DEAN FUJIOKA「一番難しいチャレンジだった」 王道バラードで見つけた“自分という楽器”【インタビュー前編】

0

2026年07月30日 11:05  オリコンニュース

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

オリコンニュース

DEAN FUJIOKA(撮影:鈴木千佳) (C)ORICON NewS inc.
 主演を務めたフジテレビ系ドラマ『LOVED ONE』の主題歌「Loved One」を6月17日に配信リリースしたDEAN FUJIOKA。同曲では、自身初となる“王道バラード”に挑戦した。ドラマの世界観をどう音楽で表現したのか。そして、「一番難しいチャレンジだった」と振り返る歌詞制作や、新たなレコーディング手法で見えてきた歌との向き合い方について話を聞いた。

【写真】クール…!DEAN FUJIOKAの撮り下ろしショット

■作詞にかけたとんでもなく膨大な労力

――「Loved One」は“王道バラード”に仕上がりました。これまでさまざまなジャンルの音楽に挑戦されてきましたが、このタイミングで王道バラードに向き合おうと思った理由を教えてください。

ドラマでは、ご遺体であったり、残された人たちだったり、事件の謎を解明していく立場だったり、いろんな人が出てくるんですけど、その全員に共通してかかっていくような曲を作りたいなと思ったんです。「おはよう」とか「おやすみ」とか「ただいま」とか、平凡な日常の中にある、たわいのない一コマ一コマをセンテンスごとに重ねて、「愛する」「愛している」「愛しい」という気持ちを表現したいなと。

――その世界観を表現するにはバラードが適切だった?

そうですね。ピアノとストリングス、あとはアコースティックギターくらいかなというイメージは最初からありました。毎日交わすような言葉の延長線上にある感情を描くときに、どういうサウンドだったらいいかなと考えて、先にメロディーを作ったんです。そのあと、日常の場面がぱっと浮かぶような一つひとつのセンテンスを並べていく。すごく細かい作詞の作業に入っていった感じですね。この曲は歌詞にとんでもない膨大な労力をかけました。

――日常の何気ない描写だからこその難しさがあった?

派手なことやパンチラインを書くというより、ごく普通の日常の一言をどれだけていねいに描写できるか、そこが一つの縛りでもありました。その描写をどれだけ細かく、針の穴に糸を通せるかみたいな感覚で、一行一行つないでいったんです。「生きている」「死んでしまった」ということを超えたところで成立するものにしたかったので。未来永劫、時間っていう概念を超えたところでずっと響き続けられるかどうか。そういう判断基準で言葉のオーディションをしていましたね。

だから、この曲はこれまで作ってきた曲の中で、一番難しいチャレンジだったかもしれないですね。今まではどちらかというと、音楽的なサウンドの探求や実験がメインだったので、今回は本当にとことん言葉と向き合いました。

――歌詞を聴いているとDEANさんご自身の日常や記憶も重なっているように感じました。

やっぱり自分の中にないものは出てこないですからね。だから、初恋の記憶だったり、親友との思い出だったり、もういなくなってしまった人との思い出も混じっていると思いますし、今身近にいる大切な人たちとのエピソードもあると思います。いろんなものが混ざっていますが、それを客観的に聴いたときに自分の心が動くかどうか、それも判断基準でした。

■作家の自分と、歌い手の自分、2人が真剣勝負をする必要があった

――今回はボーカル表現の豊かさも印象的でした。レコーディングではどのようなことを意識されましたか?

今回は初めてプリレコーディングのプロセスを取り入れました。簡単に言うと、レコーディングを2回やったようなものですね。今までは、本番のレコーディングをしながらボーカルアレンジを作っていくことが多かったんです。でも今回は、それじゃダメだなと。歌を届けるために曲を作っている以上、最後のピースである「歌」をはめるプロセスを、もっとていねいにやりたかったんです。

――レコーディングに関しても挑戦だった?

