もし、そこまで複雑に考え込まれて作られているのだとしたら、僕はやっぱりそれを超えていきたい。もちろん、比べるものではないけれども、そういう想いはありますね。そうやって、難しく考えすぎないとダメな作品なのだと思います。

――稽古中も考えて考えて、作っていくんですね。

松岡:はい、向き合って、突き詰めたいと思います。もちろん、考えなくてもできるとは思います。でも、そうしていかないと、ただ上演しただけの作品になる。それだと面白くないですよね。1万2800円というチケットを買って観にきてくださっている客席の皆さんに、その価値のあるものをお届けしないといけないという使命があると思っています。

――演出のシライ(ケイタ)さんとはすでにお会いしているそうですが、シライさんの印象を教えてください。

松岡:シライさんとは、オファーをいただいたときに、食事をしてお話をさせていただいたのが最初です。僕は、演出家の方と合わないことがあると、正直に伝えます。「僕はこう思いました」と全部ぶつけてしまうので。でも、シライさんは「僕もそうなんですよ」という感じだったので、それなら安心だなと(笑)。僕は、隠されて、都合のいいことや聞こえのいいことだけ言われるのが嫌なんです。どこかで綻びが出たときに、それは役者のせいになるし、もっと言ってしまえば、看板である主役のせいになる。それを全て背負うならば、全部を分かっていないと背負いきれないですから。なので、シライさんには、そうした心配がないという安心感がありました。キャストの皆さんも、「この人たちだったら、僕が背負う必要はない」という方たちばかりです。いろいろな道を通ってきて、痛みもきちんと感じて、それを克服してきた方たちなのでカンパニーとしても安心感があります。

――小劇場で6人編成という贅沢な生演奏も本作の見どころの一つです。ぜひ、音楽的な本作の見どころも聞かせてください。

松岡:僕は、30数年間、ライブを中心に音楽活動をしてきました。そうした中で、音楽の本当の魅力は、ダイナミックスさにあると思います。音は、空気の振動ですよね。その振動を生で、体全体で感じることができるのがライブなんです。なので、舞台でも絶対に生演奏の方がいいんですよ。ただ、すごくお金がかかる。だから、どうしても削られてしまうことが多いんです。それは、いち音楽家として、すごく損していると思っています。ただ、予算があってのことなので、いたしかたないこと。それを生の歌でカバーすることで創ってきた作品もある。でも今回は、生演奏なので、本当に安心できます。基本的に、ミュージシャンはその楽器に一生涯を賭けているわけですよね。例えば、ギタリストならギターに生涯を賭けているし、ベースならベースに生涯を賭けている。それって、人生の選択としては、なかなかコアです。だからこそ、そこで生きている方たちはただ者じゃない。そうでなければ、今、ここにいないと思います。そうした方たちの音楽というバックアップがあるだけでも、すごく価値が上がると思います。

――楽曲もすでに聞かれていますか?

松岡:少しずつ聞かせていただいています。楽曲は面白いです。趣がある。意外性のあるコード進行やメロディー展開がありますが、どこか親しみがあるんですよ。今日も車で聞いていて閃いたのですが、昭和初期の日本人が歌う欧米化された楽曲に近いのかもしれないと思いました。正しくは欧米化できてないんだと思います。ただ憧れて創ったものだから。でもそんな雰囲気が魅力的だったり。そうした懐かしさとちょっとしたオシャレな感じが混ざっている気がします。

――音楽面も楽しみです! 最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

松岡:こうしたインタビューやプロモーションで作品の魅力を端的に伝えることがすごく難しい作品です。なので、「これは僕がやるべきだと心底思うほど、この作品にマッチした」ということをお伝えしたいと思ってお話させていただきました。演劇ファンはもちろんですが、声を大にして言いたいのは、SOPHIAのファンの人たちにも劇場に来てもらいたいです。これまで、ミュージカルや演劇、芝居をやっている松岡はいいやと思った方にもぜひ観てほしい作品です。この作品の中の僕を見てくれれば、僕が30数年かけてやってきた音楽活動での表現の根幹に通じるものがあると感じてもらえると思います。改めて、SOPHIAの歌詞を読み返したくなるんじゃないか。そして、懐古するだけでなく、新しい景色を観てもらえると思います。何か新しいものを探している方もぜひ観にきてください。驚くと思います。

 ミュージカル『SHOWMAN〜4番目の影武者〜』は、9月1日から9月13日まで、新国立劇場 小劇場にて上演。
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