今回はまず作家として、一冊の本でいう表紙から裏表紙までの構造を作る。それができたら、今度は歌い手として、それをどう表現するのかという、また別の作業が必要になったんです。ほかの作家さんが書いた曲なら、歌い手として解釈するのは当たり前なんですけど、自分で作った曲だと、どうしても作家としての解釈のまま歌を録ってしまっていた。でも、それってやっぱり違うなと思って。

作家の自分と、歌い手の自分。その2人が真剣勝負をする必要があると思ったんです。歌い手として、この曲をどう届けるのか。一音一音の響きや、どうしてこの文脈になるのかということを、作家の自分とは違う目線でもう一度解釈し直して、それをボーカル表現に落とし込んでいく。その作業をすごくていねいにチームでやれたことが、この楽曲を通して得られた新しい体験でした。

■自分がどういう“楽器”なのか、それを知ることができた

――「Loved One」は、ご自身の音楽キャリアの中でどのような位置づけの作品になりそうですか?

次の曲、その次の曲になるであろう作品を作っていますが、「Loved One」の前と後では明確に違うなというのは、もう感じています。アーティストとしてどういう存在でいるべきなのか、自分はどういう“楽器”なのか。それを知ることができた作品だったと思います。

――“自分という楽器”ですか。

歌い手にとって、この肉体そのものが楽器じゃないですか。自分の場合は、俳優としてもこの楽器を武器にしてきた20年以上があるので、意外とハードなゲームをやってきたんだなって。人の声って、常にメンテナンスしなきゃいけない、一番変化する楽器かもしれない。それをベストな状態に保ちながら、演奏する技術も高めていかなきゃいけないというのは難しいところもありますよね。

――そして、その“楽器”と楽曲をマッチさせていくと。

歌い手としてのあり方、アーティストとしてどういう曲をやるべきなのかというプロデュースの視点、そして実際に曲を書く作家としての視点もある。自分の場合はそういうものが全部、“癒着”していたんですよね。サウンドの探求だったり、アレンジの実験だったり、メロディーや歌詞の実験だったり、自分で作ったものだから、そのまま歌えると思い込んでいた。でも、それが全部分離できたんです。

これは自分がやるべきこと、これは自分がやらなくてもいいこと、これはもっと優れた人がいるなら任せたほうがいいこと。そういう整理ができるようになりました。逆に任せると決めたことは、その任命責任も含めて全部真剣勝負です。「Loved One」以降の楽曲がどうなっていくのか、自分でもすごく楽しみです。

――今後の音楽活動について教えてください。

事務所の諸先輩方であるサザンオールスターズさん、福山雅治さん、大泉洋さんのライブを拝見し、自分も先輩方のように、一人でも多くの方に楽しんでいただけるエンターテインメントを届けたいという思いを強く持つようになりました。

もちろん、ライブはこれからもどんどんやっていきます。すでに発表しているものもあれば、まだお知らせできていないものもありますが、「これからたくさんライブがあります」ということだけは、ぜひお伝えしておきたいですね。リリースについても、ミニアルバムになるのか、フルアルバムになるのか、まだ決まってはいませんが、やりたいことは本当にたくさんあります。あと、コライト(複数のクリエイターが集まって1つの楽曲を制作する手法)は本当に学びが多いので、国境を越えて、いろんな方とどんどんやっていきたいですね。2人でも3人でも4人でも、ご縁があれば積極的にやっていきたいです。ありがたいことに、いろんな仕事を通じて世界中で出会いがあります。その中で、音楽制作もライブも、フィーチャリングも、いただいた機会には全部前向きに打ち返していきたいと思っています。

■プロフィール
DEAN FUJIOKA(ディーン・フジオカ)
1980年8月19日生まれ、福島県出身。2004年に香港でモデル活動を開始し、映画『八月の物語』で主演デビュー。2006年から台北を拠点に俳優として活動し、日本では2015年NHK連続テレビ小説『あさが来た』の五代友厚役で注目を集める。音楽活動ではTVアニメ『ユーリ!!! on ICE』のOPテーマ「History Maker」が国内外でヒットし、2023年には日本武道館公演を成功させた。最近ではフジテレビ系ドラマ『LOVED ONE』で主演を務めるほか、『PRODUCE 101 JAPAN 新世界』では国民プロデューサー代表を務めた。

    ニュース設定